変な話『新人バイトと玄人客』

「いらっしゃいませー。いらっしゃいませー。」
 古着屋の店頭で声を張る女の子がいた。
年の頃は二十代前半であり、学生なのだと見受けられた。
頬を赤らめた彼女の声は、ほんのり上擦っており、経験の少なさを感じさせた。
 
 そこへ一人の男性客がやって来た。年の頃は三十代前半だろう。丁度、おじさんかお兄さんかで悩む頃だ。

「いらっしゃいませー」
「すみません。」
「あ、はい。いらっしゃいませ」
「あの、これってバブアーですか?」
「あ、えっとー・・・ごめんなさい。私まだ入ったばかりでして・・・」
「これ、バブアーなんですよ」
「そうなんですね。勉強になります。」
「あ、このシリーズのカーキってありましたっけ?」
「あ、すみません・・・わからないです・・・。」
「このシリーズにはカーキもあるんですよ。」
「そうなんですね。勉強になります。」
「あ、これってバーバリーですか?」
「あ、すみません・・・わからないです。」
「これ、バーバリーなんですよ。」
「そうなんですね。勉強になります。」
「このシリーズからカーキって出てましたっけ?」
「あ、すみません。わからないです。」
「このシリーズからはカーキ、出してないんですよ。」
「そうなんですね。勉強になります。」
「あれ、恋人とかっているんでしたっけ?」
「あ、すみません。わからないです。」
「僕は、恋人いないんですよ。」
「そうなんですね。勉強になります。」

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