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デジタル・ケイブ事始め。(31) 自分を少しずつアップグレードしていく。

法人をつくろうと決めたのが今年に入ってから。
イベントスペースに適した物件を探し始めたのが、二月ごろ。
どうせすぐには見つからないだろうし、半年か一年くらいかけて--と思っていたら、どういうめぐりあわせでしょう、ぴったりな物件に巡り合い、半年か一年かけて物件を見つけるどころか、半年も経たない6月下旬にイベントスペースがオープンしそうです。

……信じられませんな。

しかも、周囲の皆さまの絶大なバックアップを得て、オープニングスタッフも無事に集まりました。
融資も承認され、内装工事の最終見積もりもいただき、こまごまとした必要なものも、ひとつずつ申し込みや購入を進めています。
なんとかなる、気がしてきました。

しかし、ふと振り返ると、会社員(SE)生活を19年間したとか、専業作家として10年間生活してきたとか言っても、よくまあ、これだけ面倒なことを、基本的に自分ひとりでできたものだなと、不思議に感じます。
だって、ごくごくフツーのおばちゃんですし、さほどたいした能力があるわけでもないですし。
もちろん、要所・要所で、友達や前職の上司や先輩や同期や後輩や(以前、後輩という言葉を書き忘れて、後輩に「後輩は!?」と悲しがられた)、不動産屋さんや賃貸物件の管理者さんや、公庫の担当者さんや、銀行の行員さんや、その他さまざまな皆さんのサポートを得たことは間違いないのですが、それでも、結局のところロケットのメインエンジンに当たる部分は、自分ひとりなわけで。

それで、いろいろ考えていて、なんとなく理解したことがあります。
これまで自分がやってきたことが、ぜんぶアップグレードした形で活きているんですね。

たとえば。

スタッフの方に来ていただくにあたり、勤務条件を考えたり、法的に何が必要かを考えたりするのは、会社員時代に人事を担当した経験が生きているのは間違いないのですが。
小説家になってから、こまごまとした事務作業を手伝ってもらうために、アルバイトの方に何人か、事務所に来ていただいたんですね。
そうすると、あんまりいい加減なこともできませんから、労働保険はとにかく全員入らないといけないんだとか、雇用保険は週の労働時間が20時間からなんだかとか、雇用に関していちおうは勉強するわけです。
(ちなみに、手続きを自分でやるのがめんどうで、社会保険労務士さんにお願いしました(笑))

あるいは。

お店をつくると決めた時に、考えないわけにはいかない、お金の話。
人件費、賃貸費用、原材料費、水道光熱費、こまごまとしたコスト。
しかし考えてみれば、学生時代にわたしは、自宅に以前あった店舗部分で、父と共同経営のような形で、学習塾を開いておりました。
まあ、父は「俺が経営していた」と言うかもしれないのですが(笑)。
小さな規模ではありますが、今と似たようなことをやっていたんですね。

他にもいろいろあって、それで「なるほど」と気がついたんです。
いっぺんに今のようなことをやろうとしたら、必要な知識に追いつけなくて、とても自分には無理だったかもしれない。
だけど、これまでの自分は、自分をほんの少しずつ、アップグレードしてきたんだな。

若い頃の自分は、わりと気が短くて怒りっぽく、すぐ人に文句を言うようなタイプの女子でしたが(自覚はあるんだ)、三十代、四十代、五十代と年齢を重ねるにつれ、どんどん角が取れて、あまり怒らなくなりましたね。
それはひとえに、「自分だって恥ずかしい失敗をたくさんしてきた」からなんですが、これもたぶん、アップグレードの一種なんだろうと思います。

つまり、そういうことなんでしょう。
ピラミッドの頂上に登りたいと思ったら、まずは手近な石をどれかひとつ選んで、一段上に登ればいいんですね。
そこの景色を充分楽しんだら、次はまたもう一段上へ。
死ぬまでに頂上にたどりつけるかどうかは、神のみぞ知るですが、しんぼう強くそうやっているうちに、間違いなくだんだん近づいていくんです。

今の私の関心は、まず「デジタル・ケイブ」を成功させ、きっちり存続させること。
それから、自分が死ぬまでに、あとどれくらいのことができるんだろう、ということかなあ。
あとどのくらいの小説を書けるんだろう、ということも含めて。

そう言えば、法人を起ち上げた際に、著作権についてもいろんなやりとりをしましたので、また日を改めて何か書いてみたいと考えています。