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同性婚を危機に晒すものとは 映画『天空の結婚式』ラスト ネタバレあり ~映画イラスト~

天空の結婚式(2018年製作の映画)
Puoi Baciare Lo Sposo上映日:2021年01月22日製作国:イタリア上映時間:90分


天空の結婚式

舞台はイタリアのチヴィタ・ディ・バニョレージョ。


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『天空の城ラピュタ』のモデルとも言われてまして(確かに縦横に入り組んだアーチがそれっぽい)、個人的には『マスターキートン』11巻「鉄の砦」の舞台として使われていた場所としての印象があります。

美しい観光地でもあるんだけど、要塞都市としての一面もある。しかも2500年以上前に作られた町。

そこを舞台に人類のアプデ案件を描くコメディ映画です。


『天空の結婚式』四コマ映画→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2620


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結婚を決めたゲイカップル。母は賛成だけど父は反対で…というスタート


ライトなコメディ映画、という皮を被ってますけど
なかなか芯の通った力強い映画でしたね。


原作は2003年初演の舞台『My Big Gay Italian Wedding』。

16年前のものですが現在まで断続的に上演されて、おそらくその都度アップデートされてきて、現時点での最高到達点がこの映画版なんだろうなと思います。


話の主軸はお父さん

お父さんを演じたディエゴ・アバタントゥオーノの演技が素晴らしいですし、実際今作の演技で助演男優賞候補になっているとのこと。

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イタリアでは有名な実力派俳優でもあり、コメディアンでもあるんですね。
顔は死ぬほど怖いんですけどキャラはかわいらしくて面白いんですよ。

このお父さんは村の村長さん。

リベラルな考えの持ち主で社会の変化を否定しない人物。

しかし、息子が男と結婚!となると急にゲイに対して差別発言連発で堂々と思考停止しちゃう。

ホントは息子を受け入れたいのに、それが難しい、、、という人物。リアルなキャラクターですかね。


こういうタイプの映画でありがちな〝融和〟じゃないのがすごく良いです


この映画はもちろんアントニオとパオロの2人の話なんだけど
描きたいのは、周囲の受容過程。(でも最終的にはその点も含めて批評的に描かれます)

いろんな人物がいますが、重点が置かれて描かれるのはやはりお父さん。

同性婚を頭から否定してるわけじゃないけど自分の身内となると…、というのはリアルな反応ではないでしょうか。

このお父さんの心もようを丁寧に描いているというのが、この映画の大きなポイント。
やさしいポイントかと。

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こういうタイプの映画でありがちな〝融和〟じゃないのがすごく良いです。


異文化とか異人種とか異なる宗教とかの対立と融和を描くとき、

お互いをよく理解することで融和しましたあ〜良かったねっていう映画、よくあるんですけど。
この映画はそうではない。

無理ですからね。
「全ての事象」について深く知ったり、
「全ての属性を持っている人」とゆっくり語り合うなんて、物理的に無理なことなので。

理解し合うことは差別を減らすことには有益だけど、理解し合えないなら差別していいわけではない。
わからないことを差別する理由にしてはいけない。

この映画はこの点がとても良い。
どういう感じなのかは本編を観てくださいな。


そもそも〝成人〟が〝お互いに〟決めた結婚に対して許すも許さないもないんよね。。。

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ラストの展開がこの映画のほんとの肝なんですけど、結構、痛快。痛烈。

「てめーら関係ねえからっ!」ってことですかね。

あ、もうちょっと丁寧な言葉で言い換えますと、、
「大事なのは2人の気持ち♪」ってことですね。

大好きだし、ものすごく納得の展開とラストの締め!



ラストネタバレは以下に!


結局あのお父さんを描きたかったのかな、と思いました。
主役のようでしたし、、
あのお父さんは「外向きにはリベラルぶってるけど自分の(肉親の)問題となると急に堂々と差別し始める人」という
『ゲットアウト』的なモチーフだったと思います。

お父さんが改心したのはパオロが素晴らしい青年だと気付いたからではなく
ただただ自分が愚かだということに気づいたから、だというのも良かったです。

パオロとお父さんが深く会話をしてわかり合って
「パオロが素晴らしい人物だから同性婚を認めよう」というのでは間違っているわけで、

パオロは好青年でしたが
実はパオロがクソだろうと、アントニオが浮気野郎だろうと、
結婚したい二人は結婚する権利があるので、

それを認められないお父さんはただただ愚かで、
自分でも耐えられないほどの愚かさ(教会への放火?)に気づいてやっと改心するというのは、新しいと思いました。


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同性婚を危機に晒すものは…


パオロとアントニオの結婚を危機に晒すのは唯一「アントニオの浮気」だけ。
2人の問題。
それ以外は本当は関係のないこと。


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「かわいいライトなコメディ」という皮を被ってますが、
なかなか攻撃的で、、
同性婚を頭から否定してる人がそもそも存在していないというのも良かったです。

「もうそんな時代じゃねえんだよ」って感じで面白かったです!


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