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「好き」という感情のグラデーション─『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

漫画もアニメも面白い『推しが武道館いってくれたら死ぬ』!

案の定、『映像研には手を出すな!』を見るためにFODを登録した民なのですが、

せっかく登録したんだからなんか他にも見ようと思って『推しが武道館いってくれたら死ぬ』を観たのですが、これが面白い

主人公のえりぴよの声優はファイルーズあい。
ダンベル何キロ持てる?で紗倉ひびき役をやってた方ですね。演技のはっちゃけ具合がよい感じです。

ご本人もけっこう癖が強そうな方です。


赤ジャージのトップオタ

とまあ、アニメ面白いなと思って漫画の方も読み始めてみたのですが、これまた面白い。思わず全巻買ってしまいました。
というわけで簡単に紹介しようと思ってキーボードをたたいています。

岡山県で活動するマイナー地下アイドル【ChamJam】の、内気で人見知りな人気最下位メンバー【舞菜(まいな)】に人生すべてを捧げて応援する熱狂的ファンがいる。収入は推しに貢ぐので、自分は高校時代の赤ジャージ。愛しすぎてライブ中に鼻血ブーする…伝説の女【えりぴよ】さん! 舞菜が武道館のステージに立つ日まで…えりぴよの全身全霊傾けたドルヲタ活動は続くっ!

ざっくりと言えば岡山で活動するアイドルとそれを応援するファンの話で、基本的に物語のアップテンポは今のところ、そんなになさそうです。
ただ、ファンのアイドルに対する気持ちなどが克明に描かれ、その打ち込み具合が非常に興味深いです。

まず主人公であるえりぴよは推しに貢ぐあまり、自分の持ち物をすべて売り払ってしまい、赤いジャージしか持っていないという謎設定。

ライブのためのスケジュールの確保を優先するファンたちは会社を辞め、自由が効くフリーターとして生きているため、常にお金がありません。


とまあこんな感じで、基本的にはアイドルとファンの関係を観察するバラエティを見ている気持ちになります。
ライブのためにネカフェ前日入り、始発から並び、東京へ弾丸で会いに行ったり、ましてや週二回ほどは会うのでほぼ見知った顔になって、でもプライベートでは気軽に接することは許されない。不思議な距離感です。
僕はアイドルの現場とか行ったことないのですが、実際はどうなのでしょう。


「好き」という感情のグラデーション

この作品ではそうした人たちのメンタリティを上手く表現していることで、「何かをめちゃくちゃ好き」ということの素晴らしさと辛さが描かれているのが一番興味深いです。

ベテランアイドルファンであるくまささんはもうほとんど仙人のような域に達していて、発言ひとつひとつに重みがあって、深みがあります。

主人公であるえりぴよの「好き」も「自分だけのものにしたい」というよりも「アイドルとして活動している姿が好き」というものであり、存在しているだけで嬉しいとまで言ってしまいます。

一方で、メインキャラクターである基くん含めた「ガチ恋勢」と呼ばれる特定のアイドルを恋愛対象として認識している人びとの苦悩が描かれます。それにより、それぞれの「好き」の尺度の違いが浮き彫りになり、物語内により深みを与えています。

これは基くんではない

このように本作品では「アイドル」を通して、「好き」という感情のグラデーションがさまざまなかたちで表現されているのが興味深いです。


絵柄とギャグの落差

本作でもうひとつ面白いなと思うのは、その美麗な絵柄と唐突に挟まるギャグの落差です。

メインとなるアイドルグループ【ChamJam】のメンバーはそれぞれ個性がうまく表現されていて、特に主人公えりぴよが推す舞奈は、

平尾 舞菜は存在感を薄くしています。顔のつくりはほかのメンバーよりもすべて小ぶりで、手足が細く、わかりにくいかとは思いますが、ダンスもほかのメンバーより振りが小さいです。でも髪型は、私の思う一番アイドルらしい、ハーフツインです。
http://konomanga.jp/interview/94990-2/2

とかなり意識的にキャラクターデザインがなされています。
また、ファッションについても

平尾 ファッション誌を読むのが好きなので、メンバーごとにイメージしているブランドを決めて、そこで買っている服らしく見えるように描いています。

デザインコンセプトが定められていて、絵としてかなりレベルが高く思えます。

と嘆息しながら読み進めていると、

このざまです。
さらにはえりぴよと舞奈は基本的にはすれ違い続け、某ジャッシュのようなコント的状況を繰り広げています。

えりぴよのエクストリームな行動に作中でちゃんと突っ込む人はほぼおらず、ほとんど無法地帯となっています。
そうした突発的なギャグを楽しむのも醍醐味でしょう!


具体的に岡山の街が描かれていることや画のほうではくまささんの顔がどんどんリアリティを増していくなど細かい部分での面白いところはいろいろあるのですが、興味持った方はぜひ見てみてください!


16日まで原作漫画無料公開とのことです!


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