見出し画像

【アメリカ抗議暴動】

 アメリカ社会の分断、差別に対する怒り、不安がアメリカ各地で爆発している。いつもは権力と秩序によって抑圧され社会の底流に押し込まれているマグマのようなものが、こうした一人の市民の死によって突如吹き出し、怒りや不満を爆発させる。この抑圧には正当性がないからだ。
 移民の国アメリカは主に欧州からの移民がネイティブ・アメリカンを駆逐し戦争により独立しアフリカその他からたくさんの市民を奴隷として連れてきてその後世界からの移民を受け入れてきた多人種市民国家だ。差別の構造は複雑だがそれでもアフリカ系市民への差別も強く残っている。
 白人警官による黒人市民への暴行死は戦後もワッツ暴動や今回の抗議暴動のように何度も繰り返されその度に批判と反省を繰り返してきた。それでもこうした権力と差別と暴力の悲しい事件はなくならない。各地で起こる市民の抗議には正当性がある。ここまで暴動化するのも理由がある。
 こうした歴史と問題点を考慮した上で抗議と暴動の理由には正当性があると認めた上で、それでもこの市民の怒りと暴動に向き合い、警官隊と軍隊による鎮圧ではなく、反省と改革のためのメッセージと議論の提示で、暴力の連鎖を止め、問題解決を提案するリーダーシップと言葉が必要だ。
 こうした事態に対して警官隊や軍隊による鎮圧でなく、市民に対するメッセージと説得で語りかけようとするリーダーが今のアメリカにはいない。むしろこうした分断や差別を助長してきたトランプ大統領にそのつもりは一切ない。だからこの暴動は全国各地に拡大し止まらないのだ。
 僕達は戦後も国内外で、こうした市民の抗議と治安と衝突、流血の惨劇を見てきた。天安門事件で光州事件で安保闘争で香港民主化闘争で。市民の人権を抑圧してまでの治安活動とは何か?危機管理学部には警察官や公務員志望の学生もたくさんいる。現代の学生の皆さんもどうかよく考えて欲しい。
 こうした暴動の背景には外国勢力の秘密工作、諜報活動もありうる、一部の市民の掠奪や悪意もある。しかしそんな見方の前に、体制や権力化した抑圧の中で生きる市民がたくさんいることを、苦しみを抱えて生きる市民がいることに思いを馳せる人であって欲しいと学生の皆さんたちに願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?