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こんな幸せな映画だったのか! 映画『ゴッズ・オウン・カントリー』ネタバレあり

ゴッズ・オウン・カントリー(2017年製作の映画)
God's Own Country
監督 フランシス・リー
脚本 フランシス・リー
出演者 ジョシュ・オコナー アレック・セカレアヌ



「それで幸せになれるのか」by父


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なんとなく暗そう?何もなさそう?キャッチできなそう?な予感があって観ていなかった『ゴッズ・オウン・カントリー』。

友達が最近見て激ハマりして勧められたので
観てみましたらびっくり傑作!

何この完璧な映画!


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前の晩飲みすぎて朝ゲロ吐いて祖母にネチネチ言われるシーンからスタート。

どういうわけだか、もう良い。
すでに良い。

撮影が素晴らしいし
田舎の閉塞感もやめてくれってレベルに伝わってくる。


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ジョニーの幼稚性がいいですね。


目も当てられない幼稚さ。

同族嫌悪が湧き上がってきて見ていて恥ずかしくなる。

ナルチシズムに満ちた幼稚性(大人になりきれない俺的な)、ではなく
ただただ恥ずかしい幼稚さ。

良いねえ、最高。


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牛や羊の出産とか皮剥ぎも俳優2人が実際にやっているとのこと。

リアリティの圧がすごい。

羊飼いとか牧場とかに対するメルヘンな幻想をことごとく破壊してくるリアリティ。

死産の子羊の毛皮をササっと剥いで
健康に産まれた別の子羊にその毛皮を着せてやる。

羊皮のジャケットを着た子羊が母羊に寄っていくのが可愛い。

ゲオルゲ様!やっぱメルヘン!そして残酷。。


しかし、死産して皮を剥がれた子羊の母羊がそれをワナワナと見ている。
それを抑えているジョニー。

やっぱリアリティ!怖い!

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フランシス・リー監督自身が牧場で育ったとのこと。

監督はあの景色(神に恵まれた土地『ゴッズ・オウン・カントリー』)が好きだったし
牧場経営の家族に対して愛や畏敬の念があることも
エンドロールで伝わってきますね。


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ジョニーとゲオルゲがセクシュアリティに苦悩する描写が極端に少ないのがいいですね。

少ないっていうかゼロ?

セクシュアリティの苦悩よりも
男性優位思想に囚われている父や祖母の苦悩の方が強そう。

父は自分の肉体的な強さを失うことで、
祖母は自分の息子の強さがなくなっていくことで、
男性優位思想から自由になっていく。

そして、
ジョニーと父、祖母の3人には和解の空気が流れ始めるわけだけど
それは父の「それで幸せになれるのか?」という問いがすべてなわけよね。

幸せならそれでいいはずなんよね。


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ラストネタバレは以下に





ゲイ映画っていっぱいあるし傑作もあるけど
やっぱブルーな気持ちで観終わるものが多い。

良い感じで終わるゲイ映画ってあんまないんだけど
この『ゴッズ・オウン・カントリー』はすごいね。
すごい多幸感。

未来の開け方がすごい。

R15指定なので16歳になったらみんな観て。

ゲオルゲの住所メモはバアちゃんがゲオルゲが出て行く時に聞き出したものだったの!
バアちゃんナイスプレー!
バアちゃん、2人のことわかってたのね!
なんて幸せな映画なのさ!


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