NEWS23

しろし🐒

2022年8月5日 22:09

まさか、こんな日が来ると思わなかった。

そんな驚きと興奮にも似た感情が、心を支配していてもおかしくないはずなのに、なぜかわたしは、まっっっったくドキドキしなかった。

きっと自分の知り合いや友人の方がドキドキしていたんじゃないかと思う。

放送が始まり、
しろしふぁーむで茄子やししとうを収穫している自分が映し出された。

その額には汗、汗、汗...!!!

2ヶ月ほど前にCBCラジオの人から『しろしちゃんと出会って、この世にこんなに汗かく人がいることを初めて知った』と言われたのを思い出す。

そういえばわたしは高校の頃、カラオケでは決まって、『雨』という歌詞が出てくるとその部分を『汗』に替えて歌っていた。
藤井フミヤの『わらの犬』とかはかなりみんなにウケた。

そんなことが一瞬で頭の中に出てきてわたしは笑った。

そこから番組は
児童相談所と関われなかった話に。

せっかくなので
この場を借りてもう少し詳しくお話しする。

わたしは14歳の時に『こども相談SOS』に、17歳のときには『児童相談所』に連絡をした。

これらの機関に自ら連絡をするというのは簡単なことではない。
けれどわたしはなんとかその行動を取ることができた人間だった。

ただ、忘れてほしくないのは、
わたしが連絡をしたその日より前には、

連絡できなかった何年間もの日々があるということだ。

『こども相談SOS』、『チャイルドライン』といった文字が書かれている名刺サイズの紙が学校で配られたこと、みんなも記憶にあるんじゃないかと思う。

そんな名刺サイズのカードにはよく『切りたくなったら切っていい』とか『秘密は守るよ』とか書かれていたよね。

中学時代、クラスでその紙が配られると「切りたくなったら切っていいだって！お前かけてみろ！」みたいな会話が、男子同士でよくされていた。

その男子同士の会話を聞いて、
《もし自分が電話をしてそれがみんなに知られてしまったら、変な目で見られちゃうかな》
と不安に思って、電話なんてできなかった。

それに何より電話番号のみが書かれているカードを見て、わたしは呆れていた。

《助けてって電話できる人なんていないだろ》

《ていうか自分は知らない人に電話で悩みを聞いてほしいわけじゃない、明日も自分の命があって、無事に学校に行けることを保証してほしいだけなんだ》

そう思って小学生の頃から何年もそれらの類のカードは無視していた。

でも14歳のある日、
いつものように配布されたカードはこれまでのカードと違いがあることにわたしは気がついた。

電話番号しか載っていなかったカード、
そこに初めてメールアドレスが加わっていたんだ。

《あれっ！メアド載ってる！やっとメアドも載せるようにしたか、これを待っていた》

大人がようやくここまで追いついてくれた。
そんな感覚になった。

とは言ってもわたしはすぐにメールをしたわけではなく、またそこから数日は経つ。

ある日の放課後。
どうしようもなく辛いときがあった。

辛すぎて生きていけない、そんなときにふと思い出した、メアド入りの『こども相談SOS』

わたしは匿名でメールをした。

『父に踏まれて蹴られてあちこちが痛い』

すると1時間後くらいに返信が来た。
内容ははっきりと覚えていないけれど、今いるところは安全なのかとか、学校は知っているかとか、そういう内容だったと思う。

とても丁寧な方だった。

いつのまにかわたしは自然と誘導に従い、自分の名前と学校名を伝えてしまっていた。

その後メールに返信するのがめんどくさくなり、数日放っていたら、安否を心配した『こども相談SOS』の方が中学校に連絡を入れたらしく、

わたしは担任のS先生に呼び出された。

「ねえ、メールしたの？連絡が来たんだけど...。あの内容は本当なの？冗談でメールしたならいいんだけどさ！(笑)」

『本当です』

「えぇ...!?!」

S先生はかなり狼狽えていた。
わたしたちは別室へ移動し、椅子に向かい合わせで座るように促された。

《話を聞く時は向かい合わせじゃないほうがいいんだよ》

改めてS先生は、暴力を受けていることは本当なのかと訊ねてきた。

わたしが頷くと、S先生は突然涙を流し始めた。

中1から中3までずっとわたしの担任だったS先生にとったら、かなりキツい話だったかもしれない。

わたしは先生の涙を見て、
《まずい、先生を泣かせてしまった...!》
と思った。

そして当時は教師の時間外労働の問題がよく取り沙汰され、世間の話題になっていた。

わたしは考えた。
自分の家の問題や、わたし自身の悩みなど、先生にとったらどう考えても時間外の労働だ。
わたしは好きな先生方の時間外のお荷物にはなりたくなかった。

だからわたしは嘘をついた。

『すみません、全部嘘です。暴力は受けていません、メールも嘘です大丈夫です』

嘘だったという嘘をついた。

その日から学校の先生方のわたしを見る目が変わった。授業中に話す内容も変わった。死ぬなよ、生きろ、そんな話ばっかりになった。

わたしは悟った。
もう学校の先生方全員が知っているんだなと。

さて、
こども相談SOS事件のあと、わたしは精神的に参って1日だけ学校を休みました。
それによりクラスメイトからいじめられていたらしい他クラスの女の子が不登校に。
そして3.11の大震災と続きます。

さてさて、この話はまた今度。
長くなるので。

高校生になり、ぜんっぜん動かないパソコンやキッズケータイで児童相談所や児童養護施設について調べるようになった。

わたしが調べていた内容は主に、
『児童養護施設に入ったら夢は叶えられなくなるのか』だった。

テレビで放送されている児童養護施設の特集を見ると、ほとんどの子どもたちはみんな高校を卒業したあとは働いていた。

専門学校に行きたいと言う女の子に、『専門学校に行くお金はないよ』とか『専門学校に行った後どう就職するの』とか夢のない話ばかりを職員さんがしていて、わたしは嫌になった。

結局その子も高校を卒業したあと就職をしていた。就職してお金を貯めてから専門学校に行くと。

でもそんなの簡単ではない。
貯金をする余裕はないはずだ。

児童養護施設に行ったら、こんなに働け働け言われるのか！？なんてこどもながらに思って、怖くなった。

ネットでもわたしはたくさんの人に聞いた。

児童養護施設に入ったら、
大学に行くことはできないのか。

児童養護施設に入ったら、
朝起きる時間から寝る時間まで決められるのか。

児童養護施設に入ったら、、、。

いろんな答えが返ってきた。
でも基本的には大体、暴力を我慢できる間は我慢したほうがいい、児童養護施設に行ったらルールや決まりに縛られて大変だよ。結婚もいい企業に就職もできなくなるよ。
そんなようなことばかりだった。

当時は養護施設出身ではない人たちの声が大きくてうるさかった。

いのまにか、時は流れ、
児童相談所に助けを求めることができずに2年が過ぎていた。

その日もまた、
死が自分の目の前に迫っていて、

疲れから、
自分の人生を神様に委ねようと思った。

一か八か、電話をかけてみようと。

児童養護施設に入る方が幸せなのか、
暴力を受けながら家で暮らす方が幸せなのか、

もう全部神様に決めてもらおうと思った。

わたしは勇気を振り絞って児童相談所に電話をかけた。

『もしもし...父から暴力を受けていて辛いんです』

「お住まいは〜区ですか」

『いえ、〜区の隣の〜〜区です』

「それでしたら地区が違うので、〜区の児童相談所へ電話をお願いします」

ガチャリ。

終わった、と思った。

膝から崩れ落ちた。

この日のことは今でも鮮明に覚えている。

今回テレビに出ることは小学校〜高校までの仲が良かった友人たちに伝えた。

わたしは自分の陽気なキャラを守るため、高校卒業した後の6年間は友人との連絡を絶っていた。

だから今回自分は
テレビに出るという手段を使って、
これまで消えていた6年間の真相と、
いま、無事に生きていることをみんなに伝えることができたんだ。

テレビに出ることは、全国に散らばってしまった人たちに、手っ取り早く自分の生存のお知らせすることができるから良いツールだと思う。

写真に載っている友人たちからは、

みんなありがとう。

今回の放送にもあったとおり、わたしは支援施設の存在を知らなかった。

児童養護施設出身の人たちのための奨学金があることも、自立援助ホームというものの存在も何も知らなかった。

社会的養護という言葉も
半年前まで知らなかった。

だからどうかまずは言葉を知ってほしいと思う。

言葉を知ってくれたら、今回のニュース23も、もっと突っ込んだ内容になっただろう。

世間の認知度にあわせてつくる番組は、浅くなるから。

とってもとっても浅くなるから。

でもわたしは今回ニュース23に出ることができて本当に嬉しい気持ちでいっぱいだ。

まさかわたしの一番好きなニュース番組から声がかかるとは思ってもみなかった。

憧れの小川アナウンサーから“しろし”と呼ばれてテンションが上がったよ。

わたしは来週、合理的配慮を求めるためのプレゼンを行う。

外出できなかった6年を、

外出できなくても配慮を受けて勉学に励むことができる6年間になるように、

そんな未来へと変化していってほしいと願っている。

空白だったわたしの6年間が、

いまは少し色づいて見える気がするんだ。

おわり。

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