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「カタツムリ」のマイクロノベル 他3篇 #52

 カタツムリに向かって、日に三度、一心に祈れば願いごとはゆっくりゆっくり叶うという。ならば、こんな人類など滅んでしまえ。飼っていたカタツムリにそう願った中学生の頃、わたしの祈りは、いま届いたかも知れぬ。

 ハートを背負ったエサキモンキツノカメムシの交尾を見た時は幸運の瞬間、過去の過ちを一つだけ解くことができる。ああ、人類滅亡を願った中学生のわたしをお許しください。交尾を終えたカメムシは飛び去っていった。

 コンクリート壁に開いた草の生えた排水口に、一度棒きれを突っ込んでみたことがある。すると、向こう側から思い切り引っ張られ、棒きれは穴の中に消えた。それ以来、あまり近寄らないでいたが、草は茂り続けている。

 あのお稲荷さま、実はこんなことがありまして……と、ダンゴムシたちによる報告会がある。そこで自分の行いを良く報告してもらおうと、ダンゴムシ様お持てなしセットの販売を企画している者がいる。と報告されていた。

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