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鉄筋コンクリート建築の起源と連続─『鉄筋コンクリート建築の考古学  アナトール・ド・ボドーとその時代』

最初期の「鉄筋コンクリートの建築家」アナトール・ド・ボドーの創作活動を丹念に追い、鉄筋コンクリート建築の成立の過程を、実証的かつ理論的に解明する。19世紀までの切石組積による西洋建築と、20世紀の鉄とコンクリートによる近代建築に断絶をみる建築史の通説を覆す画期的研究。

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20世紀を席巻した鉄筋コンクリート.
本書は,組積造からコンクリートへと推移した時代に活動したアナトール・ド・ボドーのシマン・アルメ建築(積み重ねた煉瓦の中空部に鉄筋とモルタルを充填させ,一体成型する構法)を対象とし,鉄筋コンクリート建築の起源と近代建築との関係を探る.

ボドーはロマネスクなど歴史を参照しつつ鉄筋コンクリート建築のあり方を模索した.それまでの組積造と鉄筋コンクリート造の連関を描き出していく.また著者は,ボドーの構造の思想がピエール・ルイジ・ネルヴィが鉄筋コンクリート構法に導入したピン接合による静定化などに共通することに言及し,近代建築との連続性を指摘する.

後藤さんのD論が素晴らしいのは、綿密なアーカイブ分析から出発しているという点である。それにより、観念的構築物である史的枠組みを提供したギーディオンもフランプトンも不要な地平に、すでに到達しているのではないか。

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