組織の解像度を上げる10冊

「うちの会社は特殊だから」「◯◯部の責任者がくせ者で、、、」
組織の問題は数字や事象として見えづらく、自社の特殊性や特定の個人を理由にしがちです。

「部署間の連携がない」「うちの会社にはビジョンが無い」「管理部門はコストセンターだと下に見られる」「社員が自主的に動いてくれない」...という個別事象があったとしても、組織の全体像を掴めず曖昧なままでは、解決に向けた連続的な活動や予算化も難しくなってしまいます。

組織の問題を正しく捉え解決へ導くには、見える化をすることが欠かせない…ものの、各階層からの断片的で数値化しづらい情報をどのように整理・構造化すればいいのか悩んでいる人も多いのでは無いでしょうか。

ヒアリングやアンケートを通して得た情報をもとに、組織内部で何が起こっているか想像力を働かせ、言語・構造化することでまわりを巻き込み、動かしていく。組織の問題を解決していくには、実態を正しく、解像度高く理解できるかどうかが極めて重要です。

そこで「組織の解像度を高める」ことを助けてくれた10冊を、「想像力」「言語・構造化」にわけて紹介してみます。

想像力を高める5冊

組織内部でどのような人の行動・内面の動きがあるか。組織変革に至るプロセスや各工程で起こる事象が書かれている本を中心に選びました。

1)V字回復の経営―2年で会社を変えられますか
企業再生ドラマで定番のV字回復の経営。企業再生のプロである著者・三枝匡さんが、自らの実践をまとめあげたビジネス小説。企業再生に向けた変革の一歩は何からはじまるのか。その過程で社内に生まれる軋轢や反発にどう対応するか、共感の波紋が生まれていくのか。物語としてもめちゃくちゃおもしろく、変革における苦悩葛藤への理解が深まる一冊です。


2)最高の働きがいの創り方
経費精算システム「Concur」を提供する株式会社コンカー。情報が隠され、社員同士が協力しない。人間不信な職場環境から、働きがいのある会社ランキング1位に4年連続受賞するまでに至る過程。そして、組織内の縦横斜めのコミュニケーションを促進する「タコランチ」「ミムランチ」や四半期1回に会社の戦略や方向性を共有する「オールハンズミーティング」など具体的な施策が多数紹介されてます。“悪い文化は澄んだ水に墨を落とすように広がっていく”という記載が印象的でした。ちなみに同社社長であり著者の三村さんはめっちゃマッチョ。心身が健康なリーダーかっこいい。


3)組織は変われるか――経営トップから始まる「組織開発」
社内の人事と外部の組織コンサルタントが一体となり改革に挑む、組織変革ストーリー。多くの企業変革を推進してきた著者が、実在企業をモデルに経営トップ、役員、部長、そして組織全体へ…と広がる変革の波紋を具体的な方法論とともに解説。具体的な事例と方法論がセットで「いつ、誰に、どうやって」と自分にあてはめて読み進めることができます。


4)社員の力で最高のチームをつくる――〈新版〉1分間エンパワーメント
「社員一人ひとりの力を最大限に引き出すには?」
多くの人が考え悩むだろうテーマに、実践ストーリー仕立てで方法論を教えてくれる一冊。印象的なのは、個人の自由や自発性を引き出すには、トップダウンによる強烈な意志と行動が初期には必要だということ。「自由に発言して下さい」と言われる会議に全く自由が無いように、「自由に動く」ためにはそれを下支えする風土と仕組みが必要で、トップダウンやボトムアップの極論ではなく、いかに両者を組み合わせることが重要かを理解できる。その3つの鍵として、

1)正確な情報を全社員と共有する
2)境界線を明確にして自立的な働き方を促す
3)階層組織をセルフマネジメントチームで置き換える

をあげ、3)に同じく「何を、どうすべきか」を自分事に置き換え具体的にイメージしながら読み進めることができます。


5)ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
ピクサーが産み出した傑作『トイ・ストーリー』をリアルタイムに幼少期(7歳)見ていた自分には、その裏側にある組織ドラマにも感動するものがありました。この本に出会うまでは、映画のようなクリエイティブはたった一人の天才が感性で生み出すものと思ってました。でも違いました。駄作を傑作に変えるのは組織の力であり、「ひとりの天才に頼るのではなく、チーム/組織としてクリエイティブになる」と力強く書かれたこの一節に出会えただけでも読む価値ありました。


言語・構造化を助ける5冊

組織はどのような構造で成り立っているのか。組織や人の内面に関する理論が書かれている本を中心に選びました。

6)入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる
「“組織開発”って聞いたことがあるけど、いったいなに??」な疑問に答えてくれる、理論を学ぶ入口を開いてくれる一冊。時代背景とセットで組織開発のトレンドが解説されていて頭に入りやすかった。中でも、「組織に起こりやすい4つの諸問題」を整理した図は、問題の全体像と各諸問題同士のつながりを整理・理解する上で活用できるフレームワークです。


7)組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際
組織改革の本質的な狙いは、「組織成員の行動様式の変革」をはかることとして、そもそもの「組織」の定義からはじまり、目的に応じた組織の設計やそのプロセスが事例と理論をもとに書かれていて、戦略と組織を融合させる上で多くの示唆を与えてくれる本だと思います。興味深かったのは今後の人事機能に求められる基軸としてあげた3点で、

1)終身雇用の終焉により、個別スポットに評価する仕組み
2)年功序列ではなく、多様化への対応
3)労働組合ではなく、個人でリスクを取る

20年前の本なんですが、この全ては今も試行錯誤の最中にあるので、いかに組織を変えることが困難かということも思い知らされます。


8)組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす

「組織開発」を深く理解する上で、そのプロセス(「見える化」→「ガチ対話」→「未来づくり」)のみならず背景にある理論・哲学を知る事ができる骨太の一冊。ぶっとい本なので、積読に…という人も多いみたい。組織の問題解決では、不安や反発に迷いや戸惑いが生まれることがあるけど、そんなときに読み返すと大事なことに立ち返らせてくれる。まさに「体幹」のようにぶれない強さをもたせてくれる本だと思います。


9)産業・組織心理学エッセンシャルズ
組織には、白黒つけられず判断に迷う複雑さがあります。例えば、人を強く動機づける目標設定は?会社に合う評価制度は?管理職やリーダーに求める職務定義は?などなど。組織や人事に関わる人は「このシステムを入れたら解決!」とならない領域を担うため、難しい判断を求められる事も多いはず。

そのとき参考になるのが、実践と研究によって実証された数々の理論です。この本は「組織における人間の行動」にまつわる「目標設定理論」「社員満足と成果の関係性」「状況に合わせたリーダーシップ」などの理論が書かれていて、組織とそこにいる人への理解・言語化を助けてくれます。


10)経営戦略論入門 経営学の誕生から新・日本型経営まで
先に紹介した組織設計概論の著者であり経営コンサルタントの波頭亮さんによる「経営戦略論」の入門書。戦略論で連想されるロジカルさだけではなく、戦略を実行する上で「組織文化・風土」の重要性が指摘されている点も興味深く、組織論の本では無いですが、表裏一体である「戦略と組織」を捉え、「経営における人事の役割」を理解する上で参考になる一冊です。

他にも困難な局面を助けてくれた本はたくさんあるのですが、10冊に絞って紹介してみました。組織課題の実態が掴めずにいると、

「いったい何が起こっているんだろう」
「この状態はずっと続くんだろうか」
「自分たちだけ辛いんじゃないか」

と不安に陥ることもありますが、言葉により見える化されることで解決に向けてまわりを巻き込むことができますし、見通しを持てることで何より自分自身が「安心」することにもつながります。

まだまだ学習中のため、ぜひおすすめ本があれば教えて下さい!

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