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休眠人材の活用を考える

1月24日の日経新聞で、休眠人材に焦点を当てた記事が複数掲載されていました。

「休眠人材、サービス業で引き合い ヘアカット「QBハウス」、再教育で600人就業」の記事は、次の内容です。(同記事より抜粋)

厚生労働省によると、2023年11月の「サービス職業従事者」の有効求人倍率(パート含む常用)は3.17倍だった。人手の入れ替わりが多いことなどを背景に、全体平均の1.20倍を上回る高い水準だ。

そのため、化粧品業界に限らずサービス業全体で、隠れた人材に光をあて戦力にしようという動きは広がる。ヘアカット専門店「QBハウス」などを運営するキュービーネットホールディングスもその一社だ。

理美容師の資格を持ちながらも出産などで長く職場を離れている人、洗髪など下積み時代が長くカット経験がない人を対象に再教育をした上で、店頭に立ってもらう取り組みを12年から続けてきた。累計で600人超が実際に就業したという。

北海道のニセコ町と倶知安町は隙間バイトサービスのタイミーと連携し、町民に同サービスへの登録を誘導。宿泊業などの人手不足を埋めようとする官民タッグの制度もある。人手不足による機会損失を避けるための取り組みが広がりそうだ。

「コスメ人材、復職しやすく ファンケル、ウェブ接客や在宅視野 コーセーは離職者も対象」の記事では、次のように紹介されています。(一部抜粋)

オルビス(東京・品川)は、タブレット越しに対応する無人店を増やしている。各店舗の美容部員が交代で接客しているが、入社後に体力面で長時間の立ち仕事が難しくなったスタッフに活躍の場を与える意味合いも大きい。「26年までに無人店を15店舗まで増やす」(同社)と言う。

コーセーは「出戻り転職」に注力する。退社したり、他社に転職したりした美容部員の復職を認める「ジョブリターン」を推し進めてきた。この制度は19年に導入していたが、コロナ禍で利用者が限られた。退職時の給与や役職をベースに再入社できる仕組みが次第に認知され、23年は22年の年間復職者数の3倍以上も美容部員を確保できたという。

仕事と家庭の両立を手厚く支援して、美容部員が辞めない職場づくりも進んでいる。資生堂は23年11月から、生後3カ月以内の乳児を育てる社員の家庭に保育士を派遣している。家族で協力しながら育児できる環境の整備につなげる。

花王は育休からの復職者を対象とした任意のセミナーを毎年開催している。育児経験のある先輩から仕事と育児を両立するコツを聞き、助言も受ける。職場復帰後も仕事を続けやすくすることで離職を防いでいるのだ。

先日は、出戻り社員の採用をテーマに考えました。

各社で人材不足の現状なのは周知のとおりですが、これまで一般的と考えられてきた採用の考え方ややり方だけでは十分な人材確保がなかなか進みません。考え方ややり方を変える必要がありますが、そのことに関して上記に挙げた記事は示唆的な内容だと思います。

休眠人材の活用には、「就業していない人の就業化」の観点と「生産性のより高まる結果となる就業」の2つの観点があるのではないかと考えます。

就業していない人の就業化では、「前例や制約をとっぱらう」のが大切だと考えます。町民に登録を誘導し活用することや、保育士の派遣、復職者向けのセミナーなど、前例としてはあまり聞いたことのない方法です。

就業意思がありながら就業していない人は、それを妨げている何らかの要因があるはずです。その要因は、現場を離れていたことによる技能への不安、出社ができない、フルタイムでは働けないなど、人によって様々です。フルタイムが無理なら就業規則や受け入れ体制のほうを変えて、隙間時間という働き方でも就業を可能にするのもひとつのやり方だと言えます。

生産性のより高まる結果となる就業については、「自社での業務に必要な何らかの要素とのマッチング」が重要な要素になると考えます。一口に休眠人材の活用と言っても、自社とこれまでにまったく接点のない人材より、何らか強く関連づく要素の持ち主のほうが、雇用契約後に活躍できる可能性が高まります。

出戻り社員のように、自社の文化や業務内容、人間関係などを理解していることが、まさにそれに当てはまります。自社でなくても類似の職場で発揮した技能の持ち主や、自社の事業で必要となる資格の持ち主も、当てはまるでしょう。そうしたテクニカルスキル以外にも、自社に強い共鳴を表明してくれているということも、業務に必要な要素の持ち主と言えます。

上記記事にあるニセコ町と倶知安町の例の場合、登録した人は宿泊業については初心者かもしれませんが、町をよく知り愛着を持っているという強みがあります。宿泊者との会話などでこの強みが活きるという点で、宿泊業に就く上での有力な要素を持っていると捉えることができます。

何の予備知識や要素も必要とせず、人数を集めたいという求人もあると思いますが、何らかの要素の持ち主であることが望まれる求人が多いと思います。生産性向上という観点では、上記記事の例のように、その就業と生産性の高いマッチングが促されるような仕組みかどうかも、ポイントだと思います。

<まとめ>
休眠人材の活用には、前例や制約をとっぱらって、よりよいマッチングを考える。

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