見出し画像

筒井康隆の「パプリカ」を読んだ。

 筒井康隆に夢を扱った作品は多く、たいていが傑作である。
 「パプリカ」は第1部と第2部に分かれる長編であり、夢と現実が混交する。
 主人公は千葉敦子。精神医学研究所につとめる凄腕のセラピストであり、美人である。彼女の相棒ともいえるのが、天才的なエンジニア、時田浩作。彼の力によって、夢のモニタリングや実際に夢の中に介入するPT(サイコセラピー)技術が現実のものとなっている。実際に夢に介入するのが千葉敦子の担当だ。
 千葉敦子にはその際に利用する人格、パプリカがある。そばかすのある美少女だ。
 物語はある自動車メーカーの重役が不安神経症にかかり、とっくに廃業したはずのパプリカの出動要請を受けるところから始まる。
 夢の描写が細密にわたっており、すごい。
 精神医学研究所内には理事長派と副理事長派の対立があり、これが新型のPT、DCミニを使った争いに発展していく。第2部では、夢が現実に侵出するというわけのわからぬ混乱状態に陥る。これを文章だけで表現するとは、なんという凄腕だろう。面白かった。

新作旧作まとめて、毎日1編ずつ「朗読用ショートショート」マガジンに追加しています。朗読に使いたい方、どうぞよろしくお願いします。