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「ラショウモンカズラ」のマイクロノベル 他3篇 #85

 鬼女の腕が咲く。花の形から渡辺綱が切り落とした腕に見立てて、ラショウモンカズラと名付けられた。その腕から鬼女本体を再生する技術ができたそうで、そのうち小さな鬼女が咲きまくって暴れだすから気をつけなよ。

 幸せの黄色いテントウムシ、植物のうどんこ病の菌を食べるのだそうだ。そういえば、となりのスナップエンドウの葉、うどんこ病にやられて白くなっていたな。ありがたい虫だな。さてと、街路樹を切りに行くとするか。

 ほら見えるだろう、有刺鉄線の向こうに月が。ここに閉じ込められてからというものずいぶん痩せ細って、すっかり白くなってしまった。もっと細くなって、消えてしまうに違いない。そこから再生させるのにコツがいる。

 この可憐な花の名前、実は「貧乏草」って言うんだ。折ったり、摘んだりすると貧乏になってしまうんだよ。嘘だと思ってるだろう。でも、この国にはそういうことをするセイジカっていう鹿がたくさん棲んでいるからね。

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