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フェニックス旅行記 -サボテンと楽器とスコッツデール-

フェニックス。アメリカ南西部のアリゾナ州に位置するこの街には縁があってよく足を運んでいる。ここにはAmazonの大きなオフィスがあり、Amazonのセールの機能を開発しているエンジニアの多くもここを拠点に働いている。そんなわけで仕事柄ぼくもPMとしてこの街を訪れてはエンジニアとオフィスで話したりランチに行ったりしている。ぼくが住んでいるシアトルからは飛行機で3時間ほど。意外とサクッと行けてしまうのだ。

Google Mapより。北西にあるのがシアトルで、南西にあるのはフェニックス。


アリゾナ

というと、カラカラとした砂漠にサボテンがぽんぽんと生えていて背景には燦々と輝く太陽が、なんてイメージがあるかもしれない。5回ほど既に訪れているけれど、もうまんまイメージ通りだった。シアトルがうじうじと雨を降らすならば、アリゾナはもう何十年も雨が降らなくなった街のようにぼくには映る(実際には雨も降るし、なんなら雪も降ることがあるようだけれど)。

今回も出張で訪れたわけだけど、週末に早く乗り込むことに成功したのでぶらぶらと散歩してみた。なので「旅行記」と言ってしまうとちょっと大袈裟になってしまうかもしれないけれど、「散歩の記録」ぐらいな感じでつらつらと書いてみようと思う。

砂漠植物園 (Desert Botanical Garden)

土曜の夜から乗り込むことに。日曜の朝にホテルで目を覚ます。窓の外を見るとモコモコとしたグレーの雨雲からポツポツと雨が降っている。

なんてこった………

シアトルから雨を逃げるためにアリゾナに来たっていうのに(半分冗談だけど半分本気)、こんな天気じゃテンションもグッと下がってしまうではないか。

とはいえせっかく来たのだからここは無理矢理でも元気を出す。そして予定通りホテルを出て最初の目的地へと向かう。訪れたのは砂漠植物園。やっぱりアリゾナの砂漠に来たのだから「そういう感じのもの」を観たいなと強く思ったのだった。

あいにくの天気なので太陽がサンサンとした背景ではないけれど、それでも写真をいっぱい撮ってみた。どの写真にも今にもざぁざぁと雨が振り出しそうな空がバックに映っている。いわゆる”映え”な感じはゼロだけど、ガイドブックにはこういう写真はあまり載っていないだろうから逆にレアかもしれない。というわけで写真を載せながら振り返ってみる。

いよいよ園内へ。

園内に足を踏み入れると、そこはもうサボテンの世界。赤ちゃけた岩や土の上に力強く…ではなくどちらかというとフニャッとした様でサボテンが生えている。これがいやはや、なかなか壮観なのだ。

サボテンと一言でいってもたくさんの種類がいる。遺体をビニール袋に入れてそのまま直立させたようなかたちのもの、ウニのトゲをできる限り短くしたようなもの、などなど。

…うむ、たとえがぜんぜんしっくり来ないかもしれない(笑)。何はともあれ、サボテンのそのポップな姿かたちは人々を魅了する。観ていて全く飽きることがないし、心の奥の凝り固まった部分が柔らかくほぐされていくような気すらする。癒されるし、元気をもらえるのだ。

直立しているサボテンはなんだか人のようにも見えてくる。というか遺体を包んで立たせたように見える。そう見えるぼくはなんか問題があるのかもしれない。
地面に転がっているように見えるサボテン。ウニのトゲが短いバージョンに見えるのはぼくだけだろうか(笑)。

そのまま歩を進めていくと黒くて光沢を放ったモダンな仏像のようなものが突然姿を現した。まったく意味が分からないい。おそらく現地のアーティストによる作品なのかな?いずれにせよ、本当に砂漠にサボテンが所狭しと並んでいるのでアクセントとして置いているのかもしれない。

謎の作品、現る。

この植物園はサボテンを眺めながら散歩できる造りになっている。雨模様の天気にも関わらず園内にはまあまあ人がいて、皆サボテンを観ながらお散歩を楽しんでいる。どこか嬉しそうな表情をたたえていた。

サボテンの隙間からは岩山が見えたりしてこれもなかなか迫力があって唸ってしまう。サボテンが生えている部分に目を凝らしていると、ウサギがぴょんぴょん跳ねていたりメタボになったスズメのような鳥が足早に砂地を駆けていたりする。生き物がなにもいないように見えて実はとても豊かな自然なんだなと気付かされる。

行く前は「どうせサボテンが並んでいるだけなんだろうな」とさほど期待していなかった。で、実際に訪れてみて本当にサボテンが並んでいるだけっちゃだけなんだけど、ここには深く心を打つものがあった。自然というものが持つ圧倒的なエネルギーとユニークさに心を動かされること間違いなし。すごく感動したし、また絶対来たいなと思った。

この景色を観ながらの散歩はとっても楽しい。
写真中央 - まん丸なスズメのような鳥がいる。メタボになってしまったんだろうか。
フニャッとしているようで確かな生命力を感じさせる、サボテン。

楽器博物館 (Musical Instrument Museum)

次に足を運んだのがここ。世界中の楽器を一堂に集めたという一風変わった博物館だ。ぼくは音楽をそれなりに愛している人間なのでやっぱり行かないわけには行かなかった。自分がギターを弾くしライブにもよく足を運ぶしなのできっと楽しめるだろうなと思った。

早速入ってみる。展示コーナーの前には幅広い廊下があり、その脇にピアノがポツンと置いてある。そのピアノの前に40代ぐらいのクタッとした身なりのおじさんがポツンと座っている。ぽろぽろと力なく鍵盤を叩きながらなにかを弾いている。クラシックの曲だ。

だだっ広い空間に響くそのクラシックの曲はやけに物悲しく響いた。ぼくはこの光景を観ただけで、そしてその音を聴いただけで結構やられてしまった。

ここには琴線に触れるものがありそう。

期待を胸に展示コーナーへと足を踏み入れる。

素人のおじさんが弾くピアノ。これが不覚にも染みた。

展示の入り口には楽器の主役?とも言えるギターたちが並ぶ。ギター屋はよく行くからこういう景色自体は慣れている。でもやはり博物館に並ぶだけあって"ビンテージもの"というレベルを遥かに超えた強者たちがそこには連なる。究極にレアなもの、またとっても昔に造られたもの、などなど。

ギターの展示。清潔感があって見やすい館内は好印象。

メインのフロアに行く。ここには世界中から集まった楽器たちが、国ごと、ジャンルごと、メーカーごと、などの様々な括りでまとめられて展示されている。

楽器というと「音ありき」と考えるのが普通だと思う。でもこの博物館の展示を眺めていて「楽器はデザインありきなんじゃないか?」とすら思えてくる。そう思ってしまうぐらい、楽器のデザインがどれも可愛いのだ。楽器の種類を問わず姿かたちが本当に可愛い。一体誰がこんなポップで愛らしいフォルムで楽器を作ろうと言い出したのだろうか?作り手もこんな可愛いものを作ってさぞかし楽しかったんじゃないかと思ってしまう。思わず見ているだけニコニコしてしまうもの。

ロシアの楽器たち
ノルウェーの楽器たち
シリアの楽器たち

イングランドの楽器たちは予想を裏切らず「男の子」をくすぐるものがある。爆音を出したくなるし、ロックンロールをやりたくなる。楽器を見ているだけでそう疼くのはぼくだけではないはず。ちなみに「日本の楽器はないのかな?」とふと思ったところで目の前に巨大な太鼓が現れた。これは流石にちょっと笑ってしまった。

イングランドの楽器たち。モニターにはビートルズの演奏が映っている。そう来なくっちゃですよね。
立派な太鼓。ドカンと打ち鳴らしたい衝動に駆られる。

どの国でも随分と昔から人間は楽器というものを作ってきたんだなーということがよく分かる。インターネットが出来る遥か昔。世界中の情報がヒュンヒュン飛び交うそのずっとずっと前。にも関わらず世界中の人々はまるで口裏を合わせたかのように似たような形の楽器をそれぞれの場所で作り上げていったのだ。叩いて音を出すもの、弾いて音を出すもの(今のギターの類)、また吹いて音を出すもの。もちろん細かいデザインは地域によって違うけれど、音を出す大枠の構造や大体の姿かたちは共通している。

「これってすごいことじゃない?」ってぼくは一人息を呑んだ。国や地域を問わず、人間は深ーい部分で「こういう音がほしい」という人類共通のニーズがあったのだ。そしてそれを満たすために人類は汗水垂らしてあの手この手で楽器を作ってきたのだ。

そこまで音を求める人間の姿にぼくは素直に感動する。ちなみに博物館の出口にこうデカデカとメッセージが書かれている。

Music is the language of the soul
(音楽は魂を通わせる言葉だ)

とても大満足の博物館だった。音楽の好き嫌いや楽器をやっている・やっていないに関わらず、近くまで来たらぜひ足を運ぶことをお勧めしたい。観ているだけで感動するものがきっとあるはず。

老舗ギターメーカー "Martin"の展示。アコギ好きなら堪らない。
アメリカのバンド"Maroon 5"の楽器の展示。こういう括りで展示するのも気が利いていて良い。
ヒップホップのコーナーも。DJも立派な楽器ですよね。
博物館の入口/出口に掲げられたメッセージ。展示を観終わった後にこれを読むと感じるものがあるはず。

スコッツデール (Scottsdale)

砂漠植物園、楽器博物館でもう既にホカホカとした気持ちになっていたけれど、時間もあったので近くの有名なスポットを訪れてみることにした。このスコッツデールはおしゃれなレストランや高級なシッピングモールが並ぶ"イケている"エリアなのだ。

この日はイースターと呼ばれる日(キリスト教でいうところの復活祭)で、かつMarch Madness (マーチマッドネス)と呼ばれるアメリカ大学バスケの上位決定戦が行われており、そして件の雨模様だった。そんなわけで街には文字通り誰もいなかった。

リゾート地なのに誰一人いないという景色はなかなか新鮮だった。「朝起きたら街からぼく以外の人間が全員消えていた」ということが起きたとしたら、きっとこんな気分なんだろうなと思った。

なにをするでもなくぶらぶらと歩いてみる。

華やかな噴水。セレブ感が漂っている。
街はとても綺麗に整っていて美しいし可愛い。
素晴らしい景色…これで天気が良ければ文句なしなのだけれど。

一通り歩いたところで喉が乾いていることに気づく。それにお腹も空いている。というわけでホテルまで戻って近くのバーに入ることにした。薄味のラガービールにチキンサラダを頼む。

「ザ・アメリカのバー」という感じのざっくりとしたお店。こういうところが段々と落ち着くようになっている自分がいる。

アメリカに移住してから早2年。これまでに色んな街を訪れた。さて次はどの街に行こうかしら。そんなこんなを考えながらグラスを傾ける。ラガービールはさほど好みではないけれど、あれだけのサボテンを観た後には悪くないと感じたものだ。

ぼくにとってはスタバではなくこういうバーが「サード・プレイス」なのかもしれない。
ラガービールにチキンサラダ。ここのサラダは味も見た目もなかなかいけてる。


今日はそんなところですね。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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