第百四話:予想外の事態
「さて、今日も翻訳の続きをしますか……」
皆への説明が終わって一週間後。
その日の講義が終わり、屋敷へと戻っている最中だった。
「ダンテ無理してませんよね?」
「してません――」
と答える前に、爆発音が聞こえた。
学院のすぐ近くからだった。
「フィレンツォ!!」
「はい!! エドガルド様とカルミネ様は皆様を早く屋敷へ!!」
「だが!!」
「お願いです、屋敷に戻ってください、嫌な予感がするのです!!」
「――分かった、行くぞ!!」
エドガルド達と別れて私はフィレンツォと共に急いで爆発音のした現場へと向かう。
そこでは、負傷しながらもロザリアさんを守るベネデットと、明らかに怪しいローブの集団がいた。
「ベネデット!!」
「ロザリア、安心しろ!! こんなのかすり傷だ!! 君を守る!!」
「何処がかすり傷ですか!!」
私が怒鳴りつけて二人の前に立つ。
「な?! お前今日講義じゃ?!」
「とっくに終わりましたよ!!」
私の出現に明らかに動揺しているのが分かる。
「御二人に危害を加えた事許しませんからね!! 雷撃よ!!」
全員に雷撃が当たる。
すると、ローブだけ残して塵になって消えた。
「成程、遠隔魔術ですか……ですが本体にも相当ダメージがいったと思いますよ」
「御二人とも大丈夫ですか?」
「っ……私一人で――」
「十分な訳がないでしょう! ロザリアさんを庇ってその怪我!! 自尊心と対抗心の高さは評価しますが、その無理をするのはいただけませんね!!」
自分の事を棚に上げているのはわかる。
――いや、だってそうしないと駄目だし――
フィレンツォの貴方が言うか目線が痛いが知らないフリをする。
「何がありました!!」
「実は――」
「ロザリア!! いうな君が巻き込まれるぞ!!」
「いいえ、言わなければなりません!!」
「いえ、ロザリアさん、貴方が言う必要はありません」
「どういう事だ?!」
先ほどから元気に怒鳴っているベネデットに呆れのため息をつき、私はローブを手に取った。
「このローブに残る情報を全て読み取りました。貴方方が襲われた理由を言う必要はありません、治安維持所の方々、すみません、これは王族が関わる問題です」
「――わかりました」
治安維持所の方は怪我をしたベネデットを連れて医務所へと向かっていった。
ロザリアさんも同伴していた。
「……フィレンツォ、屋敷に戻りましょう」
「畏まりました、ダンテ殿下」
私はフィレンツォと共にその場を後にした。
事態の猶予はもうないと判断したのだ。
「――今日中にこの本を解読します、異論は今回は認めません」
「ダンテ事情を話してくれ、その前に!」
「王家の血が封印を解除する鍵、ロザリアさんが狙われたのは彼女の祖母が王族だったから、若い血か、もしくは王の血程解除がたやすい――」
「まさか……」
クレメンテの顔が青ざめる。
「いえ、ジューダ・アウトゥンノは死んでいます、ですが処刑の際『血』を流した、奴らはそれを集めたのです」
「っ……!!」
「二つ解除してしまえば、身動きが取れず。本体の封印の場所に私が行くから私を殺せば、全ての解除が一気にできる。連中の狙いはそれです」
「なので、現在王族の精鋭部隊を派遣してもらい、皆さまの護衛をしていただくことになりました」
「ブルーノ学長に話、三学院全て休校状態に」
「もう時間がないのです!」
その夜私は本を読み解いていた。
術の所が「こうしろああしろ」のみで詠唱が書かれていない。
「どういうこっちゃ!!」
頭を抱えながら最後のページを読むと――
『私は術を完成させられなかった、故にこれを読んだ未来の若人よ、君が呪文を創るのだ』
……
…………
「はぁああああああああああああああああああああ?!?!」
私は頭を抱えた。
――どないせっちゅーねん!!――
『何を悩む必要がある、ここでこそ中二病で培ったポエムと呪文の出番だぞ!!』
――中二病ポエムと呪文言うな!!――
神様に若干腹立たしい事を言われたが、もう羞恥心をかなぐり捨てて呪文を書く。
何とかできたが――
――これで大丈夫?――
『大丈夫だ、ただ、ぶっつけ本番で強力な呪文になることは理解しておけよ?』
――……了解!!――
「とりあえず寝る!」
『そうしろ』
体力はなるべく温存したい、ある意味、これはラストバトルのようなものなのだ、RPGの。
――いや、そうであってほしい、じゃないと私の心臓が持たない!!――
『安心しろ、RPG的な意味でラスボスだからな』
――神様いて本当よかった――
『だろう?』
ちょっと自信満々なのが腹立たしいが堪えて目をつぶる。
――明日、本番だ――
そう思って眠りについた。
『まさか、完成させるとは』
また、あの夢だ。
『ああ、未来の若人よ、感謝する』
『主神アンノよ、どうか我らの罪を彼らの罪を――』
『赦したまえ、救いたまえ――』
「……」
目が覚めると朝になっていた。
私はふぅと息を吐き部屋を出ようとすると――
どさどさどさ!!
「……あの、何をしてるんですか?」
以前よく見ただるま落とし、ブレーメンの音楽隊宜しく積み重なっているエドガルド達が居た。
「そ、その、起こそうか、どうかと皆で悩んで……」
「す、すみません、すみません……」
「それにしても重い……!」
「す、すみません、今どきます」
「わわ、カルミネすまない!!」
その様子に思わず笑ってしまった。
「わ、笑わないでくれ、ダンテ」
「すみません、エドガルド……でも、皆さんありがとう、おかげで緊張が少しほぐれました」
私の一言に安堵した様に皆が微笑む。
「さて、では始めましょう」
「世界を守るなんていいません、私達の未来を守るために行きましょう!!」
「「「「「ああ!(はい!)」」」」
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