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母のうそと私の嘘

一度だけ母にうそをつかれたことがある。
後にも先にも私の記憶ではその一度だけ。

小学生にあがったばかりのころ、
勉強机を買ってもらい、その日は机が家に届く予定だった。

その日は確か、雨だった。
ウキウキして家に帰った。

すると母は「今日は届かなかったよ」と言った。

落胆していると、母は扉を開け、
真新しい勉強机を見せた。
きっとびっくりさせようと思ってそうしたのだろう。

しかし私はわんわん泣き出した。
「お母さんにうそつかれた」と大泣きした。

母はその経験から二度とこの子にはうそをつくまい、と決めたらしい。
私は親にうそをつかれたことがとてもショックで傷ついた。

だから人にうそをつくことがいまだに嫌いだし、
絶対にうそをつきたくないと思っている。

—そんなメモがPCのフォルダの底から見つかった。

いまだに嘘は嫌い。
でも私はひとつ、母に大きな嘘をついている。

そしてその嘘を、私は墓場まで持っていくつもりだ。

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