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常識に捉われない自由なアート

※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2023年12月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。

昭和6年築のお米屋さんの母屋とその内蔵を使って2006年6月23日にオープンした、アートとアーティストを紹介する「蔵まえギャラリー」

「蔵まえ」と大きく書の字で描かれた看板の下の入り口から入ると、小上がりと白い壁の展示スペースが広がり、右手には内蔵へ通じる道があります。

今回の情報誌では、オープンから17年経った蔵まえギャラリー(以下「蔵まえ」)及び、蔵まえで開催している「Vivid アート展」について、合同会社蔵まえの佐野さんと田口さんのお二人にお話を伺いました。

出店の地に選んだのはゆかりのない土地、藤沢

蔵まえは、2005年に、商店街の空き店舗の出店希望者を支援する「チャレンジショップ」に申請し、認定を受けたことから始まります。

小田原や平塚、厚木もギャラリーの候補地として挙げられていましたが、佐野さんが藤沢のこの地でオープンしたのは、古民家の建築に魅力を感じたから…ではなく、「駅から徒歩圏内で1階だから。また、間口が広く、天井が高くて作品を飾りやすそうだったから」。

他の候補地に比べて家賃が高く、藤沢がゆかりの地でもなかったため、佐野さんにとっては大きなチャレンジでした。

田口さん(左)と佐野さん(右)

オープン当初はオーナーとしての悩みが絶えず…

佐野さんに蔵まえギャラリーのオープン当初の話を伺うと、“アート業界の因習” に苦労したことを赤裸々に語ってくださいました。

「アーティストではなくギャラリーのオーナーになることにしたが、今まで絵しか描いてこなかったから事務的なスキルもなく、最初の立ち上げには苦労した。

展示の協力を依頼していたアーティストのメンバーは、蔵まえでのギャラリーのオープンが決まった途端に50人から10人と大幅に減った。

その後、アール・ブリュット(生の芸術)の展開としてハンディのある人の展示も始めたが、『自分の作品を一緒に並べてほしくない』『自分も障害者と思われたくない』と反対され、10人のメンバーからさらに減ってしまった。

今まではアーティスト同士だったのに、蔵まえのオーナーになってからは関係性が大きく変わった。アーティストを支援するためにギャラリーを始めたはずなのに、本当に嫌だなと思った時期もあった。」

「Vividアート展」を開始!障がい者理解のお手伝いに…

そうした中で、2014年からは「Vividアート展」を開始しました。

Vividアート展は、湘南の地で、障がいの有無、プロアマ、年齢、国籍などあらゆる障壁を越えて参加できる公募展で、広い意味でのアートの支援を行っています。

この展示は今年で10回目を迎え、これまでに展示を行ったアーティストは延べ1,000人にものぼるそうです。

Vivid アート展の様子

Vividアート展代表の田口さんは、「展示を続ける中で、1点しか描けなかった人がたくさん描けるようになったり、作品の質が上がったり、アーティスト自身の変化を感じることができた。

上手い絵が描けないからダメ、ではなく、その人なりの感性が絵に出ることが大切。障がいを持つ人が描く絵を通して、「こういう絵を描く人、どういう人なんだろう?」と、興味を持つきっかけになることで、障がい者理解のお手伝いもできているのでは。」と話してくださいました。

アーティストが“家族”となり安心できる場にしていきたい

蔵まえギャラリーのオープンから今年で17 年が経ちます。

佐野さんは、「アーティストの方から「絵が上達しただけじゃなくて、仲間ができた」「ここに来れば誰かがいる安心感が得られて良かった」と言われ、この空間をやっと作れたんだなと思った。」と話していました。

蔵まえギャラリーは2024年3月に移転予定で、同年6月23日から新たな場所を支店としてオープンするそうです。

佐野さんに今後の展望について伺うと、「アーティストが『家族』となり、新たな交流を生み出すことを目指して、飲食に挑戦したい。

例えば、みそやこうじなどを作る『発酵講座』をしたり、『介護食』をテーマとして少しの工夫で美味しくなることを伝えたりしたい。

その中で、作品の皿を日常生活でどのように活用できるかを知ってもらう機会にもつなげたい。」とのこと。

アーティストとして作品を出展する人、その作品を観に立ち寄る人、アーティストの家族や支援者など、様々な人が蔵まえギャラリーに関わっています。

長い歴史を感じさせる建物と、しきたりや常識にとらわれない自由な展示によって作られる空間が魅力の蔵まえギャラリー。

佐野さんは、「アートだけでも正解がたくさんある。マルかバツかではなく、色々な色があるので、それを体感してほしい。」と話していました。

ぜひ蔵まえギャラリーで観て体感する体験をしてみてはいかがでしょうか。

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団体紹介

合同会社 蔵まえ

藤沢駅から徒歩5分の立地にあるアートスペース「蔵まえギャラリー」を運営しています。開館から17年経ち、「ここでしかできない」ことにこだわって展覧会を開催してきました。展覧会の他には、アート作品の販売、珈琲の販売、レンタルスペース、洋裁や油絵などの教室、ワークショップ、カルチャールーム、シェアアトリエなど幅広く行っています。蔵まえギャラリーは2024年3月に移転し、同年6月から支店をオープン予定です。

設立: 2006年6月
代表: 佐野 晴美
WEB:  https://kuramae.jimdofree.com
TEL:  0466-25-9909
mail:  a_whto@yahoo.co.jp

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