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藤沢周平「用心棒日月抄」を読んだ。

 雑誌だ雑誌だと騒ぎながら、また小説を読んでしまった。時代小説の書き手として著名な藤沢周平である。はじめて読む。短篇連作なので、読みやすかった。全十話とボリュームたっぷりである。
 第一作は「犬を飼う女」というタイトルで、生類憐れみの令を背景にしている。
 主人公は北のとある藩を脱藩してきた浪人で、青江又八郎。江戸でその日暮らしをしている。武士が市井の人となったのだから大変だ。仕事を世話するのは相模屋吉蔵という口入れ屋である。
 いまでいうフリーターのようなものだが、腕のある浪人なので、用心棒の仕事がくる。第一作は犬の警護だ。警護をしているときに、浅野内匠頭の刃傷沙汰が起きる。
 第二作以降は、用心棒稼業がだんだん赤穂浪士との接触になっていき、全編を通すと赤穂浪士の復讐譚が見えてくる趣向である。大石内蔵助を直接警護する話や討ち入りを塀の外から見守る話も出てくる。
 細部を支える文章がリズミカルで素晴らしい。思わず音読してしまった。
 これからしばらくは藤沢周平を読むことになるだろうなあ。

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