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結婚しないで、誰かとともに生きる

「好きな人がいて、末永くともに生きたいと思っているがどうしたらいいか」という質問があったら、「結婚という制度があるので、利用すると便利かもしれません」とは確かに言えます。もちろん結婚しないでともに生きる選択もあるので、その場合は「公正証書とか後見契約とかあるらしいので詳しい人に相談してはどうでしょう」とも言えます。

ただ、「結婚というものがしたいが、いい人はいないか」という質問には正直なんと言っていいかわかりません。結婚は誰かとともに生きる手段のひとつだと思うのですが、これだと相手が「結婚するための手段」になってしまいます。さらには「子どもが欲しい→結婚したい→いい人はいないか」というパターンだと「手段の手段」になってしまいます。

そうなる背景には、今の日本では結婚に対する期待がすごく高い一方で、結婚以外で誰かとともに生きる選択肢がすごく貧しい、という現状があると思います。生活の安定も人との絆も社会的地位も相互扶助も生殖もすべて結婚にかかっていて、下手をすると「結婚か孤独死か」の2択になりかねません。

そこで、「結婚以外で誰かとともに生きる選択肢」について考えてみました。


母系の拡大家族で一緒に暮らす

要するに「成人しても実家を出ないで親兄弟と一緒に暮らし、子どもが産まれたら母方の親族が共同で育てる」システムです。

たとえばお母さんがいて(第一世代ではお父さんもいるかもしれませんが、とりあえずいない設定で)、長男・長女・次女の3人きょうだいだとすると、長女と次女の産んだ子どもを全員で育てることになります。
子どもの目線では、お母さん、自分のきょうだい、母方のおばあちゃん、母方の伯(叔)父さん、母方の伯(叔)母さんとその子どもであるいとこたちと一緒に暮らすことになります。

メリット①家族全員に血縁関係がある
配偶者の親と同居する従来の拡大家族では、お嫁さんなりお婿さんなりだけが他人なので、不利益を被ったり(最大のポイントは相続権がないことでしょう)気まずい思いをしたりしますが、母系家族ではその心配がありません。

メリット②保護者の恋愛関係が子どもの養育環境に影響しない
現状の家庭は、恋愛関係や性的関係で結ばれたカップルによるものなので、子どもの養育もそれに依存します。両親の愛がさめて外に愛人ができれば即家庭崩壊の危機です。子どもからしたら自分と関係ない恋愛沙汰のせいで環境が激変し、引っ越しや転校、改姓を余儀なくされることもあります。
それに対して母系家族では家族の誰とも恋愛関係や性関係がないので、保護者に恋人ができようが別れようが、子どもには関係ありません。

メリット③複数の担い手がいる
4人も大人がいれば、2人がフルタイムで働き、1人はパート、1人は育児に専念、といった分担がききます。将来おばあちゃんに介護が必要になれば、子ども3人と孫数人の支え手がいることになります。誰かが失業した場合の経済リスクも軽減できます。

メリット④恋愛弱者が孤立しない
もしここの長男であるお兄さんがいわゆる「非モテ」だったとしても、低収入だったとしても、孤独死することはありません。姉妹の子どもである甥姪の面倒をみることで次世代育成に貢献し、家族に囲まれて老後を迎えることができます。配偶者としては選ばれなくても、収入に応じた金額を家に入れてくれ、それなりに家事育児を分担してくれれば「いてくれて助かる」存在になります。姉妹からしても「男性にモテず結婚できなくて出産可能年齢を過ぎてしまう」ことがありません。

また子どものお父さんとも、まともな人であれば絶縁する必要はありません。子どもからしたら、盆や正月、法事といった集まりで年に数回会ってお年玉をくれる人、という親戚のおじさん的な位置づけになると思います。

同性の友人と一緒に暮らす

同性のパートナー、というと同性愛者の問題だと思われがちですが、単なる友人、という選択肢もあって良いのではないでしょうか。同性愛だと結局「恋愛対象として選ばれなければ孤独死」のパターンから脱却できないので、むしろ友人のほうが可能性は広がります。
シングルマザー同士でチームを組んで助け合う、という可能性も出てきますし、「キャリアを優先してバリバリ働きたい派」と「ゆるく働いてパートナーをサポートしたい派」の組み合わせも考えられます。
また、「自分は金もないしモテないので結婚できないから孤独死確定だ」と絶望する人の記事を見るたびに「モテない人同士で一緒に暮らしてはどうか」と余計なお世話かもしれませんが考えます。
仮に年収200万だとしても、2人合わせて年収400万の世帯になれば、それぞれ一人暮らしするよりは確実に楽になります。生活費と家事を折半してくれる能力さえあれば、べつに容姿がどうとか性的魅力がどうとかいうこともないので、あとは気が合えば一緒にゲームしたり馬鹿話で盛り上がったり、愚痴を言い合ったりすることもできます。「おまえ、いいやつだなあ。いてくれて助かるよ」くらいの感じでも自分を肯定してくれる人がうちにいれば、心の支えになるのではないでしょうか。少なくとも死後数カ月経過してから白骨死体で発見される、といったことは避けられます。

まとめ

もちろん「親きょうだいとうまくいっていないので実家とは縁を切りたい」とか「同性の友人より異性の恋人と暮らしたい」という人も当然いるでしょうから、結婚を否定しているわけではありません。

大切なのは「とりあえず信用できるまともな人」「好きな人、一緒にいて心地よい人」と暮らすこと、誰も否定されないことです。

現状では、結婚以外で誰かとともに生きようとすると、法的・社会的な壁が立ちはだかることが多いので、たとえば結婚しないで助け合って生きる契約ができる「パートナーシップ制度」だとか、「副保護者」のような立場でパートナーの子どもを養育できるような仕組みがあると良いかもしれません。

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