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強み資産や遊休資産を活かす

7月31日の日経新聞で、「賃上げ景気の実力(2)30年越しに沸くニュータウン AI投資はメガトレンド」というタイトルの記事が掲載されました。千葉県北部の印西市でデータセンターが増えていることを説明した内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

千葉県北部の印西市では倉庫のような建物があちこちで建設されている。人工知能(AI)を動かす頭脳となるデータセンターだ。「最終的には20棟ほど」(同市)の整備が進む。

印西市では1960年代、30万人分の住宅供給を目指す「千葉ニュータウン」計画が持ち上がった。91年のバブル崩壊で開発は頓挫し、供給量は10万人規模にとどまった。計画に従って東京電力が敷設した大規模な送配電網が、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や米グーグルなど巨大IT企業をひき付ける。

地域経済への影響は大きい。エン・ジャパンによると、印西市の2024年1~6月のデータセンター求人数は5年前と比べて2.1倍に増えた。時給1500円を提示し「採用強者」として知られるコストコも人手不足に悩むほどだ。

AWSが2.2兆円、米オラクルが1.2兆円、日本勢では三井物産が5000億円。日本国内で大規模なデータセンター投資が相次ぐ。製造業の設備投資をけん引してきた自動車と並び、AI投資は「メガトレンド」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)だ。

大型投資の波は半導体生産にも及ぶ。AIの演算処理を担う先端半導体の量産に挑むラピダス。北海道千歳市では総額5兆円をかけた半導体工場が建設中だ。「電気設備関係の職人の日当は従来の5倍に上がっている」(北海道のゼネコン大手幹部)。ラピダスの工場建設に人手を取られ、北海道内では電気工事士などが足りない。札幌市では小中学校のエアコン設置工事の入札不調が相次ぐ。

物価上昇が長く動かなかった設備投資を動かす。今は物価上昇率が名目金利を上回って推移し、実質金利がマイナスの状態だ。お金の価値が目減りするため、投資が活発になりやすい。

24年3月期の純利益が過去最高を更新するなど企業業績は好調だ。資材費や人件費の上昇に加え、金利の先高観が設備投資の決断を後押しする。

主要企業を対象に日本経済新聞社がまとめた設備投資動向調査によると、24年度の全産業の計画額は15.6%増の33兆3723億円となり2年連続で過去最高を更新した。人手不足が深刻な運輸業や建設業でデジタル化投資が大きく伸び、伸び率では非製造業が製造業を上回った。時給が毎年上がる人を雇うよりもロボットや自動化に投資する方が効率的だと考える経営者が増えている。

日本政策投資銀行の23年の調査では向こう3年の生産能力強化について国内を重視する企業が海外を初めて上回った。AIに加え、脱炭素など新たな投資テーマには事欠かない。

当面は、国内投資がさらに加速しそうな環境が想定されるということです。日銀による利上げ決定が先週話題になりましたが、それでも同記事の指摘の通り、超低金利で物価上昇率を下回っている実質金利マイナスの状況は変わりません。将来的に金利が上がっていかないうちに、投資しておこうという動きも当面強まるのかもしれません。

同記事からは、3つのことを考えました。ひとつは、強み資産や遊休資産を活かすということです。

印西市による「千葉ニュータウン」構想は、結論からすると失敗だったということでしょう。しかしながら、当時整備した大規模な送配電網が、膨大な電力を要するAI関連のデータセンターを設置する環境に適しているというわけです。使われず遊休資産となってしまっていたものが、強みとして活用できるということです。

これに似たことは、身のまわりの家庭や会社であり得るかもしれません。「前から存在しているのに、使われていないもの」の利用価値が、新たなところに発見できるかもしれないわけです。このことは、設備など見えるモノだけではなく、人の知識・資格・経験など見えないものにも当てはまります。新たな利用価値を積極的に見つけていきたいところです。

2つ目は、社会経済の環境変化を察知することの大切さです。

ある経営者様が先日話していたことです。

「人口減少、国内製造拠点空洞化で、電力消費は長期の減退トレンドだと想定してきた。ところが数年前から流れが変わり、円安もあっての国内投資の活況とAIの電力消費の伸びもあって、電力消費は長期で増加トレンドに想定が変わってきた。電力関係への部品を納入する自社でも、しばらく前から設備増強させている」

同記事の例も、データセンターの需要増、それが膨大な電力を必要とする、という環境変化をいち早く察知しての構想スタートだったのではないかと想像します。

強み資産や遊休資産を的確に活かす、そして先行者利益を大きくとるには、環境変化を察知してそこに強み資産の利用価値を照らし合わせることが大切だと考えます。

3つ目は、人材確保の取り組みがますます求められるということです。

同記事に「人を雇うよりもロボットや自動化に投資する方が効率的だと考える経営者が増えている」とありますが、どんなに効率化させてもそれに携わる人材が必要です。同記事からは、その人材には、ますます高い金額でのオファーが必要になってきているのがうかがえます。

7月30日の日経新聞では、韓国の総人口が増加したという記事が目に留まりました。「韓国総人口、3年ぶり増加 外国人労働者が流入」から一部抜粋してみます。

韓国統計庁は29日、2023年の国内総人口が前年比0.2%増の5177万人と3年ぶりに増加に転じたと発表した。労働目的などで居住する外国人の流入が増え、少子化による韓国人の人口減少を補った。

増加をけん引したのは外国人で、前年比10.4%増の193万人だった。国内に3カ月以上滞在する外国人を指し、総人口の3.7%となった。

外国人増加率の内訳では、ベトナム人が前年比18.1%増、タイ人は同16.8%増だった。統計庁は「労働目的で居住する外国人や帯同家族が増えた」と分析した。

韓国の出生率は0.72で、少子化は日本以上に深刻な問題テーマになっています。その韓国で総人口が増えているということは、相当な外国人受け入れの取り組みをしていることが背景にありそうです。

私の周囲でも外国人従業員雇用に一層の力を入れている企業が散見されますが、今後は韓国、中国、台湾など東アジア地域との外国人人材獲得競争がさらに激しくなることが想定されます。

日本人、外国人、双方に対して、これまで以上の賃金の見直し、及び賃金以外の魅力を訴えて、自社で人材獲得していくための取り組みを行うことが求められそうです。

<まとめ>
遊休資産・強み資産を活かす機会はないか、環境変化からも考える。

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