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ぼくがアメリカのテック企業で働くために考えた選択肢

どうも、こんにちは。福原たまねぎです。

今回はぼくがアメリカに来るにあたって検討したオプションについてじっくり書こうと思う。今ぼくはアメリカのシアトルに移住して、Amazon.comのプロダクトマネージャーとして仕事をしている。ずっと昔から「いつかグローバルな環境でプロダクト開発をしてみたい」と思っていたわけだけど、なんとか試行錯誤を繰り返してやっと今に至ったという感じだ。

こちらの記事では、実際にどんな過程を経てぼくが今の仕事に就いたかについて記した (ご興味ある方はぜひチェックしていただけると嬉しいです!) 。ただ、ぼくが辿った道筋以外でアメリカに来る方法を考えなかったといえば、そんなことは全くはない。むしろありとあらゆる方法を考えては、尻込みし、もしくはトライし、といったことの繰り返しだった。

テクノロジーの分野で仕事をするためには、なにもアメリカに来る必要なんてない。日本にだって素晴らしい会社はいっぱいあるわけだし、わざわざアメリカの会社に就職して、加えて移住してまで働くなんざ面倒もいいところだ。なので「みんなアメリカに来たほうがいいよ!」なんてことはぼくはぜんぜん思っていない。そこはまず前提としてことわっておきたい。

なんだけれども。GoogleやAmazonといったみんなの生活を各方面で支えている企業のその本社で働くことに魅力を感じている人は少なからずいるんじゃないだろうか。もしくはアメリカのテックの本場で急成長を遂げるユニコーン企業・スタートアップに参画したいと思っている人だっているかもしれない。

ぼくもそんなことを考えている人間のひとりだった。そんなことを考え始めた大学生時代から10年弱の時間を過ぎて今、こっちでせっせと働いている。この文章を書いている時点で言えることは、やっぱりアメリカのテクノロジー業界の中心に身を置いて働くことはそのダイナミックスからしてぜんぜん違うし、とっても面白いということだと思う (もちろん個人の意見)。

アメリカで働くためには、色んなパスが存在する。そしてどんな方法を使ってアメリカにやってくるかは一人一人異なるものだ。そんなわけなので、ぼくの話もあくまで一つのサンプルとしてきっと誰かの何かの役に立ったら嬉しい。これからアメリカのテックの本場、つまりシリコンバレーやシアトルといった場所に来て働くということに興味がある方に少しでも参考になればなによりです!

以下、ぼくがアメリカのテック企業で働くために考えた選択肢についてつらつらと書いていく。

1. とりあえず直接アメリカに行く

「アメリカで働きたいです」なんて相談をすると「じゃあとりあえずアメリカに行っておいでよ。行動しなきゃ!」とまくし立てて来る人があなたの周りにもいるかもしれない。10人に1人ぐらい。いや、もっといるかな?

いずれにしろぼくはこの考え方にはあまり賛同できない。ただ"アメリカに行く"ということであればもちろんとっとと行っておいでよ、という話には合点がいく。旅行なり留学なりいくらでも方法はあるわけだし。ただ、"アメリカで働く"となると話は別だ。ビザの問題はどこまでもつきまとうし、どうやってビザを取るか(つまり働く権利を得るか)という難題には綿密な計画と戦略が必要だと思う。このビザ問題が多くの場合「アメリカに行ってなんとかなる」ということではない限りにおいて、やっぱりどんな選択肢があるかを吟味する必要があるだろう。

2. MBA

まず前提としての話。わざわざ本国で生まれ育ったアメリカ人を差し置いて外国人を採用するのだから、その外国人には"特別優れた何か"がないといけない。その"特別優れた何か"は大雑把にいうと"専門性"という言葉に言い換えられると思う。この専門性はアーティストだったら音楽や演劇で秀でたものがあるとかだし、スポーツ選手だったらめちゃくちゃ野球がうまいとかだろう。普通のビジネスマンであれば、ソフトウェアエンジニアリングだったり、デザインだったりが専門性にあたるわけだ。この専門性を得る上で、最も現実的で有効な手段になりうるのが、アメリカの大学院に行くという選択肢だと思う (もちろんアメリカじゃなくてもいいけどアメリカ就職を念頭に置くとアメリカの大学院の方がチャンスは多いかもしれない)。ファイナンスであれデザインであれ、もしくは経営修士号であれ、専門性があるというお墨付きがあれば働きやすくなるんじゃなかろうか、という考え方だ。

ぼくの場合アメリカの大学院の中でも最も現実的な選択肢だったのはMBA (Master of Business Administration)だった。もちろん"専門性"という軸で見るとコンピューターサイエンスとかの学位の方が圧倒的に強いし、テクノロジーの分野で仕事を得る上でその学位は強力なカードになる。「エンジニアの仕事をしてきました」という人であればこの選択肢はかなり魅力的だし強くおすすめするけれど、自分のように文系出身の人間からすると結構難しいオプションなわけだ。こういったエンジニアリングやデザインなどの分野で専門性を身につけることが現実的でないビジネスマンにとって、MBAはそれとなく箔を付けるステップとして機能していると思う (もちろんMBAの価値は箔を付けるだけではないことは重々承知してる)。ばっくりとした"ビジネス"の学位なわけだから、これといった専門性には正直ならないと思う。ただ、トップのMBAを卒業していれば、そしてそこで学んだことをうまく伝えられれば、「この人には尖った部分がある」ということを説得できるだろう。少なくとも当時ぼくはそう考えていた節がある。

ぼくがMBAを検討していた当時は、スタンフォード大学とかがやたら脚光を浴びてて、「スタンフォードに行けば、みんな起業してカッコよく成功する」みたいなイメージが先行していた気がする。ぼくだけかもしれないけど笑。でも実際に、Googleを創業したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンはいずれもスタンフォード出身だし、Netflixを創業したリード・ヘイスティングスはスタンフォードのMBA出身だったりする わけで、例を挙げ始めたらキリがないだろう。ぼくもそんなシーンに随分魅せられてスタンフォードをはじめとしたトップのMBA校に行きたいなと思った時期があった。

でも結論を言うとぼくはこの選択肢を取らなかった。理由は二つある。
i) ひとつはMBAを取ったからといってアメリカのテック企業に入れる保証はどこにもなかったからだ。ビザの規定はコロコロ変わるものなのでこのNoteでは詳細には触れないけれど、その当時ぼくが調べた範囲ではMBAを卒業しても1年ほどインターンなどをする権利が得られるだけで、数年単位で働く権利が得られるということにはなっていなかった。MBAに通うとなると結構なお金がかかるわけだ。授業料に生活費にざっと見積もっただけでも数百万円にはなる。それを奨学金を得るなりローンを組んだりしてこのお金を工面することになるのだ。ぼくは学位を取ったりMBAに通うこと自体がゴールではなく、あくまで「アメリカの本場のテック企業に潜り込みたいな」というのが最終目標だった。なので、数百万払ってもそのゴールにつながるか分からない選択肢にベットすることは、賢い選択肢には思えなかった。
ii) もう一つある。これはもう正直に言うよ。MBAの受験勉強がちょーーーめんどくさかったのだ笑。MBAを合格するためには英語の試験 (TOEFLやIELTS)で高得点を出してその結果を提出する必要があったり、GMATというテストで各学校が設定した最低ラインみたいなのも超えないといけない。ぼくはMBAを考えていた当時、アマゾンジャパンで楽器・音響機器部門でWebディレクターの仕事をしていたりPrime Dayなどの会社をあげたセールイベントの仕事をしていたりといった時期だった。そういった仕事のある意味で"ど現場"で奔走していた自分にとっては、机にしがみついてお勉強をすることがアホみたいだなと思っていた。強調しておきたいのは、これは難関のMBAへの入学を勝ち取った人をディスったりしていているわけでない。もっというとあの難しいテストを仕事しながらクリアしていくことができた人には尊敬の念を抱かざるを得ない。なので、単純にぼくにはムリだったというだけの話だ。

そんなこんなでぼくはMBA経由でアメリカのテック業界に進出する、という選択肢は諦めた。ただ、似たようなオプションでもう一つ考えた道があるので、そちらも書いておこう。

3. デザインスクール

MBAだと専門性に乏しい --- 文系でもなにか専門性をつけられる大学院ってないだろうか。そんなことを考えていた当時、アメリカの大学院の中でデザインの要素を盛り込んだMBAというのが生まれ始めていた。従来のMBAのように経営学+@のことを学ぶだけでなく、プロダクトデザインのことなんかも勉強するところで、将来のプロダクトマネージャーを養成するようなコンセプトだ。ぼくは絵とかデザインとかそういったものに興味がずっとあったので(なんなら今でもプロダクトデザインに関する仕事もやっているわけだし)、この新しい"デザインスクール"という括りには随分惹きつけられた。マサチューセッツ工科大学 (MIT)がIntegrated Design Management (IDM)というデザインプログラムを立ち上げたのもこの頃で、ぼくはこの学校にとっても行きたかった。デザイン、エンジニアリング、ビジネスを一流の教授陣から教われるということであれば、行きたくないわけなかった。デザインスクールは他にもカーネギーメロン大学が似たようなプログラムを持っていたり、ざっと調べたところ今はハーバード大学なんかも同じようなコースを設けているみたい。

この選択肢は自分にとってMBAよりも魅力的に映ったのだけど、MBAと同じ理由でこの道には進まなかった。ただ、これからアメリカの大学院にいって将来的にテックの職場で働きたいという人には、結構強くおすすめしたい。もちろんビザが取れるか問題はつきまとうけど、まだまだこの学位を持っている人の数は少ないだろうし、MBAやコンピューターサイエンスの学位を持っている人と差別化することができると思う。

4. 日本の会社に入って転勤を狙う

これは真剣に検討したものではないけれど、「こういう選択肢もあるかも」と一瞬考えたというやつだ。「外資系の会社は日本での職務を全うすることを求められているから逆に本国にいくチャンスは少ない」といった見方がある。逆にいうとアメリカとかで働くならそこでビジネスの拠点を設けている日本企業に入った方がチャンスがあるかもという見方が同時に存在する。要は日本企業に入って海外転勤を狙うということだ。

ただこの選択肢は自分でコントロールすることが難しいんじゃないかとぼくは思った。ぼくの場合は「テックの本場、アメリカの西海岸側に行きたい。シリコンバレーとか行けたらいいな。」とピンポイントで行きたいところがあったわけなので「海外ならどこにでも飛ばしてください」というのとはぜんぜん違った。仮にとっても素晴らしい会社に入って自分の意思を尊重してくれることがあるとして、自分が行きたい場所に都合よく転勤させてくれる可能性ってどれくらいあるのだろう?個人的な考え方に過ぎないけれど、ぼくはその可能性に賭けるのはなんだか人任せな気がしたのだ。

そういうわけで日本の大企業、例えばメーカー・商社に入ってというような選択肢もここでたち消える。

5.外資系の日本支社に入って異動を狙う

そして最後に紹介するこの選択肢がぼくが実際に取ったものだ。この決断を取った経緯を簡単に紹介したい。

i) フリービットでお休みをとって現地で就職

ぼくは大学を卒業してフリービットというベンチャー企業で働いていた。新規事業の立ち上げやプロダクト開発なんかをやらせてもらい、すごく生産的に時間を過ごすことができた。ただぼくはやっぱりアメリカのテックのシーンに行きたかったので、なんとかアメリカの会社に、しかも日本支社とかじゃなくて現地採用で入れないかと画策した。ぼくはフリービットでの3年目の時に10日ほどのお休みをいただき、その間に無謀にもアメリカで転職活動ができないかと思い立った。友達のともだちにGoogleの本社で働いている人がいたので(彼はアメリカ人)、その家に転がり込んで、滞在している期間でなんとか面接してくれる企業とかないかなと考えた。事前に色々と調べたところ日本人でアメリカのテック企業へのリクルーティングをしているという人を見つけたので、ぼくはその方にメールをして「どうしても会いたいです!」といって会う約束を取り付けた。サンフランシスコから船でちょっといったところにあるサウサリートというところに向かい、海が見えるおしゃれなカフェでそのリクルーターの方とお会いした。英語で書いた履歴書を手渡しして「アメリカのテック企業になんとか入れないものでしょうか」と聞いてみた。履歴書にはまったく興味を示してもらうことはなく笑(まあ仕方ない)、現実的にどうやったらアメリカに来れるかということについてアドバイスをもらった。どの話もすごく役に立ったのだけど、その中でも「GoogleとかAmazonの日本支社に入って本社に来るというのが最も可能性が高い選択肢のように思える」ということを言われた。もちろん本社にくるにはいろんな運を掴んだり必要なステップを社内で踏んだりといった必要があるので、この選択肢も100%確実ということではない。ただ「会社がビザのサポートをしてくれる可能性が非常に高い」ということが鍵だった。大体こういう大きなアメリカのテック企業は駐在員用のビザを一定数抑えているので、アメリカでのポジションの採用に受かったら直ちにビザを発行してもらってアメリカで働けるだろうという話だ (ちなみに結論をいうとぼくはまさにこのルートを辿ったわけだ)。

最初はGoogleとかAmazonの日本支社というと、正直にいってあまりいいイメージがなかった。「きっと大事なことはほとんど本社が決めているんだろう」とか「日本支社は営業的なことだけをやっているのだろう」というイメージがあったので、プロダクト開発をしたい自分にとってはハテナなところが当初あった。ただ、このサウサリートで聞いたアドバイスを受けて、直感的にこの選択肢だろうなと思った。MBAやデザインスクールのように多額のお金を払うことなく、ビザのサポートまで得られる。これは自分が進む道を決断する上で、大事な考慮事項だったと思う。

ii) アマゾンジャパン

そんなこんなでぼくはフリービットにいる間に転職活動をして、合格をもらったアマゾンジャパンに行く。ちなみにここからの道は結構長い。入社する前から転職仲介企業の担当者から「どういったパスでアメリカ本社に行けるのか?」といった話を聞いていた。アマゾンジャパンに入ってからもどういう人が本社に行けるのかということについて情報収集をコンスタントにしていた。調べた結果わかったのは、1) 一定のシニアポジションじゃないとアメリカに行けるポジションは結構限られてしまう、ということに加えて 2)アメリカ本社に行くには結構な英語力が必要 (特にドキュメントを書くことはポジションを問わず多いのでそこは実力が求められる)ということだった。

ぼくはプロダクトマネージャーとしてアマゾン本社に行きたかったので、まずはWebディレクターからプロダクトマネージャーになれるようにあれこれと頑張った。その辺の経緯は こちらの記事に書いたので詳細はそちらに譲るが、社内の人脈だったりを使ってセールイベントを管轄するチームに入り、プロダクトマネージャーへとポジションチェンジをした。その後もアメリカのメンバーと仕事をする機会が多いプロジェクトには率先して手を上げ、Prime Day (プライムデー)なんかの日本での取り仕切りだったりに精を出していた。そういった仕事で、またプライベートの時間も使って)英語を数年間かけて鍛えていった。「アメリカ本社にいったら英語ができないなんて言い訳できないだろう」ということはよく分かっていたものだから、ぼくなりに緊張感を持って日々トレーニングをしてたといえよう。そんなこんなで仕事に英語にとがむしゃらで頑張った後に、シニアプロダクトマネージャーというポジションに着いた。そのポジションにつくことがアメリカ本社に異動する切符を手にしているということは認識していたので、そこから実際にアメリカのでポジションを探し出し、グローバルのセール機能を開発しているチームに晴れて参画する、という流れでぼくは長年のゴールに辿り着いた。アマゾンジャパンに入社してから6年という歳月を要した後のことだった。

最後に

ここまででぼくがアメリカのテック企業で働くために考えた選択肢についてはおしまい。最後に自分がこれまでのいきさつで学んだことというのをまとめておきたい。

1) 10年というスパンで取り組むことで成し遂げられることがある

ぼくがアメリカのテック企業で働きたいなと思った大学時代から実際にそうなるまでには10年ほどの時間がかかった。それを経て今しみじみと思うことは

10年単位で一つのテーマに取り組めば何かしらかたちにはなる

ということだ。ぼくはその過程でMBAやデザインスクールも断念したわけだし、アメリカでの転職活動"もどき"もぜんぜんうまく行かなかった。なんだけどそこで諦めなくて本当によかったなと思っている。ちょっと失敗したり挫折したりしたぐらいで道を閉ざすのではなく「こっちがダメなら次はあっちでいってみるか」といった機転をきかし、この試行錯誤を長い時間をかけてやることが大事だと思う。

もちろんアメリカにもっと早く来たかったか?と聞かれれば答えはイエスだし、なにも10年かけずに済めばそれに越したことはないと思う。ただ、今の時代は何でもかんでも効率的に早道でやることが美徳とされているように感じるけれども、腰を据えて物事に取り組むことは何かを成し遂げる上ですごく重要なことだと思う。これは何も「アメリカで働く」というテーマじゃなくてもなんでも当てはまると思う。「起業して成功する」とか「ブログを書いて有名になる」とか「英語をネイティブレベルでうまくなる」とか。そのどれもが忍耐を要するものだと思うけど、「10年ぐらいかけてかたちにするぞ」という気構えでいることで、変に自分にがっかりしたり焦ったりといったことがなくなると思う。ちなみに余談だけど、アマゾンを創業したジェフ・ベゾスも事業をやる上でのアドバイスとして同じようなことを言っていた。「よし、おれも同じことを言ってるぞ」と勝手にほくそ笑んだことを覚えている。

2) 少しでも可能性がある方向にジャンプしていくことが大事

アメリカに来るちょっと前にアマゾンジャパンの同僚と話した時のことだ。セールイベントのチームの同僚に当たるその方と社内のカフェでコーヒーを飲みながら話をしていた時にこんなことを言われた。「福原さんのキャリアの積み上げ方って"明確にこういうパスを辿る"っていうんじゃなくて"なんとなくあっちだよな"っていう匂いをかぎつけてそっちにとりあえず進むって具合だよね」と。これは他人に言われて、「なるほどそうか」と妙に納得した。

アマゾン本社で働くために辿った道が最初からクリアに見えていたわけではもちろんない。ただ、色んな選択肢を並べた時に「なんとなくこっちじゃないな」とか「なんとなくこっちだな」みたいなことを嗅ぎつけて、「こっちに進むべきだ」と直感で思った方に決めて突き進む。ぼくの場合はアマゾンジャパンに行くと決めた時も、セール担当チームに行くときもぼんやりとそっちの道が光っているように見えたのだ。もちろん振り返ってみても、これらのパスを辿ることがアメリカで働くことを保証するものではない。ただ「この道を通った方が"可能性が上がる"だろう」という理由で選択しているのだ。なんでもそうだと思うが、最終ゴールへの道が綺麗に舗装されているなんてことはなくて、少しでも可能性が上がる方にぴょんぴょんと飛びついていくことが、キャリアを前に進める手段なんじゃないかとぼくは思う。

MBAやアメリカの大学院に行くという選択肢をぼくは取らなかったけれど、もし自分がいる環境でその選択肢がアメリカ就職に近づくだろうという直感があるのなら、ぼくは絶対に行くべきだと思う。直感で「自分はこっちだな」と思う道は、各々が置かれている環境や手にしている持ち札によって一人一人違うものだ。他人の成功例や頭で考えたパスだけを信じるのではなく「なんとなくこっち」という感覚を大事にすることが肝要だと思う。

3) 採用する人の視点に立って「何で戦うか?」を考える

これはアメリカのテック企業の面接をくぐり抜ける上でも重要なポイントだ。あなたがGoogleであれAmazonであれスタートアップ企業であれば、そのポジションが属するチームが、もっというとそのポジションを採用する責任者が(首尾よく入社したあかつきにはこの人があなたのマネージャーになるだろう)どんな人を求めているのかを想像することがすごく大事だと思う。「エンジニアの話が分かってプロダクトの戦略をまとめられる人」なのか「部下をまとめあげてトップレベルの上長にうまくレポーティングができる人」なのか、とか色々あると思う。Job Description/募集要項から、もしくは採用担当者との会話からこの点を理解し、そこから逆算して自分の何を売り込むのかを塾考するのだ。そしてその上で更に考えないといけないのはあなたが競争する相手だろう。当然といえば当然だが、あなたが手にしたいというポジションを求めているのはきっとあなただけではないはず。アメリカのテック企業での仕事を志望する人となると、アメリカ国内だけでなく世界中の尖った人たちと同じポジションを争うことになる。その競争の中で、自分が何を武器に戦って勝つかという視点が求められる。

キャリアを積む上では「この何で戦うか?」を深く考えて専門性や経験を築いていく必要がある。そしてこの専門性と経験こそが、あなたが行きたい国や就きたいポジションで働く選択肢を直接的に増やしてくれるはずだ。ぼくの場合は、エンジニアやデザイナーとプロダクト開発を進めるプロジェクトだったり、アメリカのメンバーと一緒にセールイベントをやったりするプロジェクトだったりに意識的に時間とエネルギーを注いだ。"そういうことが出来る人"という枠で自分をキャラ作りしようとしていたからだ。このほかにもプログラミングをやったり、社会人向けのデザインの学校に通ったり、色々やった。うまく自分の強みになったものもあれば、そうじゃないものもたくさんある。

ぼくが実際にアマゾン本社を受けるときに考えたことはこうだった。受けたのはグローバルのセール機能を開発するチームのプロダクトマネージャーというポジションだったわけだけど、何を売りにして戦うかを考えた。それこそアメリカで生まれ育った人に英語で勝てるわけもない。コンピューターサイエンスの学位もとっていないし、エンジニアリングの土壌で戦おうとしてもムリがある。そういったことを踏まえて、ぼくが武器に使うことにしたのは「社内のセール機能を熟知している」ということと「アマゾン内で開発経験がある」ということだった。アマゾンジャパンという社内でセールに関することを6年もやっていたわけだから、ここはさすがに他の候補者には負けないなと思っていた。面接の場でもこれらの点を強調した結果、「こいつ分かってるねー」と思ってくれた気がする(実際に面接のフィードバックでもそう言われた)。

これは自分の場合は日本支社ルートから挑戦したのでそのアドバンテージを生かしたというだけだ。これがまた別のルートであれば、強調すべき差別化ポイントも当然変わってくるということになる。キャリアを構築していく上で何を強みにしてチャンスをもぎ取るかは十分に考える余地があると思うよ、という話でした。

そんなところかな。写真はスペースニードルの近くのカフェにて。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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