第37回Book Fair読書会@Colorful Box in双方形レポート
2022年最初のBook Fairは、町田市のカフェ『双方形』で開催しました!
今回、声をかけてくださったのは、「きんじょの本棚 なかまちパン店」の店主・ひなさん。
町田駅前でのイベントがきっかけで、ひなさんが主催する『Colorful Box in双方形』と、Book Fairのコラボレーションが実現しました。
読書会には、ひなさんを始め店主さんが3名参加。さらに「きんじょの本棚 ハラペコブックス店」さんが、特別にコーヒーをふるまってくださいました!(ありがとうございます!)
会場の双方形さんも支店だし、これは立派な「きんじょの本棚」コラボ回でもある…かも。
きんじょの本棚・・・どこで借りても、どこで返してもいいマイクロライブラリー。町田で始まり、今では全国80ヵ所以上に展開中。
ちなみに、ふっかー氏は最近「きんじょの本棚ウォッチャー」と呼ばれるようになった。
Book Fair参加者さんと本棚店主さんたちの間では、和やかな交流が生まれる場面も。両方に関わっている身として、これは最高に嬉しかったです。
イベントは地域のマルシェ的な要素も濃く、読書会のお土産にパンを買う(シムズキッチンさんで!)のも新鮮でした(笑)。
それでは、本と帯の紹介をどうぞ!(カッコ内の数字は、通算の参加回数)
かえちゃんさん(5)→西中賢治『日向坂46ストーリー』集英社
【笑顔の裏の涙を知って もっと好きになる ”ハッピーオーラ”】
「年の始めに読む本は重要。なるべく前向きな本を選んでいます」と話すかえちゃんさん。大切な推しアイドルのひとつ、日向坂46の本を紹介してくださいました。
デビュー前後の挫折、親からの反対、学業との両立…メンバーはそれぞれの問題を抱えています。SNSに書かれる、ネガティブなコメントもつきものです。
それでも、(競争の激しい世界では珍しいほど)仲良く、謙虚に、優しく、そして「人を笑顔に」して輝く日向坂。
帯にある「ハッピーオーラ」は、前身の「けやき坂46」時代からのテーマです。まさにその通りの愛される人柄で、ファン以外の層にも支持されているのだとか。
かえちゃんさんは「ピュアで、一途で、何事も楽しもうとするメンバーの姿勢は、自分にとっても学ぶことが多い」と称えます。
ライブや動画と一味違い、静かに楽しむコンテンツ。”読むドキュメンタリー”に、沼ってみてはいかがでしょうか。
ひなさん(初)→NHK Eテレ『昔話法廷』制作班(編)『昔話法廷 Season5』金の星社
【昔話の登場人物を裁判で裁け 裁判の結果を決めるのはあなただ!】
法廷に立たされた被告人は、なんと村の英雄・桃太郎。罪状は、鬼ヶ島を襲い、鬼を殺したことによる「強盗殺人罪」です。この裁判、一体どうなるのでしょうか。
この本を読んだひなさんが、最も印象に残った一行は
「おれは!・・・・・・ずーっとおれでしかないのに・・・・・・」
と、桃太郎が涙する台詞でした。
これは、感情的な”村社会”や”SNS世論”に対する苦悩と、彼自身が犯した「もうひとつの罪」につながる言葉でもあります。
そして、この本の肝は、判決が出る前に終わってしまうところ。読み手が、自分も裁判官になったつもりで考えられるのです。
「私は難しくて答えを出せませんでした。でも、シリーズの中で桃太郎が一番お気に入りです」とひなさん。「人が人を裁く」重みを、世代を越えて話し合える本ですね。
淳子さん(初)→小内光『宝石の展望台から湖が見える』※銀座 蔦屋書店にて先行販売
【彼女から流れ出る言葉は・・・はかない色をまとって向こうがすける。】
「きんじょの本棚」の中でも神出鬼没の「ホッとspace店」をお楽しみの淳子さん。まだ展覧会でしか入手できない、レアな詩集を持ってきてくださいました。
「詩は、意味を問うものではなく、感じたままに表現しているものだと思う」という淳子さんは、小内さんの詩を「傷口から流れ出るような言葉」と形容します。
それは、時に痛々しいほどグロテスク。また、色を表現していても、逆に色を感じられず、むしろ向こうが透けて見えるような感覚があるそうです。
ただ「きっと、そんな言葉が必要になる時もあるはずだ」とも思わされます。人を支えるのは、”ポップで明るい”、”前向きで力強い”声だけとは限らないからです。
簡単な言葉を組み合わせ、難解な世界を作り上げる詩人。ぜひ、注目してみてはいかがでしょうか。
じゅんさん(2)→真山仁『コラプティオ』文春文庫
【自分は有言実行できているか?】
じゅんさんは、震災後の日本を舞台とした政治小説を紹介してくださいました。
「国家や社会、為政者が誤った道を進んでいる時、たとえ一人でも勇気ある人が過ちを正せば、社会を変えられることがあるからだ」
「一人では何も変わらないと嘆かないでください。全ては、一人が立ち上がることから始まるのです」
力強い演説で、国民を奮い立たせようとする宮藤総理。「自分も流されちゃうところがあるので、心に刺さりました」(じゅんさん)
宮藤だけでなく、他の登場人物たち(総理の側近と、その幼なじみである新聞記者)も、確固たる信念の持ち主。じゅんさんは「自分はそれができているだろうか」と、考えさせられたといいます。
「限界を感じるな。できないことは何もない。その信念だけが壁を破る。挫折を恐れず、何事にも怯まない執着心を見つけろ。それだけが君たちを勝者に導く」
まだ読了前だというじゅんさんは「徐々にダーティーになっていく宮藤が、それでもこの信念を貫けるのか、楽しみです」と話してくれました。
ちなみに、じゅんさんの「だんだん、若いという理由では許されなくなってきた」という言葉、総理の演説以上に刺さりましたわ・・・
ぱんださん(4)→木内昇『茗荷谷の猫』文春文庫
【名もなき人々の人生 それは無意味ではなかった!!】
「〈きんじょの本棚〉を通して、人とのふれあいを大切にしたい」と語るぱんださんは、書店員さんも推薦の一冊をご紹介です。
ソメイヨシノ(染井吉野)を生み出すも、悲劇に見舞われる植木職人。
みんなの気持ちが楽になる粉が作りたいと、黒焼きに熱中する薬売り。
自由な暮らしを求めて上京したけど、ご近所付き合いに悩む男。
この短編集の主人公は、江戸末期から昭和三十年台までを生きた、歴史に残ることのない人たちです。
ぱんださんは「名もない人々の話を知って、意味なんてあるのかな」とも感じていました。しかし、文庫解説を読んで考えが変わったと言います。
「それぞれが、とりつかれたように何かをしていた。精一杯生きていた。今生きている人たちが、その想いをふと思い出す時、人生に陰影が与えられる。だから、淡々とした物語にも意味があるんですね」
「この文豪を知らなかった!と思いきや、現代の作家でした」と笑うぱんださん。夏目漱石や太宰治と並べても、遜色ないほどの描写力が光ります。
かなさん(8)→若林正恭『ナナメの夕暮れ』文春文庫
【世界の見え方は思い込みに他ならない、肝心なのはどう思い込むかである。】
お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんが、日常でやってみたこと、思ったことを綴るエッセイ集です。
かなさんは「スターバックスで注文する時”グランデ”と言えない自意識」について考える『ナナメの殺し方』を取り上げました。グランデはスタバ独特のサイズ名で、気取ってると思われるのが嫌なのです。
「若林さんは〈誰も見ていないのは知っているけど、自分が見ているのだ〉と書いています。どういうことかというと、他人に対して〈あいつ、気取りやがって〉と向けている視線が、自分に跳ね返っているんです」
著者はそのクセを直すべく、自分の好きなものや、他人の良い所を紙に書いて「肯定する」ことを心がけたそうです。
すると、「自分の行動や発言を否定的に見てくる人が、自分が思っているほどこの世界にはいないような気がして」きます。その発見が、かなさんの帯に書かれた言葉にもつながるのですね。
その他にも「失恋の辛さを振り払うには没頭だ」など、面白くて勉強にもなるエピソードが詰まっています。
ふっかー復活委員長(37)→朝井リョウ『スター』朝日新聞出版
【みんなバズりたい。で、”みんな”って誰だよ。】
楽しみ方が多様化し、これからのエンターテイメントはどうなるの?と思っている方に、オススメの小説を持ってきました。
主人公は2人います。ひとりは、憧れの映画監督が所属する会社で”下積み”する尚吾。もうひとりは、YouTube番組の編集スタッフになった紘。
共に映像制作の道を志す両者は、対照的な進路を選びます。その先で待っていたのは、急速に変わりゆく業界の現実でした。
SNSの影響で、誰でもバズる(注目される)可能性のある時代。でもそれは同時に、”自分らしさ”の背景や、仲間内だけで解る文脈を、会ったこともない人々に批判されるリスクを伴います。
一方「有名な作品や意見=良質か?」「昔からある文化だけが本物か?」など、受け手の価値観も揺らいでいるのではないでしょうか。
主人公の2人や、オンラインサロンを立ち上げた彼らの後輩のように、迷いながらも進みたいと思わされる一冊です。
参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました!!
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