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3歳まで育休が取得可能になれば、待機児童問題が解決する?【後編】

前回の記事(前編)で、3歳まで育休が取得可能になっても、待機児童問題は解決できないことをお伝えしました。
今回はその続きです。
待機児童問題を解決する方法を考えてみました。

2歳児には3歳児の3.6倍の保育士を配置しなければならない

年少さんと乳児さんでは、かなり違います。

保育園の経営がかなり違ってくるのです。

この保育園の経営に待機児童問題が絡んでくるのです。

保育園の経営に直結する保育士の数は、厚生労働省令「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」で定められています。

保育士の数は、乳児おおむね三人につき一人以上、満一歳以上満三歳に満たない幼児おおむね六人につき一人以上、満三歳以上満四歳に満たない幼児おおむね二十人につき一人以上、満四歳以上の幼児おおむね三十人につき一人以上とする

厚生労働省令「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」

私の住む自治体の条例では、「保育士の数は、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満2歳に満たない幼児おおむね4人につき1人以上、満2歳以上満3歳に満たない幼児おおむね5人につき1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね18人につき1人以上、満4歳以上の幼児おおむね30人につき1人以上とする」となっており、国よりも厳しい基準を設けています。

自治体の基準によると、長男を入園させた2歳児クラスでは、子ども5人に対して保育士1人を配置することになります。

一方、3歳児クラス(年少さん)では、子ども18人に対して保育士1人を配置ということになります。

2歳児クラスと3歳児クラスの在籍人数が同じならば、2歳児クラスには3歳児クラスの3.6倍の保育士を配置しなければなりません。

3歳児以上のみの園ならば保育士数が圧倒的に少なくてよい

表 平均的なA保育園と3歳児以上のみのB保育園における保育士数

225人定員の保育園で2つのパターンを想定して考えてみましょう。

A保育園は、平均的な在籍状況を想定したものです。

B保育園では、3歳児クラス以上にしか園児が在籍しない想定です。

自治体の基準で計算すると、保育士の配置人数はA保育園で29人、B保育園で11人となります。

同じ定員の保育園でも3歳児以上しか在籍しない保育園では、圧倒的に保育士の配置人数が少なくてもよいのです。

3歳児クラス以上だけにすれば、保育士不足は解決できる

保育士不足は大きな問題になっています。

厚生労働省「保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて」によると、必要とされる保育士数は、平成29年度末で約46.0万人、現在の保育所における保育士数は、平成29年度末で約38.6万人と推計され、約7.4万人が不足しているとされています。

必要数の約84%しか満たされていない状態です。

先程の表のA保育園で必要とされる29人の保育士の84%は、約25人です。

B保育園のような在籍園児数になれば、必要とされる保育士は11人となり、25人を大きく下回ります。

B保育園のように、3歳児クラス以上にしか在籍がないとするならば、保育士不足の問題を解決することができます。

さらに、同じ予算が確保されれば、保育士の処遇を大きく改善したり、保育環境を整えたりすることもできます。

人件費の差額分を3歳年度末までの育児休業手当に充てる


厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」から、保育士の平均年収を計算してみると、365.1万円になります。

分かりやすくするために、すべての保育士がフルタイムで働いている正規の職員と仮定します。

A保育園では人件費が1億587万9千円、B保育園では4016万1千円。

人件費の差は、約6500万円となります。

私の住む自治体では53の認可保育園があります。

すべてがA保育園だと仮定し、そのすべてがB保育園に変わったとすると、約34億4500万円もの人件費の差が生じることになります。

簡単ではありませんが、この34億4500万円を、現行の法律では支給されていない、満1歳以降に取得される期間の育児休業手当の一部に充ててみたらどうでしょう。

私の住む自治体の出生数は、毎年3500から4000人。

平均3700人とすると、1歳児クラスと2歳児クラスに該当する人口は7400人となります。

この7400人の乳児の保護者のうち、50%の3700人が育児休業手当の給付対象者と仮定します。

34億4500万円を均等に支給すると、1人あたり1年で約93万円になります。

2019年10月から、保育料が無償化されました。

私の自治体では、最も保育料の高くなる階層区分では、保育料の月額が、0歳児クラス48000円、1歳児クラス48000円、2歳児クラス48000円、3歳児から5歳児クラス以降は無償。

無償化により、3歳児クラス以降の保育料は、自治体が負担してくださることになりました。

とてもありがたい話です。

1歳になる年度の4月から6歳になる年度末までの6年間、保育園に預けるとすると保護者の負担する費用は、172万8000円になります。

保育料以外にも支払う費用がありますので、保護者の負担する費用はもう少し多くなります。

子どもを保育園で預けてパートタイムで働くことで、年間約100万円、3年間で300万円の世帯収入があったとします。

そのうち、約170万円を保育料として支出し、約130万円が世帯の資金の増加分となります。

年平均で約45万円の増加です。

働くことの意味は収入を得ることだけではないため、このような机上の空論で解決できる話ではありません。

しかし、世帯の収支にだけ目を向けてみると、年間約45万円のために、幼いわが子を保育園に預けるという構図になっています。

それならば、どうでしょう。

思い切って、3歳の年度末まで育休を取得可能にしてみては。

保育士の人件費の減少による年間93万円を育児休業手当に充てることができれば、パートタイムで得る約45万円の倍以上の給付が得られることになります。

制度を変更すれば、現状の保育園の利用の仕方や働き方なども変化するため、机上の空論通りにはならないところも出てくると思います。

また、細かなところを省略した、かなり前向きな想定で、数字を出していますので、お得感が机上の空論ほどではないとなるかもしれません。

でも、3歳の年度末まで、愛おしいわが子と一緒に過ごせる時間を確保できることは、1歳の誕生日の前日までしか過ごせないことに比べ、かなりのお得感があると、私は思ってしまいます。

3歳の年度末まで育休が取得可能になれば、待機児童問題の解決につながるのかもしれませんね。

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