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男性に産後休業でなく産後休暇を!

産後休業ですと、無給でのお休み。
産後休暇となると、有給でのお休み。
産後休業ならば、現行の育休制度と呼び方が違うだけです。
産後休暇となると、企業は給与を支払わなければなりません。
企業はそのための資金をどこから捻出すればよいのでしょうか。

男性の産休創設のはずが出生時育児休業制度に

女性の産後休業は8週間。

少なくとも6週間は働かせてはいけないとされています。

休業ではなく休暇として8週間分の給与を支払う企業もあります。

休業となる場合には育児休業給付金として月額給与の67%。

今のところ、男性の産休制度はありません。

ところが、2020年7月、男性の産休創設を読売新聞がスクープ。

【独自】「妻の出産直後」対象に…夫の産休創設へ、育休より給付金手厚く
政府は、男性の育児参加を促すため、妻の出産直後の夫を対象とした新たな休業制度を創設する方針を固めた。現在は母親にしか取得が認められていない産休制度の父親版と言える措置で、育児休業よりも休業中の給付金を手厚くし、家計の収入減を抑えることも検討している。政府は秋から制度設計に着手し、来年の通常国会に育児・介護休業法などの改正案を提出する方針だ。現在の産休制度は母親のみが対象で、原則として出産予定日の6週間前から取得する産前休業と、出産後8週間の産後休業がある。導入するのは、父親を対象とした産後休業にあたる制度。出産直後で身体的・精神的な負担が大きい妻を夫がサポートする機会になり、母親の産後うつを防ぐ効果なども期待されている。政府は9月にも、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会に諮り、休業期間の設定など具体的な制度設計に入る。男性の育休取得が進まない背景には、家計収入が減ることへの不安の声も多いことから、新制度での給付金の増額や、手続きの簡素化などについても協議する見通しだ。

読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200726-OYT1T50145/

現行の制度でも、女性の産後に男性は育休を取得できます。

読売新聞のスクープ記事では、産休創設、給付金の増額などの言葉が並んでいます。

この記事から、男性も産休が義務化され、給付金が67%以上になると、大いに期待しました。

ところが、2021年1月、国の雇用保険で賄う育休中の給付水準の引き上げは見送られ、現行制度と同じ休業前賃金の67%が支給されるとの報道がなされました。

2022年10月にスタートする「出生時育児休業」制度です。

「出生時育児休業」制度では、産後8週間以内に2回に分けて計4週間の育休を取得できる、勤務先への申し出を取得2週間前までに短縮するようになるようです。

現行の育休制度に対しては、企業に対して、妊娠や出産を申し出た従業員に取得働きかけの義務づけ、大企業への育休取得率の公表義務づけをするとの改正も。

進まない男性の育休取得に正面から切り込むものになると思っていただけに、給付額が67%という点において、とても残念なものとなってしまいました。

企業独自の出産に伴う特別休暇制度はすでにある

政府は男性の育休取得率の改善を目標として挙げていました。

とりあえず、男性の育休取得の問題を棚上げし、女性にとって最も負担の大きい産後を男性がケアできるようにするといった、実現可能な対策を考えたのだと思います。

国家公務員には「男の産休」制度があります。

「男の産休」は育休とは別のもので、配偶者出産休暇2日と育児参加のための休暇5日の計7日間の有給休暇が取得できる制度です。

配偶者出産休暇は、配偶者の出産に係る入院等の日から、出産の日の後2週間を経過する日までに取得できる有給休暇です。

育児参加のための休暇は、配偶者の出産予定日6週間前の日から、出産の日の後8週間を経過する日までに取得できる有給休暇です。

2019年度の「男の産休」5日以上取得状況は79.6%となっています。

国家公務員ほど浸透してはいないものの、多くの企業では、出産に伴う数日間の特別有給休暇制度が設けられています。

現状、育休を取得しない男性でも、出産に伴う特別有給休暇や年次有給休暇を利用して、数日間の休暇を取得しているケースは多いと思います。

すでに多くの企業では、独自の特別休暇制度を利用すれば、男性が数日間の産休を取得できるようになっているのです。

国が給付額を補助すれば、男性の産後休暇制度を作ることができる

大企業では、特別休暇や年次有給休暇を利用すれば2週間程度の育休が取得できるようになっているところが増えてきています。

男性の育休を必須化している企業もあります。

数は少ないですが、有給となる育児休暇1カ月を取得できる企業もあります。

企業によっては、すでに男性の産後休暇制度を独自に設けているのです。

「出生時育児休業」制度では給付額の点においては現行制度と何ら変わりはありません。

男性の「出生時育児休業」取得が、女性の育休のように80%を超えるとは思えません。

ならば、「出生時育児休業」の4週間分の給付額について、残り33%を手当した会社には、国が全額補助金を交付したらどうでしょう。

国が補助金を交付すれば、給付額の面で有給休暇制度と同じになります。

100%給与保障となれば、男性の産後休暇制度の足掛かりにすることができます。

男性の育休取得率の目標を達成するために数年間の期限限定の補助金でいいと思います。

感染症の影響で雇用保険の財源確保が難しいのならば、財源が確保できるまでの期間の補助金でもいいと思います。

スクープにより男性の産休への期待が高まった中、給付率67%のままの「出生時育児休業」制度。

かなり残念な制度となってしまいました。

「出生時育児休業」がそのまま「男性版産後休業」と名称変更しても、産休制度にはなり得ません。

数日間の産休ならば、特別休暇や年次有給休暇で賄えます。

給与が100%保障されない産後休業では、数週間も休めないのです。

必要なのは産後休業ではなく、産後休暇なのです。

産後の数週間、男性が休んでもおかしくないという空気が日本社会に作られていくまでには、まだまだ時間が必要となりそうです。

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