D2Cブランドはどれくらいの価格なら売れるか?

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・D2Cブランドはどれくらいの価格なら売れるか?
・百貨店の「進化のシナリオ」をまとめてみた
・TOKYO BASEの自社ECはこう改善すべき!
・アダストリアの「ドットスタイリスト」に需要はあるのか?
・瞬時にアイコンを理解させる「CDG」のブランディングの上手さ


D2Cブランドはどれくらいの価格なら売れるか?

国産の生地と縫製技術を繋ぎ世界で戦える製品を、D2Cブランド「Foo Tokyo」が5000万円を調達

パジャマやナイトウェアなどリラックスタイムに使用する商品を扱うD2C(Direct to Consumer)ブランド「Foo Tokyo(フー トウキョウ)」。同ブランドを展開するNext Brandersは7月17日、5月からスタートしたECサイトをリニューアルオープンしたこと、および複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と融資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。

最近もっぱらよく耳にするワードの「D2C」。そもそもD2Cとは何ぞや?という方の為にググってみますと、

D to C(D2C)

DtoCとは
D to Cとは、Direct-to-Consumerの略で、自ら企画、製造した商品をどこの店舗も介すことなく自社のECサイトで直接顧客へ販売するビジネスモデルのことです。 『D2C』と表記することもあります。
D to Cの特徴・SPAとの違い
D to Cは、製造から販売まで一貫して自社で行うという点においてはSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)と類似したビジネスモデルと言えますが、SPAとの最も大きな違いは、店舗での販売を行わずに自社運営のECサイトで顧客にダイレクトに販売するビジネスモデルからスタートしているという点です。 仲介業者を挟むことなく企画から製造・販売までをすべて自らで行うことで、無駄なコストを排除し、より価値の高い商品の提供を可能にしています。

という事で、肝心なキーワードは「ECで顧客に直接販売」「店頭在庫無し」でしょうかね。上記の説明で言うとZOZOのPBもD2Cに入りそう。どうでもいいけど何でtoを2で表記するんでしょうか。(O2OとかP2Pとか)ネコも杓子もECの次はD2Cになって来そうな昨今。もし既に顧客にリーチするソーシャルメディアなりwebサイトなり持っていたら、ECのみで販売し製品のお披露目はポップアップでやれば事足ります。

ただ、今回取り上げられている「Foo Tokyo」。下記の抜粋部分によると、

Foo Tokyoの特徴は「世界的ブランドと同クラスの製品を作れる」こと。確かにFoo Tokyoの製品を見ていると数千円台後半〜数万円台が多く、ガウンについては高いものだと15万円近くになる。 製造時には工場の空き時間を活用。自社で店舗を持たず、余分な在庫や広告費、人件費を抑えることなどによって「(世界的ブランドでは)約100万円などで売られてるいるような高品質なものを、十数万円で提供できる」環境を構築している。

ロットもわからないのに世界的なブランドと同品質な物が十数万円と言われても「高い…」という印象しかありません。この価格、D2Cで売れるのか…?京都の高級旅館への導入、CM撮影への衣装提供、大手百貨店での出店などリアルでの展開も控えているとは言え、この価格の製品買うのって結構なブランド力が必要です。お金持ちの方々でもよく知らないブランドに対して数万円出したりしないでしょうし…。という事で、世の中のD2Cブランドは一体どれくらいのリーチでどれくらいの価格で販売しているのか?製品によって適正価格は違いますから、いくつか事例を用いて検証してみる事にしました。

ブランディング アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランド

ちょうどこんな記事が落ちてたのでこちらで紹介されてるブランドをとりあえず抜粋してみましょう。どれも最近そこそこ有名なブランドなんで恐らく成功事例と言っていいかと思います。

D2C系ブランドは下記でも取り上げてますのでご参考までに。
ファッション専門講師が独断で選ぶ、webで「バズる」「刺さる」ブランド特集

※調査した数字は全て2018/07/22のものです。

○Warby Parker(ワービーパーカー)
まずはメガネブランドのワービーパーカー。既に知名度も相当高くなっていますからリーチは結構あるんじゃないかと思われますが、

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で、価格はと言うとほとんどの商品が95$です。アメリカではこの価格でおしゃれなメガネがあまり無いから重宝するというお話もありましたが、今現在はどうなんでしょうか。日本では数千円で買えるメガネは珍しくありませんが、高感度なメガネになると同じくらいの価格になってくる印象があります。ほとんどが同じ価格というのも購入の目安がわかりやすく、上手いやり方なんではないでしょうか。

リアル店舗もいつの間にかめっちゃできてる…。

一度の注文で5つまで試着用として発注できる点も、他のブランドのビジネスモデルに影響を与えてるように思います。しかも上記のハッシュタグで投稿したらどれが似合ってるかどうかのアドバイスまでもらえます。これだけのリーチと試着の仕組みでこの価格帯。短期間でブランド化するハードルの高さがよくわかります。


○BONOBOS(ボノボス)
ボノボスは当初はメンズパンツのみの取り扱いだったようで、やはりweb上で拡散するにはカテゴリーキラーがやりやすいんでしょうかね。

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価格帯は単品アイテムで大体100$以下。スーツで350$〜400$ってところで、こちらの価格設定も比較的webで購入しやすくはなっています。

ショップも50店舗以上展開しています。D2Cって言ってもやはり試着体験は重要で、出店の計画とセットでないと売上取るのは難しいのでしょう。


○EVERLANE(エバーレーン)
徹底して透明性を追求するエバーレーン。最近店舗出したので純粋なD2Cとは言えないかもしれませんが。

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流石に日本でもバズったくらいなだけあってトラフィックは抜きん出ています。価格帯はエントリーラインで20$。高くても50$程度。コスパの問題もあるでしょうけど、エバーレーンは製造工程や原価をさらけ出していますからそれを見て納得した上で購入できます。

店舗は現在2店舗。他社と比較するとリアルでの展開の少なさと試着体験がやや乏しい印象はあります。その分、価格で納得してもらう為のコンセプト・企画の設計を重視したんでしょうか。


○ALLBIRDS(オールバーズ)
サンフランシスコ発のシューズブランド「オールバーズ」。

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ソーシャルのリーチは他社に劣るものの、100万セッションはしっかり超えています。価格帯はこちらもほとんどが95$。

店舗は2店舗のみなのでエバーレーン同様、試着体験が弱いですね。


と、4ブランドほどあげてみました。共通する点ですが、

・カテゴリーキラー
型数限られてるのでアイコンが必要。商品を縦に販売しないとロットが増えないし売上が最大化しづらい為かと。

・価格は100$以下
アイテムによりますがエントリーラインはもっと低くても可。価格のイメージも持ってもらえないとwebでは販売しにくい。

・試着体験
試着のみの店舗であるならサンプルしか必要ないので面積、在庫共に比較的低コストで出店可能。出店が難しい場合、「返品可能」やソーシャル上でフィッティングが確認できる体験が必要。

てところでしょうか。上記のブランドくらい海外でも知れ渡るには100セッション程度がトラフィックの指標になりそうです。三陽商会のサイトで70万セッションくらいなんで100万セッションってめっちゃハードル高いです。

これに照らし合わせるとFoo Tokyoはちょっと価格設定が高く、リアルでの展開計画が不十分に感じます。もちろん適正価格なんて製品の中身やターゲットの属性によって変わります。ですが、高い物を販売する時に共通して言えるのは情報量が必要です。これが担保されていないとどんなに良い製品でも売る事は難しい。今回の記事の情報だけでは何とも言えませんし、あくまで上記のようなD2Cブランドくらいの規模を目指すならという前提ですが。ここまで言っておいてなんですが、D2CだろうがSPAだろうがやる事は結局「需要を作る事」。Foo Tokyoが今後世界に向けてどう需要を作っていくのか注目したいところです。

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