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図書館司書の適正年収とは

私は当事者として、図書館司書の賃金が上がったらいいなともちろん思っていますが、年収1千万くらいだったらいいのにとは思いません。

そんなことになったが最後、図書館司書から女性が排除されるのが目に見えているからです。

たぶん「本は重いので女子には無理」とか「土日祝日も出勤だし育児と両立しにくいから」とかむちゃくちゃな理屈をつけて女性の採用が控えられるようになり、司書課程も男子で埋め尽くされて女子は受講しにくい雰囲気になり、結果図書館員はおじさんだらけ、ということになるのではないでしょうか。

そもそも「女性活躍推進」などという言葉がむなしく響くのは「すでに女性が活躍しすぎるほど活躍している職種はたくさんあるが、職種全体が極端な低賃金・低評価」という現実があるからです。
図書館司書もそうした「女性が活躍しすぎ」職種ですが、裏を返せば、現在たくさんの女性が図書館員として活躍できるのは低賃金のおかげ、とも言えます。

私が考える図書館司書の適正賃金は、年収300万円台です。

理由は以下のとおりです。
・それだけあればとりあえず大人ひとりが自活できる
・ただし高収入ではないのでお金目当てで志のない人間が応募してこない
・親や配偶者に依存せず、職業人として自立する気概のある人が応募できる
・共働きなら結婚出産も可能
・一方で妻子を養うにはまったく足りない
・したがって共働きで家事育児を抱えながら働く人が、配偶者に丸投げで仕事だけしていればいい人に比べて不利になることがない

現状の図書館司書は多くが非正規で、その年収は一人暮らしだったら健康が脅かされるレベルです。私が今まで働いてきた経験から、図書館業界において年収の高さと能力や責任感はまったく比例しないと言えますが、いくら優秀でやる気があっても命が危うければどうにもなりません。実際それが理由で、泣く泣く図書館の仕事を諦めた司書が多くいるのを知っています。
高い年収を払って主婦付きの男性を雇う代わりにその半分程度の年収で職員の頭数を増やしたほうが採用の門戸も広くなり、育休産休などのフォローもしやすいです。

男女格差をなくそうと考えるとき「えらい人に女性を増やす」よりも「えらい人の賃金を下げる」「えらくない人の賃金を上げる」ほうが格差の是正につながるのではないでしょうか。

国会議員や管理職に女性を増やすより、国会議員や管理職の報酬を下げ、すでにたくさんの女性が活躍している非正規労働者、看護師や保育士、その他ケア労働やエッセンシャルワーカーの待遇を改善するほうがはるかに有効です。一緒に男性の非正規労働者や看護師・保育士なども救済されるので、女性優遇だとか逆差別だと批判されることもありません。


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