見出し画像

部分分数分解パズル

 数列や積分の計算など、高校で学ぶ数学でよく出てくる「部分分数分解」の問題をいくつか紹介します。今回は特にひらめきが必要な部分分数分解の問題を扱います。

なお、次の等式が部分分数分解の基本的なものとしてよく知られています。(右辺から左辺に向かって、通分することで正しい等式であると確認できます。)

$$
\displaystyle \frac{1}{x(x+a)}= \frac{1}{a}\left(\frac{1}{x}-\frac{1}{x+a}\right)\,\,\,\,(a\ne 0)
$$

特に次が成り立ちます。

$$
\displaystyle \frac{1}{x(x+1)}=\frac{1}{x}-\frac{1}{x+1}
$$

問題1 "2乗"を含む場合

問題


任意の実数 $${x}$$ について次の等式を満たすような実数 $${a,b,c}$$ を求めよ。

$$
\displaystyle \frac{1}{x(x+1)^2}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x+1}+\frac{c}{(x+1)^2}
$$

恒等式を利用した解法もありますが、今回は式変形だけで左辺から右辺を目指す一直線の解法を紹介します。

解答

$$
\,\,\,\,\,\displaystyle \frac{1}{x(x+1)^2} \\=\frac{1}{x+1} \cdot\frac{1}{x(x+1)}\\=\frac{1}{x+1}\left(\frac{1}{x}-\frac{1}{x+1} \right)\\=\frac{1}{x(x+1)}-\frac{1}{(x+1)^{2}}\\=\frac{1}{x}-\frac{1}{x+1}-\frac{1}{(x+1)^2}
$$

よって、$${(a,b,c)=\left(1,-1,-1\right)}$$ となる。…(答)

解説

2乗を嫌がり、1個分を脇に置いておくという考え方です。そうすることで基本的な解法で正答にたどり着けました。

問題2 "2次式の因数"を含む場合

問題

任意の実数 $${x}$$ について次の等式を満たすような実数 $${a,b,c}$$ を求めよ。

$$
\displaystyle \frac{1}{x(x^{2}+1)}=\frac{a}{x}+\frac{bx+c}{x^{2}+1}
$$

こちらも恒等式を利用した解法も考えられますが、意固地になって先ほど同様の一直線の解法を目指します。

解答

$$
\,\,\,\,\,\displaystyle \frac{1}{x(x^{2}+1)} \\=\frac{x}{x^{2}(x^{2}+1)}\\=x\left(\frac{1}{x^{2}}-\frac{1}{x^{2}+1}\right)\\=\frac{1}{x}-\frac{x}{x^{2}+1}
$$

よって、$${(a,b,c)=\left(1,-1,0\right)}$$ となる。…(答)

解説

今度は2次式でそろえるためにあえて最初に分子と分母の多項式の次数を上げておきました。他にもたとえば$${\displaystyle\frac{1}{x(x+1)^{2}}}$$ではなく$${\displaystyle\frac{1}{(x+2)(x+1)^{2}}}$$なら分子分母に$${x-2}$$をかけて分母に$${x^{2}-4}$$を作るとうまくいきます。

まとめ

今回はパズル的に部分分数分解を実行する方法を紹介しました。こういった計算をあれこれ自分で考えてみるのは良い頭の体操になりますね。今回紹介した問題でも他にもいろいろな方法がありますのでぜひ考えてみてください。
ちなみに、以下の記事で部分分数分解について触れていますのでよろしければこちらもご覧ください。

それでは今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?