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「時計草」のマイクロノベル 他3篇 #12

 これこれ、何してんの。あの事故の前まで時計草の針を巻き戻してやり直すって? そんなこと無理やて、真ん中の三つに裂けた雌しべが時針分針秒針に見立てあるだけやから。あ……針は折れて時計は壊れ、時は止まった。

 オナモミが万歳をしとる。ほんまにあのひっつき虫の中から出てきたかいな。ヤドカリみたいに、オナモミの実に取り憑いたほかの植物なんちゃうか。ほら……あんた、頭に大きなオナモミの実なんてつけて、何してるの?

 雲にも背骨というものがあるんやで。まれに現れたのをグライダーで取りに行って、水煮にしたのがこの缶詰や。振ると、ちゃぽちゃぽ音がするやろ。でも、干魃の時以外は絶対開けたらあかんよ。神さんとの約束や。

 もしもし、駐車場の管理?「空」ってなってたのが、急に「満」じゃなくて「海」の表示になってゲート開かないんですけど、何ですか?
 え、またか。いますぐ逃げな、とにかくすぐに。……おい、聞こえてる? おーい……

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