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機会費用を考える(2)

5月12日の日経新聞で、「「メガ盛り」は廃れない コンビニや牛丼の超・常識」というタイトルの記事が掲載されました。時々食べたくなる、大盛りを超えたメガ盛りについて、考察している内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

売れているのかどうか、ずっと気になっていた。まるか食品(群馬県伊勢崎市)の即席焼きそば「ペヤング ソースやきそば超大盛」のことだ。ダイエット中の方なら容器に表示されている「エネルギー1081キロカロリー、炭水化物129.1グラム」という栄養成分をみて、ぞっとするだろう。

大手コンビニエンスストアに聞くと、「大きく売れているわけではない」とのことだが、超大盛りの商品を置くと売り場にメリハリができる。セブン―イレブン・ジャパンは「お得感があるほか、とがった商品の話題性を重視している」ためという。まるか食品にとっても売り場で目立ち、自社商品の購入増につなげられる。ちなみにペヤングには「超」が6つも付く約4000キロカロリーの大盛り商品が存在する。

メガ盛り系は近年、消費トレンドとして「増量」傾向にある。今年話題になったのはローソンのキャンペーン「盛りすぎ!チャレンジ」。価格据え置きで、デザートなど12品目の重量を既存商品より47%増やした。プレミアムロールケーキは通常の約4倍、生カスタードシュークリームが約9倍とハピろー!(ハッピーローソン)な結果だった。

一方、増量の元祖と主張するのはファミリーマートだ。2021年から約40%の増量企画を展開し、弁当、サンドイッチ、総菜、デザートと幅広い。やはり売上高は大きく伸びるという。コンビニでは期間限定の企画だけでなく、メガ盛りの商品ニーズは強い。

ファミマのPB(プライベートブランド)の大盛りカップ麺は前年比5割増の売れ行きだ。ローソンでは、日清食品の麺量が通常の1.8倍の「日清焼そばU.F.O.爆盛バーレル」(西日本限定)が人気。発売から約2カ月過ぎても、他の売れ筋の即席麺の1.7倍の販売を記録する。

健康志向や少子高齢化で、食品は少量化の流れが"常識"だ。小パックや一口サイズが増え、観光の土産物にも傾向が広がる。ところがメガ盛り系の食事が廃れることはない。身近な外食も同じ。今年の吉野家の牛丼の販売データをみると、特盛系の比率は10%前後で推移し、約10年前と変わらない。

支持される理由はいくつかある。物価高に伴う割安志向、SNS(交流サイト)での「写真映え」需要のほか、若者の変化も見逃せない。電通若者研究部の用丸雅也氏は「新型コロナで若い世代の食事を含めたライフスタイルが変わったことも大きい」とみる。例えば1日3食の常識が薄れ、1日1食のパターンも増えているという。このため、超・特盛で1日の食事を満たす需要が生まれているというわけだ。

これならコスパもタイパも満たされる。量以外にも辛さ、甘さなど味覚の「盛り」も顧客を引き付ける。日常にちょっとした「特別な体験」を演出して、常識を超え、消費者の気持ちを盛り上げることが市場ににぎわいを呼び込む。

私は数年前に減量し、その後も維持に取り組んでいるため、炭水化物には敏感です。1日120グラム以内を目安にしています。炭水化物129.1グラムとは、それだけで1日分をオーバーしてしまう、恐ろしい数値です。しかし、世の中にはそのようなメガ盛りのニーズもあるということです。

かく言う私も、そのようなメガ盛りをたまに食べることがあります。1日1食しか食事しない日の1回の食事を、そのメガ盛りにしてしまうことです。「今日は他に食事の機会もないから、メガ盛りにしておこうか」という気分になった時です。

上記記事に関連し、3つのことを考えました。ひとつは、前回取り上げた「機会費用」の基準は人によっても異なるということ、同じ人でも状況によって変わりうるということです。

私の例で言うと、基本的にはメガ盛りは、減量した体重維持と健康維持を損なう因子となります。自分が感じる機会費用が大きすぎ、普段はまったく利用しません。しかしながら、「自分の欲求のおもむくままに何も考えず食べる」ことによる満足感の大きさが、たまにその機会費用を大きく上回る便益になる気分の時があるわけです。

「人はだれしも、時に人の道を踏み外したくなるもの」と言っている知人がいます。法令違反など社会的モラルを踏み外すのは問題ですが、他人に迷惑をかけない踏み外し方はよいと思います。「たまには自分を甘やかす」視点は、物事を長期に持続させるうえでの秘訣でもあると思います。

ましてや、炭水化物129.1グラムの接種に、何の機会費用も感じない人もいるかもしれません。私も20年若ければ、そうだったのではないかと想像します。機会費用も人それぞれ、状況それぞれで、「こんなものが売れるのか」と自分の機会費用の感覚では成立しない概念を、求めている人もいるかもしれないということです。

2つめは、ひとつめの視点とも関連しますが、ニーズにもいろいろあるということです。

純粋にメガ盛りの食べ方を愛してやまないことによる購入以外に、コスパ・タイパの観点によるニーズもあるというわけです。自分が思い浮かぶニーズ以外にもニーズがあるかもしれないという視点をもっておくことは、物事の可能性を広げる上で大切な視点だと感じます。

3つめは、機会費用の算定には幅広い視点が必要だということです。

(どうなったら商品が売り場を維持できるか、退出となるかの条件は存じませんが)冒頭の記事からは、少なくとも単品での売上額の大きさだけが売り場獲得の条件にもなっていないように感じられます。話題性を作り出せることや、他の自社商品が売れることといった波及効果があるというわけです。

特定のメガ盛り商品と単品でもっと売れる商品との関係だけの視点だと、後者の商品に入れ替えないことで逃してしまっている売上高が機会費用になります。よって、商品を入れ替えようという判断になります。

一方で、入れ替えることで話題性が減ったり、他の自社商品の売り上げが減ったりするということであれば、店側もメーカー側も入れ替えるほうの機会費用が大きいということで、維持すべきという判断になります。

何が機会費用を構成しているかの見定めも、多面的な視野が必要だと改めて感じました。

<まとめ>
自分が認識できていない機会費用があるかもしれない。

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