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図書館のお仕事紹介(9)受贈

受贈とは、寄贈された資料の受入にかかわる業務です。
くれる側の立場からは「寄贈」ですが、図書館側からは「受贈」になります。
「くれるものをもらうだけだろ」と思われるかもしれませんが、寄贈によって発生する事務はけっこうな作業量になるので、私の勤め先でもちゃんと受贈の担当者がいます。

作業を一覧にすると、このようになります。

・寄贈者の意志確認(とくに受入先や受け入れなかった場合の処分方法)
・寄贈資料のリスト作成
・重複調査(すでに図書館に所蔵されているものがないかチェックします)
・受入する資料の選別(これがたいへんです)
・受入が決まった資料の登録・装備・配架
・受入しなかったものの処分
・(必要な場合のみ)寄贈者へのお礼状

寄贈者の意志確認というのも重要で、私も自分が利用者として図書館に寄贈する側になったとき「受入せずに処分させていただく可能性がありますがよろしいですか」と最初に言われてちょっと嫌な気分になりましたが、図書館としては後になって「寄贈したものを捨てるとは何事だ!」とトラブルになる可能性があるので、ここは念押ししておく必要があります。中には「受け入れないなら返してほしい」と言う人もいます。

受入しない理由としては、所蔵資料と重複、資料の状態が極端に悪い、図書館の収集方針と合わない(たとえば医療情報の図書館なのに浮世絵の研究書を大量に贈られても「他所にお持ちいただいたほうが…」となります)、内容的に問題がある(カルト宗教の布教本とか)などです。

結果的に受け入れないものはかなり多くなるので、私の勤め先でも「寄贈されたけど受入しなかった本」が山になっていて、この処分方法も頭が痛いです。

本そのものはタダだとしても、受贈業務にかかわる人件費や保管スペース、処分費用などはタダではないので、図書館の負担としては小さくありません(日常生活でも「とりあえずあげるから試しに使ってみてー。要らなきゃ捨ててくれていいからー」と気軽に要らないものをくれる人がいて、イラッとしたりしますね…)。
図書館によっては「寄贈はいっさい受け付けない」とか「あらかじめ図書館が指定したタイトルのみ受け付ける」という方針を取っているところもあります。

かと言って寄贈がぜんぶ迷惑というわけではもちろんなく、実際に「買おうとしていた本が寄贈されたおかげで予算が浮いてラッキー」ということもありますし、絶版本や非売品などで寄贈でしか手に入らない貴重なものもあります(だからこそいちいち精査が必要なのです)。

できれば本だけではなく「図書館員の人件費」とか「保存書庫」とか「専門知識のある司書の育成費用」とかも寄付してもらえればいいのでしょうが、なかなかそうはいかないのが現実ですね。


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