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おいしい記憶には景色があるから

用事ついでに、渋谷のTSUTAYAに平野紗季子さんの本を買いに行った。


店内に入ると、黒髮のショートボブに茶色いメガネをかけた女性の書店員さんがいた。一目で「この人ならきっと、探している本の場所がすぐにわかるはず」と確信した私は、まっすぐにお姉さんの元へ向かう。


声をかけると「ああ、その本ならこちらです。」とすぐに案内してもらえた。


書店で本を探すとき、探している本と感覚の近そうな店員さんに声をかけるとスムーズに案内してもらえることが多い。私の密かな楽しみのひとつである。


探していた本は想像より大きく、雑誌サイズだ。


パラパラと中をめくると、コラージュのように食べ物の写真と文字がびっしり詰まっている。レイアウトの雑多な感じが非常にワクワクする。



平野紗季子さんは食への着原点がすごい。食べ物やお店をまるで1人の人間のように扱い接していて、その深い愛と探究心に文章を読んでいるだけでお腹いっぱいになる。


もし私が小さな洋食屋さんを経営していたら、お店に平野さんに来てほしいなぁと心待ちにしてしまう。きっとそのお店で作られているオムライスもパスタも、平野さんに食べられてしあわせだとさえ思う。


写真を眺めるていると、おいしいものを思い出すとき、その記憶には必ず景色があると気付く。


スマホで食べ物オンリーを綺麗に撮ったとして、あとでその写真を見返して懐かしく思うことはほぼない。写真を撮る理由は、SNSにアップして自分が満足するくらいだ。


思い出に残るのは、お店の雰囲気が伝わる外観・内観や、店員さんの雰囲気、食事のメニュー表を写した写真だったりする。


食べ物の写真をアプリで美しく加工するのではなく、ちょっと引きでお店の内観やテーブル周りも入れて撮ると、加工しなくても味のある面白い写真が撮れる。


自分の印象に残っているお店を思い出すと「厳しい上司に合わせて頑張って早食いした鶯谷のとんかつ屋さん」とか「田舎に帰る度に必ず通った大分のビーフシチュー屋さん」とか、そこには必ずお店の雰囲気や、景色がセットで思い浮かぶもの。


見た目が煌びやかですごく美味しいコースの料理を、一品一品全て撮影してカメラロールに残したのに、意外とあっさり忘れてしまっていたりする。


行きたいお店も増えたことだし、これからはインスタ映えしない写真をたくさん撮って、おいしいものとの思い出をたくさん残していきたい。


これからの食との出会いにもっとワクワクしてしまうとても愛おしい本。

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