第百五話:ラストバトルはかっこよく……終わらなかったよ……
「エドガルドそちらは大丈夫ですか?」
『問題ない、ダンテそっちは?』
「大丈夫です」
私達は各地の封印の地へと向かい、生の苦しみを開放するための手順を確認しながら通信魔術で各自の安否を確認する。
――精鋭部隊っていってたけど大丈夫かなぁ?――
『不安症だな、安心しろ、問題はない、襲われても対処してくれる』
――そうでなかったら恨んでやるー―
『恨むな! 頼むから!』
『エリアです、目標の場所につきました』
『こちらクレメンテ、同じく』
『エドガルドだ、着いたぞ』
『カルミネだ、こっちも問題なく到着した、そちらはどうだ?』
「――今到着して、敵さんのご登場です」
『『『『?!』』』』
「ようこそ、ダンテ・インヴェルノ殿下。此処が貴方の終わりの地だ」
「それは貴方の終わりの地でしょう?」
「ぬかせ若造!! サロモネ王に阻まれたが生への憎しみ達を開放し、あらゆる命を私の配下と――」
「根本から間違ってますね、彼らは生への憎しみから命ある物を襲ってるわけじゃない、苦しみから、悲しみから襲っているんですよ。まぁ、貴方にはわからないでしょうね」
「ベルナルド・アコーニト」
「何故分かった……!!」
フルヴィオによく似た前世的外見年齢だと40程の男がそこにいた。
「フルヴィオにあんな術はできない、だがアコーニトの現当主である貴方の子孫から、そのような術をつくった人物がいると聞いたので作った貴方が犯人と見受けしました。何せ貴方は死んだ扱いになってますからね」
「――フン、頭が良くてももうどうにもならん!! 封印は今――」
「アルバート!!」
「は、はい!!」
「皆、手順通りに!! 精鋭部隊の方は護衛を宜しくお願いします!!」
「「「「「はっ!!」」」」
『わかったダンテ』
『わ、わかりました!』
『エリア、落ち着いて』
『ああ、落ち着いてだ、ダンテもな』
私は深呼吸してから手をかざす。
「赦したまえ、赦したまえ、我らは罪人、罪の子ら」
「神より産み落ちたるも、罪を重ねに、重ね、今を生きる」
「されど罪を知り、贖い、主神アンノに捧げよう」
「赦したまえ、救いたまえ――」
「生の苦しみにどうか救いを、彼らに救いを与えたもう!!」
「神よ我らを憐れみたまえ!!」
アルバートの持っている「主神アンノの涙」が輝き、封印の柱に吸い込まれた。
封印の地が光り始め、天へと伸びる光を一気に放出する。
「っ……!!」
「眩しい……!!」
『何が起きた……!?』
『皆さん、大丈夫……?!』
『大丈夫だ……!!』
『こちらも……!!』
やがて光は消え、封印の柱が美しい色にそまったと思うと、崩れて跡形もなくなり、封印されているはずの物体がある場所は消えて無くなった。
「そ、そんな……!!」
主犯格――ベルナルド・アコーニトは封印されていた場所があった所に駆け寄り何度も触るが、もう何もない其処は反応を示さない。
「おのれ、おのれ、ダンテ・インヴェルノォオオオオ!! 貴様だ……」
「神の炎よ!!」
「ぎゃあああああああああああ!!」
全身大やけどで失神手前で神の業火を消してやる。
精鋭部隊の方達が、ベルナルド・アコーニトを確保する。
「ようやく、おわ……た?」
私の視界がぐらぐらと揺れ始める。
「ダンテ様?」
「ダンテ?」
私はその場で倒れ込み意識を暗転させた――
『よくやった』
「ちょっとこれ私死んでない?」
展開から見て死んだ気しかしないので神様に文句を言う。
『死んでないから安心しろ』
「それならいいんだけど……」
神様との空間でふぅと息を吐く。
「じゃあ、どうして私を此処に呼んだの? というか、何で私気絶したの?」
『まず気絶した理由だが、お前は強力な魔術――浄化魔術を使って魔力を殆ど持っていったのにかかわらず、また強力な魔術を体力を削ってまで使用したからだ』
「あ、なるほど」
『次に、ここに呼んだ理由だが――』
『頑張ったお前に少しだけ褒美をやろうとな』
「はい……?」
神様の言っていることが理解できなかった。
『これを見ろ』
神様が見せてきたのは――
「こ、これ、わ、私が、美鶴だった時に書いた小説と同じ題名!!」
『お前の友人は出版にこぎつけ、ベストセラーになったものもある程だ』
「わー!! すごーい!!」
『此処にいる間だけ、お前にこれらの本を読む権利をやろう』
「わーい!! やったー!! 挿絵とか漫画とか超気になるぅ!!」
私は純粋に喜んだ。
『さて、もう一つ』
「ん?」
他に何があるんだろう、と思っていたらモニターが出現しそこには――
「真由美ちゃん……!!」
私服姿だが、バリバリに仕事をこなしている真由美ちゃんの姿があった。
『彼女はあの後お前を慕う仲間達と共同で仕事を起こし、お前がやるであろう事柄の一部を成し遂げ、またお前の様な人物がでないように働いてる最中だ』
「……真由美ちゃん、すごいねぇ、えらいねぇ……」
思わず、涙が出た。
嬉しかったのだ。
前を向いて歩いてくれたことが。
『さて、今回はさっさと目を覚ました方がよさそうだから起きるといい、そして存分に叱られろ』
「え゛?! ちょ、ちょっとー!!」
『ははははは!! あの時、お前が何かしなくても精鋭部隊が確保してたからな!! 心配性が裏目にでたな!』
「酷い―!! それ先に言ってー!!」
神様に文句を言ったのを最後に私の視界は再び真っ黒になった。
「ん……」
目を開けると目を赤くしているエドガルドに、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネが私の顔を覗き込んでいるのが見えた。
「えっとあの後どうなったので……」
「「「「「ダンテ(様)!!!!」」」」
「おぶわっ?!」
体を起こしたと同時に、全員が私に抱き着いてきて再びベッドに沈みかけるが何とか持ちこたえる。
「ダンテ様、此度は本当に心臓に悪かったですよ……」
「すまない、フィレンツォ……」
「というわけでお説教の時間です」
「げ」
フィレンツォのお説教はとにかく長い。
「め、目覚めたばかりだから、その――……お手柔らかにオネガイシマス……」
「本当に、貴方様という御方は――!!」
フィレンツォのお説教を聞きながら、五人皆に抱きしめられ続けた私は二度目のダウンをすることになるのだった。
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