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母の日〜ママに届け〜

私が幼稚園の年長になった年に、母は再就職している。
新しい就職先は、結婚前に働いていた職種とは全く違う分野だった。
子供4人を育てながら、約10年のブランクを抱えいるなかで、資格をいかすことのできる職種を選んだ母親の先見性に、ただただ尊敬する。

今から私が振り返る幼少期の思い出の中には、もしかしたら共働きになる前のエピソードもあるかもしれない。どちらにせよ私が物心つく頃には、すでに4人姉弟が完成していたので、どのエピソードに関しても「子供4人を育てて大忙しのはずの母」だということを前提に読んでいただきたい。
もう一つ、「母親はよく◯◯していた」というような記述に関して、強く印象に残った記憶が"日常だった"と刷り込まれているだけで、もしかしたら"特別な1回きりだった"可能性もある。

【途切れた読み聞かせ】

私がまだ幼稚園に通っていた頃、母親は図書館に行っては上限いっぱいまで絵本を借りて毎回トートバッグをパンパンにしながら帰っていた。紙芝居を借りることも多く、家の中でも読んでくれた。

母親といえば真っ先に出てくる思い出が読み聞かせなのだが、一度だけ読み聞かせの途中で母が寝落ちしてしまったことがあった。

ピーターラビットの絵本を読んでいるときだった。

「ピーターは……甘えてますか?甘えてますか?」と本文とは全く関係のない言葉を、壊れたラジカセのように母親が繰り返すので一瞬ゾッとしたが、すぐに寝落ちしたのだと理解した。

正直言うと「ピーターは…甘えてますか?甘えてますか?」という声だけが強烈に耳に残っていて、何歳頃の思い出だったか、読み聞かせしてくれていたのはどこの部屋だったかも覚えていないが、今でも姉と私の笑い話になっている。

【ポカリスエット】

小学校の運動会のとき、水筒の中にポカリスエットを入れてくれることがあった。
もしかしたら今の時代なら、熱中症対策などの理由でお茶以外も持参可能かもしれないが、私が小学生のときは「学校に持って行けるのはお茶だけ」というルールだった。

2〜3年前、姉に「ママって運動会のときポカリスエットいれてくれてたよね」と話すと「?」という反応が返ってきたので、母親にきいてみると「◯◯ちゃんは運動嫌いやから」との回答だった。

私が運動嫌いなことを知っていて、少しでも運動会を楽しめるように、他の姉弟にも内緒でポカリスエットを入れてくれてたらしい。

【挨拶ができたら大丈夫】

私が夫と結婚する前の話。
同居していることを夫が親に報告したところ、驚くことに夫のお姉さんから結婚式の招待状が届いた。
招待状が届いた後、ビデオ通話で一度挨拶したが、直接会うのは結婚式場がはじめてということになる。
しかも親戚数人のみで開かれる結婚式。

そもそも私には結婚式参列の経験も、愛知に行った経験もなかった。

LINEでナーバスな気持ちを母に伝えると、
「大丈夫や!ママとパパが育てた子やから。
挨拶できたら大丈夫やろ。」と返信が来た。

実際の母親とのやりとり

こういうのって普通は「失礼のないように」と娘に口うるさく言うもんじゃないのか。

余談だが、結婚式当日はホテルの美容室で振袖を着付けてもらった。
帰りも美容室で脱衣を手伝ってもらえるのかと思ったら、そうではなく他のゲストたちも共同で使う更衣室で自力で振袖を脱がなければならなかった。

帯の解き方がわからなくて苦戦していると、夫の叔母さんが駆け寄ってきて、ほとんど最後まで脱衣を手伝ってくれた。
初対面の叔母さんに下着なども見られてしまう結末となり、赤っ恥をかいたが「まあ挨拶できたしええやろ〜」と思うことにした。

【食べ物の思い出】

天ぷら

天ぷらのとき、私たちが食べている最中も母親は天ぷらを揚げ続けて食卓に供給してくれた。
おかげでいつも揚げたてを食べることができた。
さつまいも、玉ねぎ、鶏天、えび。特に玉ねぎが好きだった。

オクラまきまき

運動会や遠足など、特別な日はいつもオクラまきまき(オクラの肉巻き)をお弁当にいれてくれていた。今も大好きで、自分で作ることがある。

パスタ

パスタの時は大皿にたらこパスタ、ミートソースパスタ、和風きのこパスタと3種類くらいをいつも用意してくれていた。バケット付きで。
パスタは冷めやすいメニューのはずだが、不思議と冷めていた記憶はない。

かやくご飯

「ママの作るご飯の中でかやくご飯が1番好き」と言うと「混ぜて炊くだけやから…」とあんまり嬉しそうにしていなかった。今になって母親の気持ちがわかる。

献立のリクエスト

小学生くらいの頃、母親から「今日の晩ご飯何がいい?」ときかれることが多かった。「どうして他の姉弟がいるなかで、私のリクエストはすんなり通るんだろう」と思って、母親に尋ねると「◯◯はご飯に文句言わんから良い」と返ってきた。
その気持ちも今になってよくわかる。

ニンジンケーキ

よくホットプレートでニンジンケーキを作ってくれた。ケーキ屋さんやスーパーで見かけることのないケーキだったので、幼い私は「我が家は貧乏なあまりニンジンを使ってケーキを作っているんだ」と勘違いしていた。インスタグラムでキャロットケーキのおしゃれな写真を見て「ママが作ってたのコレか!」とびっくりした。貧乏人の知恵だと思っていて申し訳ない。

サンドイッチ

お弁当にサンドイッチを作ってくれることもあった。お弁当に限らず、母親はサンドイッチを作るのが上手。これは喫茶店でサンドイッチを注文するようになってからわかった。サンドイッチにはやる気のないサンドイッチと本気のサンドイッチの2種類があるが、母親のは本気。

その他

・これを読んだ母親に「もっと他にもこだわった料理あったんだけどな…」とがっかりされる可能性がある。

・タコの酢の物、青椒肉絲、ほうれん草とかしわのおうどん…まだまだ母親の味として思い出せる料理はたくさんある。

・唯一「あれは失敗だったんじゃないかな」と思ったのは豆腐ハンバーグ。パサパサのつくねみたいになっていた。

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