波乱に満ちた昭和平成史を描く「東京輪舞(ロンド)」を読んだ。

 著者の月村了衛が自ら「小説家としての我が仕事における第二期の出発点」と語る小説「東京輪舞(ロンド)」を読んだ。
 語り手の砂田周作は公安警察官だ。ほんとに実在したのではないかと思うほどリアルな主人公である。専門は対ロシア。
 この小説には三つの側面がある。
・昭和平成史
・スパイ小説
・田中角栄
 ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、オウム、地下鉄サリン、北朝鮮問題など実際の事件を取り上げ、出て来る人物も実名。どこからがフィクションかわからないくらい語り口がリアルだ。
 第一期は荒唐無稽が基本にあったけれども、第二期は実在の事件が基本になるのかもしれない。もちろんエンターテインメントなので、リーダビリティも高い。ライバルでもあり、ヒロインでもあるKGBの女スパイが魅力的。
 終章は平成30年。「つまり、あのときの熱に浮かされたような角栄叩きとは、日本人全体による〈父親殺し〉であったのだ」という砂田の回顧が苦い。
 現代史は学校でもあまり習わないので、この本が教科書代わりになるかもしれない。

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