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いま読むべきオリンピック小説「悪の五輪」。
月村了衛の「悪の五輪」を読んだ。「東京輪舞」と同様、昭和の闇を扱っているが、今回はターゲットが非常にクリアだ。オリンピック×映画×ヤクザという組み合わせ。
オリンピックがいかに利権の汚濁に包まれているかを映画好きの変人ヤクザに語らせている。
ことは黒澤明がオリンピックの公式記録映画の監督を下りてしまうことから始まる。次々に監督を断る巨匠達。そこに三流監督の錦田欣明を押し込もうと、ヤクザの人見稀郎が画策する。
最初は社団法人東京オリンピック映画協会のメンバーを取り込むところから始まるが、いざとなると出てくる政治家や怪しい組織やフィクサーたち。時代の波と権力者に翻弄されるヤクザの姿を通し、悪徳まみれのオリンピックの姿を描く。児玉誉士夫などの名前が実名で出てくるところも興味深い。
「金、権力、名声、色、そしてまた金。オリンピックの五つの輪は、そのまま五つの欲を示している」
とヤクザに言わせるほどひどい搾取構造。それはきっと2020年の東京オリンピックにもそのまま当てはまるのだろう。
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