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検索の限界

職業柄、学生の利用者さんと接する機会が多いです。

最初は「いやあイマドキの若者なんだし、みんなネット検索なんて慣れてるだろうから、教えることなんて何もないんじゃないの」と思っていました。

ところがだんだん「若い世代の検索能力というのは、こちらが予想したほど高くないらしい」と思い始めます。

そして最近思うのは「そもそも検索という行為は、ある程度人生経験がある人のほうが有利なのではないか」ということです。

これはネット検索だけでなく、カード目録や冊子体の検索でも同じことで、世代の問題ではありません。
検索するためにはキーワードを決めなければなりませんし、そもそも検索する媒体を選ばなければなりません。そのためには過去の経験から「こういった情報はこういう系のメディアで、こういうかたちで載っていることが多い」とか「こういったキーワードでヒットしがち」といった予備知識のある人が圧倒的に有利です。
もちろん若くて検索が得意な人もいますが、それはむしろ老成というか、年齢に似合わず経験豊富な人なのだと言えます。

ちなみに図書館で「この本、ちょっと配架場所と分類がわかりにくいけど、ま、必要な人は検索で見つけてくれるでしょ」とこちらで思うようなものはまず見つけてもらえません。

そこで気になるのは、情報をデジタル化することの危険さです。
電子化された情報というのは、検索しないと出会えないようなものばかりです。
例外はシステムから「おすすめ」されてくる情報でしょうが、この「おすすめ」の根拠というのは以下のようなものです。
①おすすめする側がおすすめしたい情報。要するにプロモーションの類。
②過去の検索履歴・閲覧履歴に基づいたおすすめ。
③ユーザーの属性(年齢・性別・地域など)に基づいたおすすめ。

①は論外としても、②と③も既存の傾向を強化するだけで、こちらの世界を広げてくれるものではありません。
そうかと言って完全にランダムに、何の根拠もなくおすすめしてもらっても、選択肢が膨大になりすぎてほとんど刺さらない可能性が高いです。

紙の本と、リアルな場所としての図書館や書店の重要性はここにあります。

若ければ若いほど、目の前に現物が広がっていて、自由に手に取れる環境が必要なのです。

学生でもそうなので、子どもならなおさらです。
検索能力を鍛えることも必要なのでしょうが、それ以前に検索しなくても出会える世界が豊かであることが必要なのだと思います。


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