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パリ五輪開会式の歴史的意義

壮大な競技場内で演出を施したオリンピック開会式を始めたのはナチスドイツのベルリン五輪であり、そのナチスから蹂躙されたフランスが負の遺産でもあるナチス的五輪開会式を破壊して、競技場から街に出て、セーヌ川や市街地で開かれた五輪開会式をデザインしたのは、歴史的にも政治的にも革新的であり、大きな意義を持つ。
ナチスドイツのベルリン五輪の開会式は、レニ・リーフェンシュタール監督の記録映画『オリンピア』にも残されているようにナチス党大会の形式美を踏襲した一体感ある全体主義的な儀式としてデザインされており、メディアイベントとして国威発揚であり、世界へのプロパガンダであった。それ以後の五輪はナチス的開会式に大きな影響を受け、各国は競技場内での開会式を90年近く守り続けてきた。
そのナチスの負の遺産を解消したのが、今回のフランス、パリ五輪の開会式であり、軍隊的(=体育的)統率美から脱却して、街中に出て街と市民に溶け込んだ「競技場から解放された五輪開会式」をフランスは実現した。それを意識的に、確信犯的にできたのは、ナチスドイツに敗れ併合された過去を持つフランスだからできたことだろう。アート的でありアヴァンギャルドなフランスの挑戦を支持したい。
(※この記事は朝日新聞デジタルのコメントプラスで日本大学危機管理学部・福田充研究室が投稿したコメントを転載、再掲したものです。)

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