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少女の眼
青い空に入道雲が湧いていた。
コーヒーを買いにコンビニへ行く途中、信号待ちをしていた黒塗りの霊柩車を見かけた。運転席にはマスクをした葬祭場スタッフの男性。助手席には、10歳くらいの少女が座っていた。こちらからは顔だけしか見えないほど、少女は小さかった。じっと前方を見て、静かに座っていた。誰が亡くなったのかはわからない。想像もしない。ただ、少女が霊柩車の助手席に座っているその光景に、悲しさや絶望など微塵も感じなかった。どんなことを考えているんだろう。まだ幼いから、わからないかな。そんな妄想をへし折るほど真っ直ぐ前を見つめるその眼に、僕はなぜか癒された。その眼が、羨ましいと思った。
僕が立ち止まると、霊柩車は前へ進み出した。
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