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#言葉の企画 特別報告会でもらった次の 『→』

 2019年8月31日午後2時、私は下北沢の本屋B&Bにいた。言葉の企画2019の特別報告会に参加するためだ。きっかけはしんみはるなさんと阿部広太郎さんであり、その二人との出会いの場は、1年前に通っていた明日のライターゼミ2期だった。

 しんみさんが、今、言葉の企画2019の企画生であり、このイベントのライターをするとTwitterで知り、そもそも阿部さんが言葉の企画の募集をされているときに、少し参加したいなと思っていた気持ちを思い出し、しんみさんのツイートにリアクションすると、「久しぶりに会いたい」と言ってもらえ、よし、参加してみよう、と久しぶりに「言葉」に関するイベントに参加した。

 当日具体的に何が話されたか、というのは、公式の記事にお任せして、私は、報告会を第三者の立場で聞いて、自分自身が得た気づきや学びを中心にまとめてみたいと思う。

「アウトプット」が人を育てる

 登壇者は阿部さんを含め、4名で、他の3名は企画生。まず、この構成がおもしろい。トークイベントと言えば、大抵人前で話すのに慣れた「講師」だ。しかし、企画生が、その学びの途中で得た気付きや学びを言語化し、コミュニティの外で発表するというのは、とても意義深い試みだと思った。おそらくこのイベント自体が、企画生にとって、「企画」の実践であり、その「アウトプット」があるからこそ、たくさんの「インプット」をし、また自分と向き合い、思考の整理ができたのではないかと思う。

 そして何より、一番印象に残ったのは、企画生の「しのさん」の報告。実際にほかの企画生と一緒に「ことばの日Project」をしている、というのはこの報告会において、ものすごく大きなコンテンツだ。現在進行形のプロジェクトがあるということは、それだけで学びの宝庫だ。いくら企画のノウハウを聞いても、それを実践しなくては、身に付かない。企画の醍醐味はアイデアを出すところではなく、「実現させる過程」にあるのだから。

企画書の肝は「共有」にある

 阿部さんが「企画書とは→を共有する書類」と言っていたが、今回改めて注目したのは「共有」という部分。明日のライターゼミで同じ話を聞いたときは「→」の方に気をとられていたけど、「企画」の本質は、「共有」のほうにあると思った。すべて、一人で考えて一人で実行するなら、企画書なんていらない。勝手にやればいい。企画書が必要なのは、自分以外の他人のなんらかの変化・行動が必要な場合で、それを促す必要があるからだ。

一緒にやれる仲間こそ、「企画」の財産

 企画書は「→」を見える化し、こっちに行きたいから協力してくれないか、一緒にやってくれないかというお願いだ。だから、「企画書がいらない関係性」とは、企画の内容に関係なく、この人のお願いだったら無条件で協力するよっていうことで、「企画」をしたいなら、実は大事なのは「企画」の内容をどう作るかよりも、それを一緒にやれる仲間をどれだけ作れるか、ということになる。

 そういう意味で、この「言葉の企画」という場は、とても価値があると思った。「企画」に興味があるメンバーが集まっている場だからこそ、実際「しのさん」発案の「ことばの日Project」は、授業では選ばれなかったにも関わらず、熱意を伝えたら、周りが「やろう」と言ってくれ、人が動き、「企画」が始動した。つまり、周りの誰かの「やろう」がなかったら、この企画はただのアイデアで終わっていたのかもしれない。

 そして、そうして動き出した企画のリーダーをやっていた「しのさん」の気づきや学びが、やはり一番深かったように思う。「人から聞いた話」から得た知識に対しても、気づきや学びはもちろんある。けれど、実際は、自分で考えてやってみて、動いて、その結果、周りも動いてくれたり、企画が前に進んだり、そうした全ての過程で、自分や他人の身を削って実感する気づきや学びの方が断然大きいし、その分、力がつく。

 そういう風に思えたのは、自分が今、実際職場で「企画プロジェクト」に参画しており、実質的にプロジェクトのマネージャー的なことをやっているからだ。去年の10月から始動したプロジェクト。1年近く試行錯誤してきたからこそ、企画の時に何が必要かがわかる。そして、忘れてかけていた気持ちをたくさん思い出すことができたことが今回の私の大きな収穫だった。「しのさん」の報告に、時折、当時の気持ちがシンクロして、私も泣きそうになったのはここだけの話。

企画を「職場」でやる、ということ

 「ことばの日Projict」は、「言葉の企画」という自分でお金を払って何かしたい、変わりたいというすでに意欲のある人が集まった場だから、前に進んだ部分も大きいと思う。翻って、職場で自分で提案したことを、周りを巻き込んで実行する、というのは想像以上にしんどい。それは、周りに意欲ある人ばかりではないからだ。すでにみな「自分の業務」を抱えている。プラスアルファで企画を実行するのは、負荷がかかる。「余計なこと」ともみなされる。職場で「企画」を実行するためには、「仲間」を作ることが何より重要になる。

 「企画」はやりがいはあるけれど、前に進めて結果を出さなければいけないプレッシャーだとか、どう周りに協力してもらうか、人の善意をあてにしながら、バランスをとって、調整していくのは精神的にとても疲れる。正直、何回も投げ出したくなった。

 けれど、「しのさん」の報告を聞いて、仲間が「いてくれるだけで心強い」という気持ちを忘れていたことに気付かされ、目頭が熱くなった。プロジェクトをはじめた当初、上から指名されたメンバーでやっていたため、私は他のメンバーにあまり仕事を頼めなかった。その後、メンバーを募集したら手を挙げてくれた人がいて、その人たちが今一緒にやってくれている。相談できる。協力し合える。弱音をはける。一人より遠くへ行けるようになった。

 自分でやりたいと手を挙げてくれたメンバーが入った後に企画したイベントで、人が集まるか不安でつぶれそうだった時、「大丈夫ですよ。私たちがいるし、その時はその時で座談会みたいにして話したらいいじゃないですか」と言ってくれて、本当に心強いと思ったこと。イベント後、毎回反省会をして、次に活かすよう企画をチューニングしていったこと。自分の苦手な仕事を前に足踏みしていたときに、「こっちでやりますよ」と仕事をまきとってくれたこと。たくさん勇気づけられ、助けられ、一つ一つ実現できたこと、そしてそのときの感情を思い出した。

 人は簡単に忘れる。だからこそ、記録して何度も振り返る必要があるのだと思った。

「感情」を大切にする

 「好き嫌いには勝てない。人間だもの。」と「ふくまさん」が言っていたが、本当にその通りで、どんなにロジックを立てて説明しても、「嫌だな」と思ったら人は動かない。「いいね」「やってみよう」と思ってもらえなかったら、どんなに「いい企画」も計画止まりだ。実際、自分が提案した企画のいくつかは、まったく刺さらずにシュレッダーの中に消えていっている。

 そんな中でも実現したもの、評価されているものは、やはり人の「感情」を動かせているものなのかなと思う。自分以外の誰かにとってもワクワクすることを提案できないと実行まで行かない、ということを改めて感じた。自分のテンションがあがること、そして周りのテンションもあがること。それを掛け算したところに答えがある。そのことを忘れないことだ。やっていくうちに、前に進めなければ、と思うが故、周りのメンバーの「感情」を置き去りにしてきたかもしれない。「聞く」ことをもっとやっていこうと思った。

「何者か」にならなくていい

 「あなたは何者にもなれない。あなたはあなたになるんです」という阿部さんの言葉に感銘を受けたという「ユースケさん」。私も、明日のライターゼミを受講した時、周りが「○○の人」というブランディングを確立していく中、何も自分の爪痕を残せず、おそらくほとんど記憶に残らない受講生で終わったと思う。そして、私は「何者かにならなくていい」とその時、ある種開き直った。「言葉」とか「書く」とかそういうことを極めるには結局「○○の人」という圧倒的なコンテンツが必要で、でも私には自分から発動する圧倒的な熱量がない。だから、潔くクリエイティブな世界へ行くことは諦めて、私は今いる場所で自分の能力を生かして全力で裏方に徹しようと決めた。その延長線上に、「企画プロジェクト」は振ってきた。

 「自分がこれまでやってきたことがあるから、アウトプットできる」と「ユースケさん」が言っていたが、本当にそうで、それまで自分がやってきたことが掛け合わさって、「自分」の持ち味がより浮き彫りになってくる。無駄なことはひとつもなくて、全て未来につながっている。それは「アウトプット」する場があれば、自ずと引き出される。引き出されざるを得なくなる。だから、結局「アウトプット」の場をどう作るかが「私が私になる」ために必要なことなのかもしれない。職場でも、仲間を作るためには、やはり、どう「企画」「実行」の機会を作れるかが鍵で、今後はそういう提案を軸に企画を出していきたいと思った。

言葉の企画の反対語は何か

 最後の質疑応答で、「言葉を企画するの類義語は、言葉を実行するだと思うが、反対語は何だと思いますか?」という問いがあった。「言葉をあきらめる」「言葉を信じない」「言葉をないがしろにする」「言葉を無下にする」「伝える努力をしない」などいろいろな答えがあった。私なりにその答えを考えてみた。

 言葉の企画とは、①言葉を使って誰かに何かを伝えて狙って、②その方向に変化させることならば、①に反するとしたら「棚からぼたもち」、①②に反して何も言わずに変化させないことだとしたら、「同調圧力」とか。ちょっと質問の意図とは違うかしら。

 ちなみに、今回の報告会で印象に残った単語は「感動」と「姿勢」。感じたこと、動いたことをGoogleのスプレッドシートに入力して共有する「感動メモ」という試み自体おもしろいなと思ったが、そこに「動」という字が入っているのが重要だなと思った。そして、「姿勢」に「勢」という字が入っていること、勢いがあれば相手に届くという「ユースケさん」の話になるほどと思った。日本語の表現の多様性は、漢字の功績が大きいと改めて思った。

私の、次の「→」

 報告会の後、会場でしんみさんを見つけ、声をかけた。次のイベントもあり、あまり時間のない中、立ち話をして、そこでしんみさんに宣言した私の次の「→」はこのnoteを書くこと、そしてしんみさんとごはんに行くこと。一つはもう実行したので、もう一つは近日中に実行したい。この一年自分がいろいろ試行錯誤してきたからこそ、話せること、話したいことがあると思ったからだ。

 そして、今後職場では、単純に「交流」の場を作るだけでなく、参加者自らが「企画」「実行」できる機会を作り、仲間を増やしていくこと。自分がやっているプロジェクトの進め方の中で大きな指針をもらった。一人でなく、みんなでどこまで行けるか。みんなでどう楽しむか。私は組織の中で、それを今後も試行錯誤していこうと思う。

しんみさんの事前インタビュー

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