舵木まぐろインタビュー「私はたぶん素体の自分を殺したいんだよね」
私がまぐろちゃんを最初に知ったのはミスiD2019セミファイナリスト一覧のページでした。まぐろちゃんが写ったカメラテストでの写真は白背景でミスiDボード以外の小道具もなく、だけど大量にサイトに並ぶ写真の中でもとてつもなく目を引きました。写真を見て「こんな女の子が本当に実在するの?」と思っていて、自己PR文を見れば「新規設立の撮影会に誘われて所属したのにそこで撮影会を開催する前にいきなりLINEグループを退室させられtwitterもブロックされていた記念に応募しました。」と書かれている衝撃、カメラテストの動画を見れば「人の死因が好きだったので」と話す姿が衝撃的で、彼女が当時働いていたコンカフェに遊びに行けば、148cmと想像以上にとても小柄で華奢だったこと、でも写真そのままの女の子が実在していたこと、視線を合わせるのが苦手そうに、でも何気なく尋ねた本人が使っているメイクアイテムについて熱っぽく丁寧に説明してくれたこと全部がすごく衝撃的な可愛さで、まぐろちゃんを知ってから2年程の月日が経つけれど、最初の頃から今日までずっと私はまぐろちゃんに衝撃を受け続けています。
本人の元々の資質とメイクによって完成させているその容姿が素晴らしいのはもちろん、抜群にその「存在が良い」女の子。
ちょっと話を聴いたところでまぐろちゃんの全てを理解することなど叶わないのは分かり切ってるはずなのに、でもそれでももっとまぐろちゃんのことを知りたくて、今回インタビューの場にお招きしました。
※本インタビュー記事は当初2020/9/19のSHOWROOMでの配信内容に基づいて構成する予定でしたが、配信時の録音ミスにより2020/9/22に別途行った再インタビューの内容に基づき構成された内容になります。
インタビュー配信をやってみてどうだったか
藤林檎 あんまり普段自分メインでお話する機会がなく、そんなに得意じゃないってお話を配信の冒頭でしていた中で実際自分メインで配信でインタビュー受けてみてどうでした?
舵木 どうでした?うーん、フォロワーの人が「まぐの勉強になる」ってツイートしてた。
藤林檎 それはよかった。あと私の録音ミスで自分の話するの苦手って言ってる人に自分の話二回もさせるのほんとにに申し訳ないです。
舵木 自分の話するのが苦手っていうか、客観的に自分が喋ってる姿を見るのが好きじゃない。だからあんまりYouTubeとかもやらない。滑舌がそんなによくないから。オタク喋りというか。
藤林檎 喋るよりもnoteとかの方が自分の考えてることが伝えやすい?
舵木 noteとかツイッターの方が。文章にできるので、推敲できるから。
藤林檎 でもそんな中それでも今回私のインタビュー配信のオファーを受けてくれたのは、元々まぐろちゃんのファンだった私のことを知ってくれてたからというお話だったよね。
舵木 そうそう。
藤林檎 ありがとうございます。
「めちゃめちゃな理由すぎる。」ミスiDにエントリーするきっかけ
藤林檎 まぐろちゃんが「舵木まぐろ」としてツイッターでアカウント作って活動し始めたのがミスiDにエントリーするちょっと前?
舵木 2018年の3月、春。
藤林檎 あのツイッターアカウントはミスiDにエントリーする用に作ったアカウント?
舵木 いや、違う。その前に「撮影会に出てくれませんか」って言われてたから、それ用にツイッターアカウントを作った。
藤林檎 そこから撮影会をクビになって、撮影会きっかけで作っていたツイッターアカウントを使ってミスiDにエントリーして。ミスiDに出たきっかけを教えてもらってもいいですか?
舵木 出たきっかけは、ミスiDに出る少し前に夕月未終とツイッターで繋がって、夕月未終(平成墓嵐プロデューサー,ミスiD2018~2019セミファイナリスト,ミスiD2020実行委員特別賞受賞)にツイッターで「まぐ出なよ、出て欲しい」みたいなこと言われて、でたぶんそれを見た小林司からフォローされて、その直後に会社を辞めて、会社辞めたテンションでエントリーした。
藤林檎 そうだったそうだった。
舵木 めちゃめちゃな理由すぎる。
藤林檎 でもミスiDの自己PR文とかカメラテストの映像見た時よりは理解しやすいというか、「そういう流れだったんだ」って思う。
舵木 そこで言ってた通り、撮影会クビになったことに対して「ざまあみろよ」の気持ちでエントリーしたって理由も確かにあるけど。
藤林檎 そういうきっかけでエントリーしたミスiD2019をサバイバル賞受賞という形で終えている訳だけど、実際ミスiD受けてみてどうだったか、まぐろちゃん的に意味があったかっていうところはどう?
舵木 仕事とかの面では直接的な利益はないけど、書ける肩書が一個できたってことと、あと友達が増えたので、よかった。
藤林檎 私は元々「肯定されたいという動機だけで自分の暗部を晒して、自分だけの人生の物語を選考委員やオタクに簡単に与えてやるのはもったいないよ」って思ってる方なんけど、まぐろちゃんはそのへん何を言って何を言わないのかをしっかり見極めながらミスiDに出ているように見えたし、結果的にそういう風にお友達が出来てたり、ミスiDに出たことや受賞したことをいい意味で上手く利用できてる側な気がするって配信でも話してて。その時まぐろちゃんはどういう風にコメントしてたっけ。
舵木 病んでたりいじめられたりしてることをそこでアピールしてもしょうがないって言った。
藤林檎 そうそう。でもやっぱりそういう人も多いよね。
舵木 過去にそういう経験があって、だから今それを軸にしてこういう活動してます、ならわかるけど、「私病気です」だけを言っても「そうですか…」で終わっちゃうから。
藤林檎 私がミスiDをある意味残酷だなって思うのは、そこでそれでもその姿が魅力的だったり面白かったりすると選考進めちゃうじゃん。例え選考進むことが最終的に本人のためにならなかったとしても。でも別にミスiDがその後具体的に何をしてくれるってことも基本ないから、結局ミスiDに出て選考に残ってしまったことが最終的にはデジタルタトゥーにしかならなかったみたいな人も実は結構いるんじゃないかみたいなところがずっと気になってて。
舵木 そうだね。
藤林檎 でもそこについてまぐろちゃんのスタンスとしては「出る女の子側がしっかりミスiDで何を得たいのかとかそのために何を言って何を言わずにいるべきなのか、そういうことのコントロールを自分ですべき」みたいな感じ?
舵木 戦略はある程度必要だと思ってるので。進むんなら。
藤林檎 まぐろちゃんの場合は、最初エントリーした時点からそういう意図みたいなものは持ってた?ファンを増やしたいとか。
舵木 ミスiD期間中はなんもわかってなかったんじゃないかな。出たからには進みたいって気持ちはあったけど。賞を取るとまでは思ってなかったけど。だからファイナル進んだ後はもう「課金とかしなくていいです」って言ってたから。「写真とか買わなくていいです」って。
藤林檎 そうだったよね。じゃあミスiDに出たことや受賞したことをどう活用した方がいいのかみたいなことは、終わった後に考えが深まっていった?
舵木 そう、自我が出はじめたから。笑
藤林檎 自我の芽生えね。笑 でもほんとにエントリーした当時と印象違うもんね今。前に夕月未終さんがまぐろちゃんはミスiD出た頃「人生どうでも飯田橋」みたいな佇まいだったみたいなことをツイートしてて、私もそれ見て「それはわかる」って思った。私も最初その印象が強かったから、ミスiDエントリー当時のことで言うと好きなアーティストがいるのを知ったりとか、その後墓嵐入ったりミスiDのお友達が増えたり、そういう風に思い入れがあるものや人がいてさらにそれが増えて行ってる感じが、最初にまぐろちゃんを知った時には全然イメージできてなかった。
舵木 好きなアーティストに関しては、ただただ選考委員にSKY-HIがいて。私は元々SKY-HIが好きなんだけど、SKY-HI見れるかなと思ってたら一瞬も見れなかったから、「日高いなかった~」ってツイートしただけ。笑
藤林檎 私ミスiDのまぐろちゃんのカメラテストの動画がずっと好きで。
舵木 私は好きじゃない~。
藤林檎 選考委員相手にも物怖じしないで自分の言葉で喋れてて。
舵木 だって知らないもん。
藤林檎 その「誰が誰か全然知らないんだろうな」って感じが良かった。笑
舵木 小林司と、いたっけ岸田メル?知ってて岸田メルぐらいだったかな~。それしか知らないもん。日高はおらんし。
藤林檎 あとこないだの配信の時に、「エントリーしてた当時は、墓嵐入ったりミスiD関連のお友達が増えてたりするまぐろちゃんの姿全然想像できなかった」って話をした時にまぐろちゃんからは「女の子の友達は普通に欲しいだろ」って話があって。エントリーした人の中には「横の繋がり一切いりません」みたいなスタンスの人も少なからずいる中で、まぐろちゃんはそっちじゃなかったっていうのも私の中で意外だった。
舵木 うん。突っぱねる理由もないし。そんな変な人間寄ってこなかったから。まともな人しか。
藤林檎 それこそ確か夕月未終さんだった気がするけどがツイッターで「ミスiDは身元がある程度保証された面白い女の子に出会える出会い系」みたいなこと言ってて。
舵木 確かに。
藤林檎 まぐろちゃん的にもそこは「確かに」って感じなんだ。
舵木 うん。
藤林檎 別にミスiD以前も普通に学生時代とか女の子の友達いるタイプだった?
舵木 少ないけどね。ほんとにオタクの女の子しか。普通の女の子はあんまいなかったけど。
藤林檎 なるほど。あと具体的にまぐろちゃんのミスiDでできたお友達のことで言うと、ミスiD2020ファイナリストのほしえりかちゃんと仲良くなったきっかけを聞かせてください。
舵木 好きなバンドが同じだったので。ミスiD2020が終わった後にほしの方からツイートとかで絡みが増えてきて、「仲良くなりたいです」みたいな風に言われたから、LINE交換したり電話したりとかを、しました。
藤林檎 でそこから今月末にほしえりかちゃんと一緒に猫カフェでのイベントに出るに至るまで。
まぐろちゃんがミスiDの子とかと仲良くなる時って、自分からより相手側の子からのまぐろちゃんへのアプローチで仲良くなることが多い?そうでもない?
舵木 う~ん。面白いと思ったら見るとか自分からフォローする、とかはあるかもしんないけど。
藤林檎 そこから先はどっちからのアプローチということでもなくなんとなく仲良くなってく?
舵木 う~ん。
被写体活動について
藤林檎 ミスiDにエントリーするきっかけの撮影会から最初「入りませんか」みたいなお声がけがあったのはインスタがきっかけだったんだっけ?
舵木 うん。運営の人に見つけられて。インスタは本当に普通に元々「まぐろ」って名前でやってたのを今もそのまま使ってるから。だからインスタさかのぼると普通に会社員だった頃の日常が出てくる。
藤林檎 撮影会に誘われる前からインスタきっかけでカットモデルみたいなことはやってて?
舵木 一回だけ。フォロワーの美容師の人のところで切ってもらって。
藤林檎 撮影活動というか、被写体活動を本格的に始めたのは、撮影会をクビになってから?
舵木 うん。
藤林檎 被写体やるのやっぱり自分でも向いてる感じする?
舵木 向いてる…?わかんない。どうなんだろう。向いてるも何も…なくない?って気持ちだけど。
藤林檎 そうなんだ。私も色んな女の子の写真見てる方だと思うけど、やっぱまぐろちゃんの写真めちゃくちゃ目を引くし、誰に撮られていても揺らがないまぐろちゃんだけの世界観みたいなのを感じるし、でもまぐろちゃん自身がすごく自分でそれを演出しているつもりでもない?
舵木 そんなにない。撮りやすいとは言われたことあるけど。
藤林檎 そうなんだ。それはどういう理由でなんだろう。
舵木 わかんないけど、勝手にポーズ取るし止まるしってところ?
藤林檎 最初からそれが出来てたってこと?
舵木 たぶん、できてたと思う。
藤林檎 経験ないのに最初からそれができるのすごくない?センス?
舵木 わかんない。笑
藤林檎 なんとなく出来ちゃうみたいな?
舵木 うん。写真を最近撮るんだけど、自分が撮る側でね。それを見て今年ミスiDにエントリーしてる女の子に言われたのは、「まぐろさん元々二次元とかのオタクだから、絵を見てきて構造がわかってるから写真が上手い」みたいな。
藤林檎 なるほど。そういえば最近あんまり被写体の方がやってない?
舵木 被写体の方はやってない。
藤林檎 それは、飽き?
舵木 う~ん、飽きでもあるんだけど、元々半年ぐらい前からそんなにやってなくって、決まった人と月1~2くらい。あとは撮影会に出るとか。知らない人と撮るのめんどくさくて。
藤林檎 もう知ってる人との定期的な撮影だけにしようかなあみたいな。
舵木 そう、あとたまに撮影会出るかなあみたいな気持ち。
藤林檎 そういうスタンスになったら必然的に撮影の頻度も減った、みたいな。
舵木 そう。あと墓嵐やってたからっていうのもある。ライブの方が多かったから、あんまスケジュールが入れられなくてみたいな。
アイドルサークル平成墓嵐への加入
藤林檎 平成墓嵐に加入するきっかけは何でしたか?
舵木 立ち上げから墓嵐のことは知ってて、その後ツイッターで「あ、やってるんだな~」って思いながら、ライブとかは行ってなかったけど、2019年の年明けから夕月とちょくちょくLINEとかするようになって、イベント出たりとかもあったから。「平成墓嵐今度見に行くよ」みたいになって。で二回ぐらいライブ遊びに行って、その時にちょっと物販手伝ったりして、その後終電逃して夕月とカフェとか入って話してたら、「限界だよ」みたいな話になってほんとにヤバそうだったから「じゃあ墓嵐入るよ」ってことになった。夕月が死にそうだったから。
藤林檎 墓嵐に入った後「裏方が向いてるかも」みたいな話があったよね。どういうところでそれを感じるようになった?
舵木 人を管理するのが得意だということが分かったので。スケジュール管理とか、メール返信したりとか。いきなり30人ぐらい管理する側に回ったことで。しかもアイドル現場だとしっかりしてない人間たちがめちゃくちゃ多いから。メンバーもそうだけど。LINEひとつ見れない、返せないみたいな。
藤林檎 会社員時代は裏方が向いてるみたいな自覚はなかった?
舵木 なかった。
藤林檎 そうなんだ。その頃の経験が生きてるのかなあとか勝手に思ってたけど。
舵木 う~ん。
藤林檎 全然会社員してた時とやってることは違う?
舵木 メールの書き方の文章とかはそうかもしれないけど。それ以外はあんまり関係なさそう。
藤林檎 歌とかダンスは墓嵐加入以前に経験はあったの?
舵木 歌はやってなかった。ダンスは小学校の頃に三年間くらいやってて。部活動でも昔やってて。ダンスクラブみたいな。あとバトンを幼稚園ぐらいの頃にやってて。
藤林檎 じゃあダンスに関しては最初からそんなに抵抗がなかったんだ。
舵木 なかったねえ。なんなら1番とか2番ぐらい私はできるから。
藤林檎 グループ内で?
舵木 うん。
藤林檎 そこから墓嵐での活動を経て今後やりたいことの話になった時に、「ちゃんとしたアイドルやってみたい」って言ってたけど。
舵木 ああ、うん。
藤林檎 ちゃんとしたアイドルやってみたいって思うようになったのはどうして?
舵木 その適性があることがわかったから。墓嵐をやっていく内に。あと墓嵐は解散ライブでピークが過ぎてて後はもう落ちて行くだけだから。去年の秋ぐらいからそう思ってて。
藤林檎 そう思ってるからまぐろちゃん的には次に行きたいっていうのもあるし、まぐろちゃんのファンもまぐろちゃんがアイドルをやることを望んでるところがあるから、ってことで合ってる?
舵木 そう、そうだね。
藤林檎 結構それに向けてもうすでに行動を起こし始めてるみたいなことも言ってたよね。
舵木 動いてもよくわかんないまま話が消えたり、連絡が途絶えたりとか。それでもちょくちょく話聴きに行ったり面接したりとかはしてるけど。色んな所に。
藤林檎 じゃあ今もそういう期間でまだ具体的にどこって決まったりとかは?
舵木 ない。
藤林檎 なるほど。
憎しみを忘れたくない
藤林檎 あと、まぐろちゃんは「尖ってた頃の自分を忘れたくない」みたいなことを話してくれてたよね。
舵木 うん、だから憎しみを、忘れたくない。
藤林檎 どういう憎しみ?
舵木 中学3年生ぐらいかな、中学生の頃あんまりほんとに全然友達がいなくて。男女共に。その頃の自分の偏屈さとか芋っぽさとか、周りの人間からの悪意とか、直近だと、同居してた彼氏がある日家帰ったらいなくなってたとか。そういう日常の中での憎しみとか、あと日常の中で自分本体、素体の自分への憎さ、復讐、人生の。だからその「舵木まぐろ」の存在をアバターとして捉えてるんじゃないかみたいな話が配信であったけど、私は素体の自分をたぶん殺したいんだよね。
藤林檎 じゃあアバターとしての「舵木まぐろ」の方の割合を自分の中で大きくするために頑張ってる、みたいな。
舵木 そうだね。今はあんまりないけど、精神が安定してなかった時に自分の日常の中でやなことがあって、でもその状況で舵木まぐろへの話とかがあった時に乖離が起きて心身がめちゃくちゃになるってことがあった。
藤林檎 じゃあまぐろちゃんの中で結構「舵木まぐろ」はこうあるべきみたいなロールがしっかりあって、そこに沿って活動してる?
舵木 そうそう。だからSNSで政治の話とか、あとフェミニズムの話とかもそんなにしないようにしてる。見てはいるけど。
藤林檎 「舵木まぐろ」としてのまぐろちゃんは、何を言うべきかというより何を言わないようにするかを重視してる?
舵木 そうかも。
人は死ぬしなあ
藤林檎 あと結構まぐろちゃんの死生観みたいなものが他の人と違う感じがして。でもそれは専門学校でお葬式のことを学んでたこととはそんなに直接的には関係ないって話をしてたっけ?
舵木 関係ない…のかな。人の死に関してはあんまり悲観の感情がないというか、めちゃめちゃ一方的に好きだったアーティストが死んだとかは悲しいけど、身内の親戚の死とかは全然そんな悲しくなくて、「人は死ぬしなあ」みたいな。
藤林檎 じゃあ何に影響を受けてそうなってるってことじゃなくて、まぐろちゃんの資質として、元々死をそういう風に捉えてたってことなのかなきっと。
舵木 うん。たぶん。
藤林檎 専門学校でお葬式のことについて学んでた時のことについて、なんでそこに入学したのかきっかけを聞かせてもらってもいいですか。
舵木 きっかけは、人の死因が好きなので葬儀の学校に行った。あとどうしても看護学校に行きたくなくって。
藤林檎 看護学校への進学を親に勧められてたってこと?
舵木 そう、親がどうしても看護に行かせたかったんだけど、私は絶対に嫌だったから「その他のなんとかなりそうなところ」って考えて、人の死因が好きなのと、宗教関係が好きなのとで「あ、葬儀だ、もうこれしかない」っていう気持ちで。笑
藤林檎 実際学んでみたら、葬儀の手順がすごく多かったみたいな話してたよね。
舵木 手順ていうか形式的なことずっとやってるから。めんどくさい。
藤林檎 一般の人の中でもお葬式は生きてる人のためのものなのか死んだ人のためのものなのかみたいな話はあるけど、学んだまぐろちゃんから見てどう?
舵木 生きてる人のためのものだよ。死んだんだもん。そんなの燃やして埋めたら何でもおんなじなんだから。
藤林檎 学んだまぐろちゃんから見てもやっぱそこはそうなんだね。
舵木 そのプロセス踏むことで「死にましたよ」っていう受け入れになるから。だからアーティストが死んだ時とかもお別れ会とかやったりするし。
藤林檎 だから配信でも、「知ってるイラストレーターの方が亡くなった時に『誠実な死の悼み方ってなんだろう』って思った」って話を私がしたけど、でも「死を悼む」ということ自体が生きてる自分のためのものでしかないってことなのかなと思って。
舵木 そう、自己満足だから。変わんないから別に、死んだことは。向こうは。
藤林檎 まぐろちゃんの死生観的には、亡くなった人は、どこかに行くというより、無になるという感じ?
舵木 どっかに行っていたとしても、こちらからはアプローチできないからどうしようもなくないですか?っていう考え方。
インターネットに触れるきっかけ
藤林檎 インターネットに最初に触れたきっかけを教えてください。
舵木 家にパソコンもなくてネットに繋がるケータイも持っていなくて、でも周りの友達はそういう環境があって、でオタクの人しかいなかったから、友達になれそうな人達が。なんとかついて行こうとしてケーブルテレビに繋がっていた自宅のテレビをいじっていたらヤフージャパンがぱっと表示されてそこからインターネットに入ることになった。
藤林檎 なんかその時に知り合った人と交流がまだあるんだっけ?
舵木 あるよ、あるある。
藤林檎 すごいね。
舵木 だから8年ぐらいの友達がいる。
藤林檎 そこでインターネットに初めて触って、インターネットでの自分、みたいなものができたことが後々「舵木まぐろ」ができることにも繋がっていく?
舵木 う~ん、なるんじゃないかな…。
メイクした自分をアバター的に捉えている
藤林檎 メイクした自分をアバター的に捉えているよねっていう話をしてくれてて。
舵木 うん。
藤林檎 本体の自分はお化粧してない自宅にいる時の自分?
舵木 うん。
藤林檎 でお化粧の熟練度が上がることにアバターとしての自分への自己評価もそこに比例して上がっていく、みたいな?
舵木 うん。そうだね。
藤林檎 前このインタビュー受けてくれたバーチャルの子はネット用に作ってた自分のアカウントを元々顔出しとかせず使っていて、そこにバーチャルアバターの自分の姿をそのアカウントのアバターとして使うようになったって話をしてくれたんだけど、まぐろちゃんはそれでいうと、ネット上に作った自分の人格に対してメイクした生身の自分をアバターとして使うようになった、みたいなイメージってことでいいんだっけ。
舵木 うん、たぶん。合ってたと思います。
藤林檎 そのメイクの熟練度というかその容姿にたいして自分で納得行くようになったのはいつ頃?
舵木 う~ん、今思い返すと1年半前の写真とか見ると「あ、ひどい」とか「できてない」「バージョンが古い」とか思うけど、でもやっぱ世に出てくるちょっと前じゃないかな。インスタの元々使ってたアカウントにちょこちょこ自撮り上げたりしてたから。会社員になった時ぐらい。2017とか。3~4年前。
藤林檎 じゃあそこから一杯アップデートはしてるけど、そこが最初の完成形みたいな。
舵木 うん。
やってきた人生は別に健やかでもないんだけど
藤林檎 まぐろちゃん的に「女の子の友達は普通に欲しいだろ」とか「ファンを大切にして当たり前だろ」と思うことに基づいてそこに対して合理的な行動を取れるっていうの、私はそれできてる人はそんなに多くはないと思ってて。それは他人への忖度的なことがあったり、過去のトラウマのせいだったりで自分の思う「当然こうやるべき」みたいなことを素直にやれない理由があったりそもそもそういう意志すら何もなかったり。そういう人もたくさん見てきたから、だから自分が「いやこれはこうやって当然」と思えることがあってかつ素直にその通りに行動に移せるのってすごく健やかなことだなって思ってて。もっと下手な言い方だった気がするけど配信でもそんな話をした時に、まぐろちゃんからは「やってきたことはそんなに健やかじゃないけどまあでも心は健やか」みたいな話があって
舵木 やってきた人生は別に健やかでもないんだけど、でも陰キャだから飲み会にも誘われないし酒もあんま飲めないしバーとかにも行かないし、そういう飲みの場での交遊みたいなのは一切ないから、歌舞伎町界隈みたいな人とも接触がないし。
藤林檎 だからって訳じゃないのかもしれないけど、病んでない感じ。
舵木 病んでないと思う。
今でもコンカフェへの出勤を続ける理由
藤林檎 「この歳から事務員をする必要がないな」って理由で事務職を辞めたって話だったけど、その後の仕事の選び方の基準については?
舵木 う~ん、お金になるかどうか。どうしてもお金だけあれば幸せなんだよね、結構。稼ぎ方は結構どうでもよくって、お金があったら精神が安定するし、なかったら不安になるしみたいな。
藤林檎 あんまりその条件に合致してないコンカフェで働こうと思ったきっかけは?
舵木 やったことないから。
藤林檎 あと若いうちじゃないと出来ないからとか?
舵木 そうだね。そう。
藤林檎 ミスiDの自己PR文にも「この歳から事務員をする必要がないな」みたいなこと書いてたもんね。
舵木 今じゃなくていいだろ、まだいいだろ、っていう気持ち。
藤林檎 今出勤の頻度は低いって言ってて、でも最初にコンカフェで働いてから結構時間は数年経ってて。それでもそんなに自分に向いてる仕事って感じもしないって話してたっけ?
舵木 う~ん。そうだね。まあ普通。
藤林檎 それでも今も出勤してるのはファンの人が喜ぶからっていうのもある?
舵木 うん。会える場がなくなっちゃうから。今とか特にそうだけど。
藤林檎 一方的に偶像とか虚像として崇拝されたり慕われることより、ファンの人と会って直接コミュニケーションを取れることはまぐろちゃんにとっても大事なことだったりする?
舵木 うん。そうかも。
舵木まぐろ
ミスiD2019サバイバル賞
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次回のインタビューは!
次回のインタビューは配信なしで記事のみUPの形になる予定です。記事のUP日が決まった段階で改めて告知します!