お遍路でもらった大切な筆が気付かせてくれた生き方
使い古した一本の筆が目の前のペン入れに入っている。少し年季が入っている。もう10年近く前にある人からもらった筆だ。
僕は生き方が不器用だけど、それにならって字も下手くそだから、救えない。手紙を書く機会があると、慎重に丁寧に書こうとするのだけど、やはり不器用な文字は不器用な文字だ。
大学生の時、四国八十八箇所1200キロを歩いた。愛媛県に55番札所南光坊がある。伊予北条から南光坊へ着いた時、薄暗く夕暮れていた。参拝客もまばらで、暗闇の中にぽつりと納経所の明かりが灯っていた。