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Amazonの米国本社に来てイヤだなって思ったこと

シアトルのAmazonで働くことはとても楽しいし素敵なことがいっぱいある。そんなこんなについては前回の記事で書いたけれど、到底一つの記事では書き表せないほどだ。そのすべてに感謝しているし、チャンスがある限りこれからも納得するまで仕事を頑張っていきたいと思っている。ほんとに。

でもそれだけじゃあ………ないんです。

良いことばかり書くんじゃなくてそうじゃない面も書くほうがフェアというものだ。そしてなによりもアメリカ就職やGAFAMみたいなテック企業の本社で働くことに興味がある方にとっては、プラスな面だけでなくて"そうじゃない面"についても知っておくのが有意義だろう(たとえそれが一社員の個人の感想だとしても)。なので今回はいいことではなくて、逆に「Amazonの米国本社に来てイヤだなって思ったこと」にフォーカスして書いてみる。

今回もあくまで一意見として(されど一意見として)ご賞味いただければです。

トップダウンは少なくない

アメリカ本社で働いていてメンタル的にも体力的にも随分とキツいときがある。それはトップダウンでガンガン指示が飛んでくるときだ。

USで働いていると必然的に"超お偉いさん"との距離が必然的に近くなる(これはAmazonの日本支社や他の海外支社で働くのにと比べてという意味で)。この"超お偉いさん"というのはいわゆるSenivor Vice President (シニア・バイス・プレジデント) やもっと上のAmazonのEコマース全体を統括するCEO (今だったらDoug Herrington / ダグ・ハーリントンという人)、ひいてはAmazonのCEO (Andy Jassy / アンディ・ジャシー)なんかも含む。

ぼくはAmazon全体のセール機能を開発しているチームで働いている。セール機能はグローバルの売上にダイレクトに直結する機能なこともあることもあって、こういう重要人物からあれこれリクエストが飛んでくることも少なくない。依頼元がとんでもなく偉い人だから必然的に開発チームも必死になってその期待に応えようと動く。開発チームは基本的にリソースがパンパンな状態なわけだけど、そんなことはお構いなしにリクエストはやってくる。プロダクトマネージャーとしてぼくはエンジニアをなんとか説得したり今やっているプロジェクトの優先順位を下げたりして調整する羽目になる。仕事のうちとはいえ、これがはっきり言って骨が折れるものだ。

アメリカ本社で働くということは、こういう高い位のリーダーのお膝下で働くことを意味する。なのでこういった例はセールの開発チーム以外でも頻繁に耳にする。ぼくはその以前にアマゾンジャパンという日本のチームで6年働いていたわけだけれと、やはりアメリカに比べると海を隔てた日本はこういう無茶振りからは結構守られているような印象を受ける(あくまで個人の意見として)。

念のため弁明しておくとトップ・ダウンが悪いということを言いたいのではない。なんなら経営陣にとってトップ・ダウンとは組織をスピーディーにかつダイナミックに動かす上でなくてはならないカードだとぼくは思っている。なのでカスタマーに正しい価値を提供するためだったら躊躇なく上から指示を出すべきものと本気で思っている。

でもその数があまりに多いと組織や人は疲弊しちゃうこともあるのかな…というのが正直な意見。ぜんぜん批判とかじゃなくて。

なお、このトップダウンが多いというのはオーナー社長がブイブイ回しているベンチャー企業でもさして様相は変わらないだろう。ぼくも日本のベンチャーで働いていたので肌身に感じるところだ。

レイオフはやっぱり怖い

2022年末から2023年にかけてテック業界を中心にレイオフ(一時解雇)が猛威を奮ったことは記憶に新しいかもしれない。このレイオフは会社を問わずアメリカでその多くが実施された。言い換えれば同じテック業界でも日本やヨーロッパなどアメリカ以外の国ではその被害は比較的小さかった。

なぜアメリカで大規模なレイオフが行われたか?その理由はいくつか挙げられるだろう。そもそもアメリカで雇用している人の数が圧倒的に多い (例えばこれを書いている時点でAmazonグローバルで働く全160万人の従業員のうち110万ははアメリカにいる)とか、アメリカでは一雇用あたりのサラリーが高いからレイオフする際の効果が大きいとか。そしてもちろんレイオフがしやすいという法律的・商習慣的なバックグラウンドも色濃く影響している。

「アメリカはレイオフがよくあるから、解雇されたアメリカ人もさして驚かない」という言葉をよく耳にしていた。でもぼくが直近のレイオフで見た光景はぜんぜんそれとは異なるものだった。

誰もが自分がレイオフされないか心底心配しているように見えた。それはアメリカ人のメンバーもそうだし、レイオフされると強制的にアメリカから出ることになる可能性が高い外国人メンバーもそうだった。もちろんぼくも例外ではなくビビりまくっていた。テック業界全体でレイオフをしていたわけなのでクビになったあとすぐに他の会社に転職できるわけではない、という事実も大きな不安要素だった。何はともあれ大規模のレイオフがアナウンスされていた時期はどんな社員も気がきでない状態で、シアトルのオフィス街もどんよりとした空気で溢れていた。…まあシアトルは天気がわるいから元々どんよりしているんだけど(笑)、そんないつもの何倍にも増して暗い雰囲気だったのは付け加えておく。

ぼくが仲良くしていた日本人の同僚も残念ながらインパクトを受けた。ぼくは程なくして本人からその経緯を聞くことになるわけだけど、その時は本当にショックで言葉をなくした。どんな言葉をかけたらいいか分からなかった。

レイオフの対象者には手当が支給されたりはするが(例えば給料3ヶ月分を退職金として渡されるとか)、次の仕事の見込みがないまま外国でクビになるというのは相当ヘビーと言わざるを得ない。

アメリカはレイオフがあるから心して注意しないといけない。だからこそ、いつでもどこでも働けるように実力や専門性をつけておく必要がある。このレイオフはAmazon US本社だけであるわけでないけれど、アメリカで働く共通の不安要素としてここに記しておきたい。


こじんまりとした居心地の良い場所でした

今日はそんなところですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。少しでも気に入っていただけたらスキしていただけると嬉しいです。

旅行で訪れたブルックリンにて。ポップでカジュアルなカフェでアイスコーヒーを飲みながら。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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