トランプの最後通牒 墓穴を掘った習近平
国際政治学者の藤井厳喜(ふじい・げんき)氏と警視庁で北京語を使って中国人犯罪者を取り調べていた元通訳捜査官の坂東忠信(ばんどうただのぶ)氏による対談です。
アメリカ大統領選挙前に出版された「トランプの最後通牒 墓穴を掘った習近平」と銘打ったこの本、見事に予想を外しています。本のタイトルは編集者が売上を見込んで付けたのか、藤井氏、坂東氏が相談して決めたのかはわかりませんが、トランプ氏の再選を予想し、万が一バイデン氏が当選すれば親中的に態度を豹変させ大変なことになると主張しています。しかしマスコミの見立てとは違いトランプ氏は再選を果たすだろうし、習近平氏を全力で追い詰めるだろうと予測しています。
では、読むに値しない本かと言えばそうとも言えません。2020年9月に初版が発行されたのですが、オリンピックが開かれる1年後を2020年にどのように見ていたのか。自ら振り返っても新型コロナウイルスの感染拡大について予想とはかけ離れた展開を見せていますし、一旦過去に戻って改めて今を見つめてみると、近い未来すら見通すのは難しいものだと考えさせられます。
内容ですが
第1章 武漢ウイルスは「生物兵器」だった!?
第2章 中共の「超限戦」をいかに乗り越えるか
第3章 ポストコロナ時代-チャイナ依存・移民国家の呪縛を解く
第4章 中国を本気で潰しにかかるアメリカ
と4つのテーマについて話し合われています。
※超限戦とは、戦争に勝つために、新テロ戦や生物・化学兵器戦、ハッカー戦、麻薬販売なども含む、ありとあらゆる手段を使う中国の戦略のこと。
実はタイトルとは違ってトランプ氏について、習近平氏については、あまり語られていません。それよりも日本における中国人や韓国人によるリスクについて多くのことが語られています。この辺りは中国人犯罪者を取り調べていた元通訳捜査官・坂東氏ならではの経験や情報が生きています。中国人の入国緩和の問題点。アメリカでは次々と閉鎖させている孔子学院の洗脳工作。中国による日本企業の乗っ取り。中国共産党が牛耳る国連機関の危うさ。韓国人の生活保護受給世帯率の高さ。などなど日本国内でもチャイナ・リスクが膨らんでいることを指摘しています。
※孔子学院とは、中国政府が世界各国の大学等と提携してその地に設立する中国語および中国文化に関する教育機関。日本国内では早稲田大や立命館大など14の大学にあると言われています。
この本、「トランプ再選で習近平ピンチ!」という部分を「トランプ氏が破れバイデン政権になることによって、いかに日本が危ない立場に追い込まれるか」という話に置き換えれば、大半の部分は書き直さなくても成立しています。日本国内においても知らず知らずのうちに、中国によってどのようなリスクがもたらされているのか。この本の主眼はそこだからです。
第4章の最後。藤井氏は語ります。「万が一にも民主党のバイデン候補が当選すれば、人権問題で表面的にはチャイナを批判しても、経済制裁をゆるめてしまうので、チャイナは息を吹き返してしまうでしょう。こうなると、日本はチャイナの属国的立場に落とされ、本当の日本の国難がやって来ます。」
益々過激になる中国の覇権的な動きによって、日本は次第に対立する関係へ移行せざるを得ないでしょう。しかし今はあまり関心を持たれていませんが、バイデン大統領の息子ハンター氏が中国と親密な関係を築いていることは、バイデン政権が真に中国と対立の構図を描くのか予想しにくくしています。例えアメリカに梯子を外されても、日本は最悪の展開に備え、どのように準備を整え振る舞うべきか。藤井氏と坂東氏の次の対談が待たれます。
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