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一句《にぎやかな 初太鼓から ヴォカリーズ》都民芸術フェスティバルで神尾真由子さんのヴァイオリンを聴いてきました

私が最近お酒を飲んでいないこと、テレビをあまり見ないこと、神尾さんを知った経緯、今回聴いてきたリサイタルの感想、関連した戯曲ぎきょくについて書きました。


私は20年以上前に、お酒をやめました。

それまで、晩酌に缶ビール1本程度、なにかあると日本酒で5合以上は飲んでいたお酒をキッパリとやめ、それ以来(オミキも舐めたし、ブランデーチョコも食べましたが)飲んでおらず、当時は「お酒は老後の楽しみにしよう」と思っていました。

ところが、やめてみると体調が良く、老後となった今からもう一度飲む気にはならないのでした。

ついでにテレビも、かつて部屋にいるとき常にオンにしていたのが、子供ができてから少しオフの時間が増え、子育て中は親子共々サッカーの中継以外は録画したものだけ見るようになり、子供と一緒に見ることがなくなった今となってはYoutubeで充分となりました。


テレビなしは、私にとっては禁酒と同じく快適です。 テレビよりも超スローなペースで読んだり書いたりしているほうが自分に合っているみたいです。

なので、noteの記事にテレビで見たことを載せていただけるとありがたいです。(テレビを見ていない)新鮮な感覚で読んでみます。


そんな私がまだテレビを見ていた頃、メモによると2007年の暮れ、NHKで放送されたテレビで神尾真由子さんを知りました。

チャイコフスキー国際コンクールで優勝した力強い演奏に驚いたものです。演奏の方針を「強く強く」と伝えていたところにメッセージを感じます。それは、単にヴァイオリンを力強く弾くだけではなく、音楽性や生き方まで自分の意志を強い気持ちで貫くことが大切だと、私は解釈しました。

その後、神尾さんは拠点を海外へ移し、家庭を築き、所属が変わり、新譜を発表し、現在は東京音楽大学教授で後進の指導を行ったり、演奏活動したりと精力的に活動されています。


そして今回、2023年2月9日木曜19時、

東京文化会館小ホールで行われた「2023都民芸術フェスティバル参加公演〜ヴァイオリンとピアノのための〜リサイタル」神尾真由子さん(ヴァイオリン)と萩原麻未まみさん(ピアノ)の演奏を聴いてきました。


プログラムは以下のとおり

1) シンディング:組曲「古い様式で」
2) グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番
  (休憩)
3) エルガー:愛の挨拶
4) クライスラー:愛の悲しみ
5) クライスラー:中国の太鼓
6) ラフマニノフ:ヴォカリーズ
7) リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
8) マスネ:タイスの瞑想曲
9) サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
  (アンコール)
10) ブルック:メロディ
11) サラサーテ:サパテアード


シンディング「古い様式で」からサラサーテ「サパテアード」まで、小ホール(座席数649)で聴けたのが良かった。力強い神尾さんの演奏と、息のあった萩原さんのピアノを間近で堪能たんのうしました。

私は早いテンポの曲が好みですが、この日、最高だったのはなんと言ってもラフマニノフ「ヴォカリーズ」です。ストラディヴァリウスにスタインウェイの音色が息をこらした満席の小ホールに、抑えた音量でとぎれとぎれに、弱々しく響き渡る音にしびれました。プログラムの構成上、クライスラー「中国の太鼓」が五音音階で元気よく響き、次のラフマニノフ「ヴォカリーズ」が短音階で甘く静かにみ入るように響くという対比が良かったのかもしれません。

ヴォカリーズで泣けました。


たぶん、私だけの関連づけだと思いますが、ヴォカリーズを聴くと作家チェーホフの「かもめ」という戯曲を思い出します。

「かもめ」は不思議な作品です。私は、かつて、一読して作者チェーホフが何を言いたいのかさっぱりわかりませんでした。かつ、最後人が死ぬのに「喜劇」と分類されることがあったりします。評価の高いこの作品を読んで「とらえどころがわからない私はバカなんだろうか?」とか考えたものでした。

作家井上ひさしさんによると、チェーホフは「主人公という考え方を追放、主題という偉そうなものを拒絶、筋の立て方も変えた」演劇革命を起こした人物だそうです。

そう「かもめ」は読む人によって、どの登場人物、どのせりふに興味を持つか、好きか嫌いか、意味があるかないか、いかようにも受け取ってよいのです。(たぶん)

歌詞のない「ヴォカリーズ」もフワフワしていて楽しく感じたり、シクシク悲しく感じたり、しっかりとした力強さを感じたり、受け取り方もいろいろです、こう聴かなければいけない、と押しつけられることのない自由さに魅力を感じます。


最後に、

今回のリサイタルと似た雰囲気の動画がありました。
神尾さんと萩原さんの演奏によるベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第9番」第3楽章、こちらです。


読んでいただき、ありがとうございます。

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