見出し画像

バンクーバー旅行記 - "シアトルの兄弟"と呼んでいいかしら -

バンクーバーはずっと行きたかった。ぼくが住んでいるシアトルから飛行機で1時間、もしくは車で3時間ほどの距離。陸続きなので車でさっと行けてしまう。それもあってかシアトルに住んでいる多くの人がちょっとしたお出かけでバンクーバーを訪れるという話をよく耳にしていた。近いとはいえシアトルはアメリカの、そしてバンクーバーはカナダの街なので国境をまたぐことになる。でも感覚としては"隣町"のようだ。

Google Mapより。バンクーバーとシアトルは国境沿いに隣接する。

バンクーバーにはAmazonの大きいオフィスがいくつかあって、今回出張で行けることになった。めちゃありがたい機会!‥というわけで早乗りして街散歩を満喫することにした。

「バンクーバー楽しみだよね〜」という話を出張の直前に同僚のリサとしていた。するとリサの口からこんな印象的な言葉が。

バンクーバーとシアトルはほんとうに色んな意味でよく似てるよ。

ミドルエイジのアメリカ人女性の彼女はどうやら何度もバンクーバーを訪れたことがあるみたい。そんな彼女がそう表現するのだから、それなりの真実がそこには含まれているのだろう。リサの言葉はぼくの頭にガムのようにくっついて離れず、そしてぼくのバンクーバー散歩は「シアトルとどこが似てて、どこが違うのか?」ということを多かれ少なかれ検証するものとなった。

いざバンクーバー!

そんなこんなでバンクーバー。人生初カナダということで期待に胸が高鳴る。ワクワク、ドキドキ。

ぼくが訪れたのは2024年3月某日のこと。春が来るんだか来ないんだかというようなどっちつかずの気候。ぼくは金曜夜から街に入り、土曜朝に目を覚まして散歩に出かける。カナダプレイスという海の近くの有名なエリアでぼくは泊まった。

ホテルを出て街を眺める。

多様な人種の人々が街を歩く。

まず目につくもの。

それは空だ。というか天気だ。

天気が悪い。この雨が降るんだか降らないんだかどっちつかずの曇り空という光景は見覚えがある‥というかシアトルそっくりじゃないか!バンクーバーのほうが雨の当たりが少し強いように感じるものの、距離が近い分天候がほとんど同じという事実には納得がいく。

そして街の感じもよく似ている。街の中心には高いビルが並び灰色のコンクリートが地面を覆う。その一方で美しい自然(海や山)が街を囲み、都会と大自然の融合が大きな魅力となっている。

ただ「ここは違うな」と思う部分もいくつかあった。

まずバンクーバーの方が人種がより多様だ。アジア人がたくさんいるし、たまにフランス語?のようなヨーロッパの言葉も聞こえてくる。シアトルはどちらかというと白人社会の印象だからここは大きな違いと言える。

そして全体的に街はバンクーバーのほうがキレイ。よりナチュラルで好印象だ。散歩を数十分したところで早くも「いいところだなー」と感心してしまう。

スタンリー・パーク (Stanley Park)

さて、最初の目的地。バンクーバーで有名なお散歩スポットであるスタンリー・パークに来てみた。

朝から人々が雨のなかお散歩、もしくはジョギングしている

ガイドブックにはきりっと晴れた空の下で清々しく走る男性の姿を切り取った写真をよく目にした。

ただこの日はあいにくの雨模様。どよーんとした雰囲気でどこも清々しくない。とはいえ、こういうときに観る光景はガイドブックには逆に載ってないだろうから、それはそれということで楽しむことにした。

海沿いの道は散歩したりジョギングしたりできるように舗装されている。この曇り空の下で、それでもたくさんの人がこの道を歩き、もしくはせっせと走っていた。空気が澄んでいて気持ちよく、呼吸は自然と落ち着く。静謐で美しい。なんとも心休まる場所だ。

黙々と走る人々
傘をさしながら散歩する人も
公園内には湖もある。誰もいない湖畔はしんとしていて空気がひやりと冷たかった。

気付いたら2時間ほど歩いていた。集中して散歩をするとそれなりの立派な運動になって、健全な疲労感のようなものを感じた。そしてなによりお腹が空いた。

スタンリー・パークを抜けて海の近くのレストランに入る。「土曜日だし…」ということで昼からビールを頼む。Driftwood IPAという地元の?ビールを飲むことにする。これが格別に美味しい。独特の苦味に最初「ん?」となるも、それが飲みごたえを効果的に産んでいることを理解して「なるほど」と頷く。そしてフェットゥチーネを頼む。あの平べったいパスタだ。「フェットゥチーネってペタジーニみたいだな(昔そんな名前の野球選手がいた)」とどうでもいいことを考えながらパスタを口に運ぶ。スモークサーモンとクリームがふんだんに入ったこのペタジーニ…じゃなくてフェットゥチーネは食べ応えがあり美味だ。

ふぅー。いい土曜日だ。

ランチはビールとフェットゥチーネ

腹ごしらえが済んだところで次の目的地へと向かう。

ギャスタウン (Gastown)

バンクーバーの人気観光スポットとして挙げられる街、ギャスタウンを訪れる。赤茶色のレンガで造られた道や背の低い建物が並び、おしゃれなレストランやカフェが連なる。とても大人な雰囲気があり、数十年前にタイムスリップしたようなレトロな感触もある。どことなくニューヨークのグリニッチヴィレッジに似ていなくもない。ただこのギャスタウンの方がもう少しダークで秘密めいたところがある。そしてそんなメロウでいて危ういこの街の雰囲気をぼくは心から気に入ってしまった。

街の中心部には有名な蒸気時計がシュッと立っている。蒸気で動くわけなので、まるで蒸気機関車のようにモクモクと蒸気を出しながら針を回している。古時計らしい見てくれにも関わらず、この蒸気駆動がなかなかダイナミックで目が離せない。みんなこの時計の前でスマホを出してシャッターを押していた。

街のシンボルである蒸気時計

街の中へ歩を進めていくとレコードショップを見つけた。ガラス張りになっていてそこには音楽のジャンルが行儀よく並んで記されていた。ガラス越しに覗く店内はアットホームな雰囲気が漂う。なにを考えるでもなくとりあえずお店の中へと入る。

レコードショップの前にて

思った通りカジュアルで親密な雰囲気な店内。入口にはカナダのロックのレコードがずらりと並んでいる。

「なるほど、ここはカナダだから地元の音楽をまとめているのか」という新鮮な驚きと共に妙に納得する。日本のレコード屋で邦楽をまとめたコーナーがあるのと一緒だ。そのカナダのレコードを見ていて「そうか、ぼくは今カナダにいるんだな」と改めて気付かされる。

オープンな空気で入りやすいレコードショップ
カナダのミュージシャンのレコードがずらり

一通り散歩したところで休憩がてらカフェを回る。シアトルには美味しくて雰囲気のいいカフェがたくさんある。コーヒーの美味しさで言えばシアトルは群を抜いていると思う。いつも日本に帰国するときにお土産でシアトルで焙煎されたコーヒー豆を買って帰ると友達や家族から「こんなコーヒー飲んだことない!」と感動されることがある。

このギャスタウンには洒落ていて居心地のいいカフェがいくつもあった。コーヒーの味で言えばシアトルに軍配が上がるかもしれないけれど、こういった古めしかく、それでいて小綺麗なカフェはなかなかシアトルにはないなーという感想を持った。バンクーバーに住んでいる人は羨ましい…ぼくが近くに住んでいたらこういうカフェに足繁く通ってしまうと思う。カフェに入り浸って人と話したり、本を読んだり、もしくはNoteを書いたりするだろうなと想像する。

どことなく吉祥寺感?のあるおしゃれなカフェ
モカを頼む。カフェインの苦味とチョコレートの甘味が口に広がる。

イエールタウン (Yaletown)

日もそろそろ暮れるという時間帯で(そもそも日は出なかったわけだけど)次の目的地へ。イエールタウンという場所まで歩く。

多国籍なレストランが連なって飲み歩くにはきっと楽しいだろう。

ガイドブックには「多様なブルワリーやレストランが連なり盛り上がりを見せている」といったようなことが書かれていた。確かにその通りな部分はあるけれど… 正直な意見としてここはそこまで書くに値することはあんまりなかった。

旅をしていて「ガイドブック盛ってるなー」と思う時はよくある。おしゃれなお店が2, 3軒あるというだけで「近年おしゃれなスポットとして注目を集めている」というような書き方をされているのを何度も見たことがある。で、実際に訪れてみて「まあこんな感じねー」と思うわけだ。

だからといって落胆するとかではない。自分で見て、匂いを嗅いで、体で感じ取ってまた一つ大事な経験をしたことに心の奥底で静かに喜びを感じる。

…と書くとすごく残念な場所の印象を与えてしまう気がしてきた(笑)。ぜんぜんそんなことはない。このイエールタウンもギャスタウン同様にレトロな雰囲気に溢れている。歩いていて自然と足取りが弾んだ。そして名前からして岩井俊二さんが監督した『スワロウテイル』という映画に出てくる「円都(イェン・タウン)」を思い出したりもした。そしてこの街は曇りがよく似合うなと思ったりもした。

ピンクと白の傘が空に浮かんでいた。ポップでおしゃれで可愛い。
ここにも小洒落たカフェが。素敵なカフェがたくさんあって羨ましい。

フランキーズ・ジャズ・クラブ (Frankie's Jazz Club)

散歩の終わりはいつも通り(ぼくにとってはということだけど)ジャズクラブに行く。バンクーバーで最も有名なジャズクラブへと赴いた。さて初カナダで初ジャズ、楽しみである。

フランキーズ・ジャズ・クラブを初訪問。

店内は想像していた以上に広い。優に100人は入りそうな空間。イタリアンレストランも兼ねているようでお客さんの多くは早くからお店に来て、パスタを食べたりワインを飲んだりしていた。ジャズ・クラブ特有な暗さはなく、あくまでカジュアルでくだけていた。いい意味で敷居が低い。

美味しいイタリアンに舌鼓を打ちながら開演を待つお客さん。
お店の後方にはビリー・ホリデーの絵が飾られている。

この日は地元のピアノ・トリノによる演奏。都会的で洗練された音使いはカナディアン・ジャズとしてぴったりな印象。そのモダンな演奏とは裏腹に、会場の音はなかなか凄みがあって迫力がある、音のバランスがよく、それでいて演奏のダイナミズがダイレクトに伝わってくる。一言で言えばとても音のいいジャズ・クラブだった。こういうジャズ・クラブが地元にあったらぼくは(文字通り)毎週通ってしまうなと思う。

スタイリッシュでセンスのいい演奏にじっくり耳を傾ける。

今日はそんなところですね。「こんなところに住めたらいいな」と思わせる魅力的な街、バンクーバー。シアトルによく似ていてなんとなくシアトルの兄弟とか姉妹都市と呼んでしまいたくなるのはぼくだけだろうか。でも色々な面でシアトルとはまた一味違った魅力に溢れているところが面白いところ。

バンクーバー散歩についてはもう一つ記事を書きます。乞うご期待です。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!



この記事が参加している募集

#旅のフォトアルバム

38,184件

#一度は行きたいあの場所

49,672件

サポートとても励みになります!またなにか刺さったらコメントや他メディア(Xなど)で引用いただけると更に喜びます。よろしくお願いします!