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日々雑感2018

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テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
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#コンテンツ会議

『メイキング 人類学・考古学・芸術・建築』

書籍詳細 人類学と考古学、芸術、そして建築。 これら4つのAをすべて、世界を探究する技術として捉えなおしたならば、どんな風景が広がるだろう。そのために石器を試作し、浜辺を歩き、ある1体の彫像を1週間観察する。そんな授業を続けてきたインゴルドが送る、文化人類学の冒険の書! ■ 2018年1冊目。 あまり頭に入って来なかったな... しかし、建物は世界の一部であり、世界は停止したままではなく、常に成長、衰退、再生という無限のプロセスを展開している。いかに人間がそれを釘づけ

『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』読書メモ

書籍詳細 「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」―。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版。 読了.経済学の本すらほとんど読んだことなかったが,平易な文章と興味深い実験の数々ですっと読

読まれる(物語られる)ことを意識すること─『プロローグ』

小説の書き手である「わたし」は、物語を始めるにあたり、日本語の表記の範囲を定め、登場人物となる13氏族を制定し、世界を作り出す。けれどもそこに、プログラムのバグともいうべき異常事態が次々と起こり、作者は物語の進行を見守りつつ自作を構成する日本語の統計を取りつつ再考察を試みる……。 プログラミング、人工知能、自動筆記…あらゆる科学的アプローチを試みながら「物語」生成の源流へ遡っていく一方で、書き手の「わたし」は執筆のために喫茶店をハシゴし、京都や札幌へ出張して道に迷い、ついには

なぜ「〈物語〉シリーズ」では建築が描かれるのか─背景が語ることはなんなのだろうか

高校二年生の阿良々木暦はある夜、伝説の吸血鬼であり、 “怪異の王”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと 衝撃的な出会いを果たす。 まばゆいほどに美しく。 血も凍るほどに恐ろしく。 四肢を失い、痛々しくも無残な伝説の吸血鬼。 全ての〈物語〉はここから始まる— 西尾維新による原作小説「傷物語」を、「Ⅰ鉄血篇」、「Ⅱ熱血篇」、「Ⅲ冷血篇」の 全三部作として映像化。『〈物語〉シリーズ』、『魔法少女まどか☆マギカ』の 総監督新房昭之とシャフトが送る、『化物語』で描

「ランドマークが機能しなくなった」東京と「ランドマークが描かれない」東京─背景が語ることはなんなのだろうか2

『シン・ゴジラ』と『君の名は。』を同時期に観て、東京の描かれ方の差異にふと目がいった。 ふたつの作品はアニメと実写という違いはあるものの、『シン・ゴジラ』の場合はCGで実写を補完し、とてもアニメ的な構図でつくられた実写でもある。本質的な違いが存在しているわけではない。 両者の作品はどちらも「東京」という場所を描くことが作品の中ではある一定の重要性を持っているように思われる。 「ランドマークが機能しなくなった」東京 「よく知られているように、初代ゴジラは身長が50mであり、当

物語装置としての窓

夜のファミレスが何故か好きだ。それは、都心ではなくて郊外のロードサイドであればあるほど、人気がなければないほど、私にとっての好みの場所となる。深夜のファミレスには情緒を誘うものがある。 なぜだろうか。 福田雄一によるドラマ『THE 3名様』は、深夜のファミレスでどうしようもない若者3人組がただダラダラとくっちゃべるという作品だ。 ただダラダラと喋るだけ。特に事件が起きるわけでもない。しかし、なぜ、これを面白いと思えるのだろうか。 ファミレス=物語の同時並列ファミレスには、

SF小説からテクノロジーを考えるメモ1

現実を精彩に描くとSFになってしまう、と言われて久しい現代社会とテクノロジーですが、それでもSF小説に描かれる世界は私たちの現実社会やテクノロジーへ何らかの啓示を与えてくれます。 物語として楽しみつつもそこから何が考えられるか、ということを意識しながらなるべく読みたいな。ということで国内SFで色々とメモしてみる。 テクノロジーとの共存(共存した結果、究極的には人間がどのような存在になるかが描かれる) 野崎まど『know』...情報が増えすぎた時代「超情報化時代」に対して「

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1

初音ミクと建築について何か考えられないかと勝手に妄想したものです。時間ある方は暇つぶしにでも。 初音ミクとは 初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアが2007年から展開している、ヤマハが開発した音声合成システムVOCALOIDにより女声の歌声を合成することのできるソフトウェア音源。初音ミクは「未来的なアイドル」をコンセプトとしてキャラクター付けされた。名前の由来は、未来から初めての音がやってくるという意味で、「初めての音」から「初音」、「未来」から「ミク」。ソフト

初音ミクから都市・建築を考えるための断想録─『初音ミクと建築』2

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1 ここからは、何か都市や建築につなげれないかなーと妄想したモノです。断片的な思考ですが。 「動員」の性質が変わることによって変わる音楽ホール 劇場や音楽ホールといったビルディングタイプは普段の私たちにとって馴染みのないものである。日本建築学会によって編集された『音楽空間への誘い-コンサートホールの楽しみ』という本にはこんな一節がある。 「…新しいデザインを生む以前にクラシックコンサートホールを支える社会的環境が微妙に崩れようと

「面会室」という異空間─『凶悪』

スクープ雑誌「明潮24」に東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤から手紙が届く。記者の藤井は上司から須藤に面会して話を聞いてくるように命じられる。藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村の存在だった。木村を追いつめたいので記事にして欲しいという須藤の告白に、当初は半身半疑だった藤井も、取材を進めるうちに須藤の告発に信憑性があることを知ると、取り憑かれたように取材に没頭していく。 「わたし」と「あなた」が向き

「武蔵野プレイス」はひとつの風景をつくりだしたのか─背景が語ることはなんなのだろうか3

「ランドマーク」は物語を生む. グーグルで「東京タワー 映画」と検索してみる リリー・フランキーの『東京タワー』が登場する.また右側には江國香織による恋愛小説が検索結果として出てくる.言うまでもなく東京タワーは多くの物語のモチーフとなってきた. 次は「おばけ煙突 映画」で検索してみる 見たことはないがアニメ作品とおばけ煙突を中心とした物語「煙突の見える場所」という作品が出てくる.またおばけ煙突をご存知ない方はこち亀の「おばけ煙突が消えた日」を読まれるといいだろう.昭

「死」とは?─『ニルヤの島』

人生のすべてを記録し再生できる生体受像(ビオヴィス)の発明により、死後の世界という概念が否定された未来。ミクロネシア経済連合体(ECM)を訪れた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の船を作る老人と出会う。この南洋に残る「世界最後の宗教」によれば、人は死ぬと「ニルヤの島」へ行くという――生と死の相克の果てにノヴァクが知る、人類の魂を導く実験とは? ※※※ 柴田勝家 /『ニルヤの島』を読んで感じたこと。 その風貌や言葉遣いが柴田勝家そのまんまだということで一昨年去

建築の(ちょっとずれた)面白い本を紹介してみる

最近忙殺されていて思考が硬くなり気味です.ということで,変なことに思いを巡らせたいなと思いまして,キーボードを叩いてみている. 世の中には変わった本が山ほどありますが,例に漏れず建築界にも変わった本が山のようにあります.僕が読んだ建築の中でちょっと変わっているな〜,と思った本を簡単に紹介してみようと思います. という訳で最初はこの本です. 『グッドバイ・ポストモダン』隈研吾 今や,日本人なら誰でも知っているであろう建築家・隈研吾氏が著者のこの本.1989年出版です.ア

『二匹目の金魚』─「2018年オススメの漫画」

「#今週のお題」が始まったということで,投稿してみます. 2018年のオススメ漫画はやはり何と言っても敬愛するpanpanya先生の新作『二匹目の金魚』 どこかで見たことのあるようなそれでも見たことのない不思議な街を赤い服の女の子が歩いていくというpanpanya先生お馴染みのスタイル. 「もの」としての本づくり内容ももちろん素晴らしいです.しかし,特に毎回感動するのは,徹底した「もの」としての本づくりなのです. panpanya先生の書籍では読者が手に取って楽しめるよ