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「新しい日本型資本主義」とは誰のためのものなんだろう

岸田新総理が施政方針演説でも強調した「新しい日本型資本主義」を考えるための経済会議というのが発足されました。

新しい資本主義実現本部発足

「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトと
した新しい資本主義

ということなのですが、何やらさっぱり実像が掴めません。

「新しい資本主義」という言葉自体は経済学の世界ではほとんど聞かない。岸田首相は「新たな資本主義を創る議員連盟」の会長を務める。日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の思想に共鳴する議員の集まりだ。

今年は、大河ドラマの主役である渋沢栄一が注目されていますが、ここでも渋沢です。渋沢の資本主義は、その著書名でもある「論語と算盤」に象徴されるように、経済と道徳の統一を目指しています。

つまり、資本家が利潤だけを追求するのではなく、それを社会のためにどのように使うかという点まで考えるのが「日本型資本主義」ということなのでしょう。

それは、小泉政権以降の自民党を席巻した「新自由主義」との訣別ということでもあります。

新自由主義から新しい資本主義へ?

この流れは、実は日本だけではなく、世界でも「格差への不満」を訴える若者の行動などに顕著で、日本でも売れたピケティの「21世紀の資本」が注目されたように、資本主義の見直しが叫ばれ始めているのです。

こうした流れの中で、マルクスが再注目されているということなのでしょう。

実は、この本はまだ読みきれてないのですが、やはり必読でしょう。

ただ、この本で斎藤氏が指摘するように「資本主義」である限りは、資本と資本家の性質上、拡大は避けられず、その対象はすでに地球規模に広がっており、それが環境問題とぶつかりあっているのが現状です。

なのに、「日本型」「新しい」とする「資本主義」を考えるというのはどういうことなのでしょう。

有識者メンバーから特徴を眺める

まあ、全てはこれからですし、衆議院選挙で自民党が大敗したらば、こんな組織も無くなってしまうかもしれないわけですが、有識者メンバーを見てみましょう。

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男性8名、女性7名、年代も30代から70代までと幅広く、経済団体3巨頭、労働組合、人工知能の大学教授、総研理事長、IT系、AI系、クラウドファンディング、ベンチャーキャピタル、投資顧問、企業再生、大田区の加工メーカー、創薬とメンバーもこれまでにないバリエーションと陣容です。

渋沢さんというのは、渋沢栄一の玄孫だそうで、先ほどあげた超訳版の「論語と算盤」の著者でもあります。

投資会社を経営していますが、ESG重視という点も重要な視点ですね。

村上さんという方もESG重視です。

シナモンはAIの会社。

人選にこれまでない感じがするのは、女性が多いことと業種が広いことでしょうか。大手メーカーではなくダイヤ精機の2代目女性経営者とか。

塩野義製薬の女性副社長とか。

製薬業界から唯一有識者に選ばれた塩野義製薬の澤田副社長について山際担当相は、「製薬におけるイノベーションの現場に身を置かれ、現在は関西経済連合会を中心に活躍する経営者」と紹介した。なお、澤田副社長は関西経済連合会のベンチャー・エコシステム委員会で委員長を務めている。

このかたは関西代表ということもありそうです。

では、なぜこのメンバーで、何を議論するのか。

誰に向けた資本主義か

山際担当大臣が、この会見で述べた、この点が注目だと思います

「企業の構成要素は株主やマーケットだけではない。様々なステークホルダーがいる中で、全体をみて企業としてプラスになるような、ひいては社会としてプラスになるようなあり方が新しい資本主義ではないか」

企業の利益還元が株主重視だった「これまでの資本主義」に対して、ステークホルダー全てに還元され、社会に貢献する企業活動特にESG(環境、社会、ガバナンス)でありSDGsを推進するように活動するのが「新しい資本主義」ということなのでしょうか。

実は、これは、目新しいものではありません。

「資本主義の問い直し」はいま、世界の一大テーマになっている。昨年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも経済格差を広げてきた資本主義のありようが厳しく問われた。

このインタビューは2020年1月に行われたもので記事はその再掲です。

この中で「ステークホルダー資本主義」ということが出てきます。

「グローバル化した市場に対応するこれまでの株主資本主義は、株主へのリターンが絶対視され、顧客や従業員、環境がどうなろうと関係ありませんでしたが、その全員に資する形の資本主義がステークホルダー資本主義です。従業員、顧客、環境と株主。主な四つのステークホルダーの間にあるトレードオフを調整するためには、規制が要ります。あるいは課税が必要かもしれません」

どうもこの辺りに、岸田首相がいう「新しい資本主義」の元ネタがありそうです。さらにステークホルダー資本主義が重視するのはESGであり、企業活動はSDGsを意識したものにならざるを得ないようです。

環境規制など要らないとトランプ氏が言ったとしても、ステークホルダー資本主義は環境や人権、反腐敗を行動原理とするので、それに従わなくてもよいのです。株主資本主義が国家経済と深く関わって運営されていたのとは対照的です。ステークホルダー資本主義によって、企業は本当の意味でグローバルな一員になることができ、インターネットを通じて個人と深く関わり、市民社会とつながることができるのです

こうした世界の経営者の意識や活動はすでに進みつつあり、さらに先進国のマーケットは企業のESGやSDGsへの貢献を含んで動いています。

日本型で行けるのか?

そこに「日本型」を挟む余地はあるのか。

グローバル資本主義がステークホルダー資本主義に変わったとしても、相手にするのはグローバルであることに変わりはなく、ドメスティックな規制による護送船団方式重視で来た霞ヶ関は変われるのでしょうか。

規制緩和を自社利益に取り込んできた竹中平蔵が消えて、誰が政商になるのでしょうか。そういうことではないですね。

「日本型」を考えるならば、キーパースンは、冨山和彦さんではないかとみています。

地域経済の復活、中小企業のDXなどがなければ、岸田首相のいう「中間層の復権」はあり得ないだろうと思うからです。

ちょっと古いですけど、この本が富山さんの原点かなと思います。

グローバル企業がいくら稼いでも、日本経済全体の占有率は3割にすぎない。雇用にいたっては、2割程度である。残り7割のローカル経済圏が復活してこそ、初めて成長軌道に乗ることができる。

GAFAを作れない日本は、実は国内経済で多くの企業が生きています。国際企業ばかりが目立ちますが、分厚いGDPの原資はローカルの潤いにあるのです。そして、その日本型の中には東南アジアや中東、アフリカに輸出可能な生産技術や生活の工夫があるのではないかと思います。

そんな話がこの会議から出てくるといいなあ、と思っています。

SDGsと経済については、この本を読み始めました。

この本と斎藤さんの「人新生の資本論」を読み比べて考えようかなと思ってます。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。