霧の向こうのマイクロノベル 他3篇 #77
霧の向こうからやってきたのは、霧だった。何度振り返っても、通り過ぎてきた霧に包まれて何も見えない。やがて陽が射してくると霧は薄れ、後ろにはこれまで振り返った自分が列をなして昇華し、消えていくのだった。
遊園地にはケムール人が出るから気いつけやと祖父はいうけど、落石注意と同じでどうやって気をつけたらええんや。近づくなというのかも知れんけど、それでは観覧車に乗れへんし。そや!ケムール人になればええんや。
ジャコウネコの糞から採れた最高級のコーヒーがあるそうだが、このヒヨドリの糞から出てきた猛毒はいらんかね。ヨウシュヤマゴボウの種子で、フィトラッカトキシンが含まれ、腹痛や、延髄に作用して苦しむらしいよ。
さあ、そのカタバミの蕾を見つめて100までゆっくりと数えてごらん。ほーら、だんだん身体が軽くなる。頭がすっきりして、このカタバミを大切に育てたくなる。株分けをして、人に勧めたくなる。いい気持ちだろう。
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