ニューロダイバーシティーを考える
1月20日の日経新聞で、「御社に「脳の多様性」はあるか」というタイトルの記事が掲載されました。人手不足に直面しながら事業創出を求められる企業の間で、「脳の多様性」を意識した経営が今後広がるという、調査会社の米ガートナーの将来予測を紹介した内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
昨今、雇用する人材の多様性を確保する「ダイバーシティ」の必要性が叫ばれています。ダイバーシティのテーマでは、年齢、性別、国籍などで様々な属性の持ち主を雇用して活躍できる環境づくりが話題になる場面を多く見かけます。子育てや介護など、本人以外の事情を抱える人に対してどのように就労環境を提供できるかの論点もよく見かけます。
同記事では、それらと比べて進みにくい障害者雇用も重点的に取り組むべきだとしています。加えて、テーマを「障害者雇用」ではなく「ニューロダイバーシティー」と位置付けて、脳の多様性のひとつと捉えることを主張しています。
同記事で夜型の人について取り上げていますが、夜のほうが作業がはかどるという夜型人間の人を、私の周囲でもこれまでに何人も見てきました。介護施設で、夜シフト専任で働く「夜専雇用」として雇用され、「夜以外働きたくない」という介護士の方に会ったこともあります。
考えようによっては、朝型の人、朝~昼型の人、夜型の人などがいて、さらに同じ朝型でも早朝型の極から緩い朝型までいろいろいて、平均どころをとって会社での就業時間が決まっているのかもしれません。
就業時間を職場で一律にするのがよいか、各人の自由に任せるのかは事業やビジネスモデルなどの事情もあり、一概には言えません。そのうえで、全員に対して不必要ではないかと思われる固定的なルール、尺度をあてはめる例も見かけることがあります。例えば、以下などです。
・完全テレワーク、就業時間も従業員の事情に合わせて裁量で設定してよい、という方針ながら、必ず勤務時間に含めないといけないとされる一律のコアタイムが4時間存在している。
・各チームのメンバーの間で行われるメンバー会議について、メンバー同士の都合のみで決めることに全社での制約がある。○時~○時までの間で行われなければならないと、実施時間帯が決められている。
法令に合った内容のルールでなければならず、労務管理の問題もありますので、就業時間の環境設定をすべて従業員の裁量にゆだねるのは難しいかもしれません。そのうえで、「そのルールは、本当に必要不可欠で、生産性を上げるために役に立っているのか?」という問いは大切だと思います。
私は今ちょうど、メンバーと協力しながら資料作成を進めているプロジェクトがあります。そのメンバーはアイデアマンで、知識豊富です。情報収集と思いついたアイデアの吐き出しや、図を書くのが得意です。私はあまりアイデアマンではなく、情報収集もあまり得意ではありません。どちらかというと、誰かが吐き出したアイデアをまとめて、一連の文章にまとめていくことのほうが得意です。
以前は、資料のパートを分担し、それぞれがほぼ同ページ数ずつの資料を作成するというやり方をしていましたが、今一つ進捗が早くありませんでした。そこで2人で話し合ってやり方を以下のように変えました。
・資料の担当パート分けをやめて、作成プロセスで分けることにした。そのメンバーが、歩きながら独り言で吐き出したアイデアを音声入力し、保存したテキストファイルを私に送ってくる。
・私がそのファイルに書かれた内容から、目的に合った要素整理、論理構成にして、文章として完成させる。完成させたファイルをそのメンバーに送る。
・そのメンバーは受け取ったファイルの文章を読み、思いついた図を差し込む。
この方法に変えることで、体感的には進捗のスピードが2倍になり、双方の満足度も大幅に高まりました。これなども、「ニューロダイバーシティー」を生かした協業だと言えそうです。上記に挙げた、就労時間や就労場所などの環境設定だけではなく、お互いの強み分野を生かした作業領域の柔軟な調整も、「ニューロダイバーシティー」の実践だと言えると思います。
経済産業省では、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています。そして、次のように説明しています。(経済産業省HPより抜粋)
私たちは皆、脳や神経の違い、それによる得意、不得意な要素を持っています。そして、自分にとって当たり前の基準を、他者にも適用したくなります。その基準で「なぜこんな簡単なことができないのか」と他者のことを見たくなりますが、他者も別のテーマでは同じように自分を見ているものです。
可能な限り、仕事などの中でニューロダイバーシティーを実践できれば理想的だと、同記事から考えます。
<まとめ>
脳や神経の違いによる特性の違いを、お互い多様性ととらえて活かす。
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