スクリーンショット_2019-06-22_12

「一日中寝てるヤツが最強」。水どう藤村流、”自己中心的思考”のススメ。

「どうでしょう」の魅力を伝えたいたらればさん。

T木:
それではどうぞよろしくお願いいたします。

藤村:
よろしくお願いいたします。僕はついさっき来たところなんで、特に何も準備はしてませんよ。

たらればさん:
こちらはめちゃくちゃ勉強してきました。刊行済みのご著書は、単行本につきましてはすべて読んできました。いやぁ…面白かったです。

藤村:
おおぉ。さすが編集者。

たらればさん:
いろいろ聞きたいことがあるんです。

僕、今年十月の「水曜どうでしょう祭」に妻と一緒に行きたいなと思ってるんですけど、ただ妻が「どうでしょう」の面白さをいまいち分かってくれないんです。

藤村:
なるほどなるほど。

たらればさん:
もちろん僕は「水曜どうでしょう」が大好きでヘビーローテーションしてるんですけど、「どこが面白いのこれ」って聞かれるんです。でも、これほど答えに詰まるコンテンツはないだろうと。おじさんたちが楽しそうにしている……。

藤村:
ね、おじさんたちがわりとイチャイチャしてますもんね。

たらればさん:
イチャイチャしてるんですよ。僕、Twitterでは自分が面白いと思ったものの魅力を伝えて広めるのがそれなりに得意なほうだと思うんですけども、「水曜どうでしょう」に関しては……。

藤村:
セールストークがなかなかうまくいかないと。

たらればさん:
どうすればいいんですかね……。

藤村:
いや、もちろんね、僕は「どうでしょう」を面白いと思ってるわけですよ。だって僕が面白いと思ってるところを編集してるわけですから。面白いよねっていうものに「いや、分かんねぇ」って言われたら、「オレはそいつとは友達になれねぇ」ってだけの話なんですよね。「お前とは友達になんねぇ」って言う。

たらればさん:
今、妻の話をしてるんですけど……。

会場:(笑)

たらればさん:
この話、大丈夫ですか……、着地点として……。

藤村:
いや、だから分からないという人に対しては「そうか」としか思えないわけですよ。それをわざわざ「実はこういうところがあって面白いんだよ」というふうにねぇ、説明している間にどんどん自分が悲しくなってくるんですよね。たぶん「水曜どうでしょう」の面白さをオレが語りだしたら、みんなも「あ、『水曜どうでしょう』ってそういう感じだったかなー」「藤やんあれ、違うんじゃねえかな」みたいな感じになると思うんですよ。むしろ言葉で人に説明すると分かんなくなる。

たらればさん:
なるほどなるほど……。実は今、この話を緩やかに今日のテーマに繋ぎたいと思ってたんです。『仕事論』(総合法令出版刊)っていう本を藤村さんと嬉野さんのお二人が書かれているんですが、そのなかで「好きなものを好きになるためには育てなきゃいけない、時間がかかるんだ」ということを藤村さんが書かれてて。それを読んでなるほどなと思ったので、できれば諦めるんじゃなくて育てる方向の話に行きたいと思ってるんです。

藤村:
あぁ~、そういうことね。なるほど。

…………でも嫌いなものはしょうがないですからね。そこは僕はあっさり諦めますよ。なはははは。

たらればさん:
何かのキッカケがあって、それから「面白い!」と思うことってあるじゃないですか。原付で二人で走ってるのを見続けるだけで僕なんかゲラゲラ笑っちゃうわけですよ。好きな人にとっては、もう単語だけ、たとえば「小林製薬の糸ようじ」だけで、もう面白いとか。

藤村:
はいはいはい。笑っちゃう。

たらればさん:
そういう「どうでしょう」独特の文体とか構文みたいな、言い回しみたいなのがあるじゃないですか。でも分かんない人には……。

藤村:
だから、あれ説明できないですよねぇ。例えば「糸ようじ」を説明しようとしたら、

「海外の夜景を見ながら大泉くんが「小林製薬の糸ようじ」って言うんだよ」
「…………はい」
「いや、それがモノマネでさ」
「はい、似てるんすか?」
「う~ん、似てるっちゃ似てるなぁ。まぁ似てないっちゃ似てないんだけど」
「…………はぁ」

っていう感じですもんね。これは難しい。

たらればさん:
とはいえ好きな人にとってはそれだけでご馳走になるんですよね。だけどあれを観る前は、僕も全然ご馳走だとは思わなかったでしょうし。僕の「水曜どうでしょう」の原体験って、一人で深夜にずーっとテレビを観てた時なんです。でも、最初はそれほど好きじゃなかったんです。

藤村:
まぁ最初は取っつきにくいっていうかね。それはそうですよね。

たらればさん:
しかも「これはどこから観ても面白い!」っていう感じじゃないじゃないですか。全〇話のうちの一話だけを観るとか単発勝負ではない。だんだん、ゆっくり面白くなっていくものだと思うんで、何て言うんですか、遅効性というか、じっくり好きになるから、ずっと好きでいるというか。あれは「我慢」なんですかね。

藤村:
まぁ、それでも今だと大泉洋っていう人はほぼみんな知ってるわけじゃないですか。だからまったく知らない人に薦めるんだったら「大泉洋って知ってるよね」って、そういう言い方はありますけどもね。たらればさんの奥さんの場合なんかだと、大泉洋をもちろん知ってて「どうでしょう」も一回観たことあると。だけど大泉洋のドラマは観るけど「どうでしょう」の面白さは分からんと。

たらればさん:
そういう感じです。

藤村:
…そんなやつはいいよ! もうそんなやつに説明する必要ねーよ!

ここから先は

15,457字 / 29画像

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?